Posted by ブクログ
2018年10月24日
貴志祐介先生の密室シリーズもの
男女のコンビが主役
男性は「防犯コンサルタント」という仕事をしており、鍵の仕組みなどについてやたら詳しい
女性は弁護士
男性と一緒に密室の謎を多く解き明かしてきたせいか、密室事件があったらこの人というような評価をうけている
自分の事を綺麗な女性だと思っている勘違い...続きを読む女性と描かれているくだりがよくあるが、他人からも綺麗と評される事があるため、全くの勘違いという訳でも無いようだ
また、的外れな推理を披露するくだりもある
その的外れさ加減を他人から指摘されてもメゲないというか、「私もそれが言いたかった」と言わんばかりの態度で的外れ感をなくしてしまう
これらのくだりは個人的に好き
密室事件になるたびに男性とコンビを組む形になるが、基本的には男性のことを信頼していないというか、「こいつ絶対本職の泥棒だろ」という目で見ている
さて本編
4つの短編にて構成されている
■佇む男
社長が殺されてしまう事件
死後硬直した死体を壁に立てかけておき、死後硬直がなくなるにつれて座ったような体制になり、それで密室が構成される
立てかけておいた際に近所の子供がそれを見たことからそのトリックが明かされていく
タイトルもそこからとられたものだろう
■鍵のかかった部屋
捕まった有名な泥棒が刑期を終えて甥っ子と姪っ子に会いに来たところ、甥っ子が密室で自殺してしまうというストーリー
甥っ子が自殺するなどが考えられなかったために、殺人事件の可能性があるのではないかと謎解きにかかる
犯人は甥っ子の父親、泥棒からは妹の旦那にあたる
犯人は理系の先生で手品なども得意という設定
その設定をフルに活かしたトリックになっている
事前に一酸化炭素中毒で甥っ子を殺しておき、気圧の差で部屋を密室にする
密室を開けるときに泥棒の技術を使って入室したのだが、その点もアリバイとして利用するというなかなかに複雑なトリックとなっている
■歪んだ箱
犯人は学校の先生
職場結婚間近で家も購入済みだったのだが、その家が震災で傾いてしまう
叔母の旦那さんに伝手で家を建ててもらったので、言葉は違うかもしれないが「返品」という形で穏便に済ませようと、その傾いた家で話をする
しかし、その旦那さんとしても震災による被害なので「ウチの工務店の責任ではない」と引かない
そのため殺害に至る
先生としては穏便に済めば良し、穏便に済まなければ傾いた家を墓として殺してしまうという計画はあった
あちこちが軋んだ家の為、ドアが開かないなどで密室になりやすかったこともあったようだ
結論は先生は野球部の顧問で、ピッチングマシーンでテニスボールを打ち込んでいく事で離れた位置のドアを閉めて密室化
歪んだ家の為、テニスボールは転がって手元に返ってくる計算になっていた
■密室劇場
この作品だけ毛色が違う作品
そして続き物というか、前作にも同じ登場人物の作品があり、一応その続編という形
そして何よりブラックユーモアというのか、全編に漂う雰囲気が違い、随所でニヤリと笑える
トリックよりもお笑い要素を楽しむ作品か