あらすじ
命はわずか三十日。ここはオオスズメバチの帝国だ。晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。幼い妹たちと「偉大なる母」のため、恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。著者の新たな代表作。
私たちはただ務めを果たすだけ。ある日、突然やってくる終わりの日まで。
ワーカー(ハタラキバチ)は、現代で働く女性のように。女王バチは、仕事と子育てに追われる母のように。この物語は、「たかがハチ」と切り捨てられない何かを持っている。「世界が広がるはずですよ」(養老孟司―解説より―)
感情タグBEST3
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ゲノム。社会性昆虫の生き甲斐とは。
オオスズメバチのメスは産卵能力があるにも関わらず、女王バチのために働き続け人生を捧げる。
(女王バチは生まれた時から特別感のある存在なのかと思っていたら、同じオオスズメバチとして生まれていた。ただ幼虫の時から餌を多く与えられ、部屋が広い場所で育つ等環境要因で女王バチになると知って驚いた)
それでは普通のオオスズメバチにも女王バチとして生まれる権利があるのに。こんな不条理に何も批判することなく自分の存在意義を遺伝子の繁栄と捉え役割をこなす姿に儚さと遺伝子の繁栄こそがその昆虫にとって一番大事な事だったのだと改めて考えさせられる。
昆虫に感情はあるのだろうか?
感情より遺伝子による影響の方が大きくここまで行動規制が取れているのは昆虫のような弱い生き物故の宿命なのだろうか?
人間は全て自由に選択でき、自分で決めることができるのに遺伝子の繁栄や自分の国の繁栄等考えていない人が多いのではないか。全て自分のため。自分の存在意義を問われた。長く生きること、自分のやりたいことをやるだけ生きること、その人生は果たしてそこまで意味があるのだろうか?オオスズメバチのように使命を考えて遺伝子の繁栄のために命を捧げる生き方の方が随分自分が生まれた意味があるのではないか。
極論にはならないようにしないとですが、今自分の国が繁栄する方法、日本人の遺伝子が繁栄し人類に少しでもプラスになるような生き方をしたいと思いました。
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裏表紙も見ずに読み出してすぐに驚いた!
誰?「マリアは木立の中を縫うように飛んだ」…マリアはオオスズメバチ!
全く知らなかった世界が広がっていく。
オオスズメバチの生態を学術的に描くとともに、小説としてドラマも成立させている。
自分の使命を遂行しながら、考え、恋もするマリア。自分の帝国を維持する、子孫繁栄を優先する【掟】を守る。
昆虫は100%本能行動だと思っていたが違うかも⁈と考えてしまった。
ゴルフ場で蜂が寄ってくる。手で払わないように気をつけ逃げていた。今後は少し観察してみよう。
読む価値がある稀有な一冊!
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小学2年生でこの本を読んだことが、その後の人生に大きく影響していると感じる。オオスズメバチ視点の物語を読み進める中で、地球上の生物への興味と死生観の変化、俯瞰に似た拡張的な視点を獲得した。おそらく生物学にのめりこむ端緒となった作品で、読んでいなかったらと考えるとぞっとするくらい人生を豊かにするきっかけをくれた。
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面白い設定でした。オオスズメバチの一生を疑似体験する。人間を死に至らしめるので、生態系の頂点かと思いきや、日々、食うか食われるかの毎日を送っている。しかも、オオスズメバチの働きバチの寿命が30日。働きバチの「使命」はオオスズメバチの帝国を守ること、「偉大なる母(女王バチ)」のため、戦い続け餌を運び続ける。働きバチが子どもを産むと遺伝子共有率が50%、に対して女王バチが子どもを産むと遺伝子共有率が75%になる。効率よく良い遺伝子を残すためなのかな?働きバチでも強者マリアの一生は儚くも使命を十分発揮した!⑤
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スズメバチの一生を描いたストーリー。
登場するハチはたくさんいるけど、基本的に主人公のマリアだけ覚えておけばOK。
蜂の世界がこんなにも深いとは思いませんでした。
他の虫との戦闘やエサとする表現に残酷さを感じますが、弱肉強食の世界観をリアルに感じることができます。
小説最後の解説にもありましたが、虫を毛嫌いしている人にこそ、生きるための凄まじい争いがあることを知って欲しいです。
Posted by ブクログ
虫は大の苦手。とにかく気持ち悪い。
最初は、あまりの虫の生々しさに読むのを断念しようかと思った。しかし、読み進めるにつれてヴェスパ・マンダリニア(オオスズメバチ)の生き様にのめり込んでいき、一気に読み切っていた。
しかも、自然の中で生きる事の迫力をも感じ、感動までしてしまった。──────
でも虫、嫌いなんだけど。
一匹のオオスズメバチのワーカー『マリア』を通して、オオスズメバチの生態や巣の栄枯盛衰が書かれています。
マリアや仲間達によって、短い季節を本能に従い、それを自分達の使命といて命を燃やして生きる強さと潔さを、自然の摂理や残忍さにあっけなく命を落としていく儚さと理不尽さを感じました。
