影法師
著:百田 尚樹
---
**あらすじ**
「どんなことがあっても貴女(おまえ)を護る」――
友はなぜ不遇の死を遂げたのか。涙が止まらない、二人の絆、そして友情。
頭脳明晰で剣の達人。将来を嘱望された男が、なぜ無念の死を迎えたのか。
下級武士から筆頭家老にまで上り詰めた勘一は、竹馬の友・彦四郎の行方を追い、二十年前の出来事へと想いを馳せる。
なぜ彼は「卑怯傷」を負ったのか? その真相が明らかになったとき、男の生き様と友情の深さが胸を打つ――。
単行本未収録、幻の「もう一つの結末」が巻末袋とじで収録。
---
**感想**
百田尚樹さんの作品には、どれも一本芯の通った“生き様”が描かれていますが、本作『影法師』もその例に漏れず、まさに「男気」が胸を熱くする一作でした。
『永遠の0』や『海賊と呼ばれた男』にも通じる、信念を貫く姿には、時代を超えて心を動かされる力があります。現代では「男らしさ」という言葉が使われにくくなっている今だからこそ、こうした“覚悟”や“矜持”がより一層際立って感じられました。
物語の舞台は江戸中期。生まれた家柄がその人の将来を大きく左右してしまう厳しい時代。米が今よりはるかに貴重だったことや、年貢に苦しむ農民の姿など、当時の生活や社会背景も丁寧に描かれており、物語に深みを与えています。
武士としての誇りと現実のはざまで揺れる登場人物たち。特に勘一と彦四郎の友情は、ただの懐古的な美談ではなく、過酷な時代の中で真に支え合う強さと切なさを含んでいて、読後に静かな余韻を残します。
時代小説があまり得意でない方でも、本作は非常に読みやすく構成されており、感情移入しやすい人物描写とストーリー展開で、自然と物語の世界に引き込まれるはずです。
熱い気持ちを思い出したいとき、涙を流したいときに、ぜひ手に取ってほしい一冊です。