そして、マリア達との戦いに敗れ、エサとなってしまった、オンブバッタやカマキリ、他のハチたちにも生きる意味があって、、、
読んだ後に、思い出した言葉は、
「仕方無いでしょ? 世界は 残酷なんだから」
「この世界は残酷だ…そして…とても美しい」
(ミカサ・アッカーマン)
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著者は前世が蜂だったのか?と思うほどリアルにオオスズメバチほか昆虫たちの世界が描かれている。読み始めた時は、マリアが恋をして蜂界の秩序を乱すか新女王にでもなるかと予想していたが、そんな単純な話ではない。愛する我が国に命を捧げ、生涯戦士であることに誇りを持ち戦い続ける強いメスバチの物語だった。大東亜戦争を戦った日本の兵士とどこか似たところがあるように感じた。
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蜂を題材にした本ということは知っていたが、正直唸った。
まさか蜂の生態をこの本で学ぶとは思わなかった。しかも頁をどんどん捲らせ情景が浮かぶほど筆者の筆力は凄い。
蜂の生態を題材に、外敵に襲われた日本は一体どうなるのか?。今の平和ボケの日本に警笛をも鳴らす。
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オオスズメバチ視点で描かれたマリアという名の戦士の生涯の物語。ハチの視点が新鮮ながらマリアの抱えた宿命と覚悟に胸を打たれた。この小説から女性の強さを深く感じ取ることができた。
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戦士マリアを通じて描かれたオオスズメバチの生態
ワーカーとして生まれ、獲物を狩り妹達を育て、一生を帝国に捧げる。
神が設計したような合理性で遺伝子を次世代に繋げる生態を科学的知見に忠実に表しながら実にワクワクする冒険譚になっている。
繁栄を極めた帝国とマリアの運命はいかに!
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主人公マリアの戦いに明け暮れる生涯が描かれた物語。
マリアは強くて気高いヴェスバ・マンダリニアのワーカーです。
彼女はアストリッド帝国の為に常に最前線で戦い、帝国に繁栄と栄華をもたらします。
しかし永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める・・・
人間の意識も実はゲノムに支配されていて、私達が自分の意識や意思で行動していると思っている事は先祖から受け継いだヒトゲノムに知らず知らずに従わされているのではないか?
と思ってしまいました。
因みに、雀蜂の話です!
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虫は何のために生きているんだろうと思っていた。オオスズメバチや他の虫たちのそれぞれの生きる目的、戦い方を知ることが出来た。人間と同じで生きる意味とは何かを見つけて必死に生きていた。
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百田尚樹さんの熱量が篭った作品でした。
オオスズメバチのアリアという蜂が主人公なのですが、私たちよりも圧倒的に短い生涯を必死に生きる姿に儚さを感じます。なんだ蜂かと思うなかれです。
Posted by ブクログ
まるで自分がハチの世界に入りこんだような臨場感を味わえる作品でした。
専門的な細やかな知識をもとにした描写は、ハチの世界観をより深くイメージさせてくれます。
虫の話。と嫌厭せずに読んでみて本当によかった!
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オオスズメバチの「帝国」におけるワーカーの物語。 蜂があまり好きではないので、少し抵抗があったけど、実際に読んでみると思ったより面白く、気づいたらその世界観に引き込まれていた。 新しい知識が増えるのは楽しく、今まで興味のなかった「蜂」の生態についても興味が出たし、初めて知れた事も多く、勉強になった。 ストーリーとしても面白く、読みごたえがありました。
2021/05/11
Posted by ブクログ
マリアはオオスズメバチのワーカー(働きバチ)。ハチの擬人化物語、、、みなしごハッチみたいだが、内容は生物学あるいは昆虫学と言えるほど、ハチの生態に詳しい。一方で、自分達の遺伝子を残すために年老いた女王バチを殺すワーカー、優れた戦士マリアの最後、物語としても感動的である。百田さん凄いな。
Posted by ブクログ
世界観がすごい。
あらゆる生命は、恋をして子孫を残すために生まれてきた、という目的を知らされたとき
女性という性はあるのに、子どもを産めない役割、と認識しながら生きていくのは辛いかもしれない。
でも腐ることなく任務を全うして妹たちのために戦うマリアはとても勇敢。
はらはらしながら読めました。
ハチや色んな生物に取材して書いたかのようなリアル!
Posted by ブクログ
オオスズメバチを擬人化し、主人公の働き蜂「マリア」の生涯を通じて蜂の世界を描いたユニークな小説である。この作品は、自然界の厳しさと美しさ、そして生き物たちの社会性を深く探求している。
物語は、マリアという働き蜂の視点から展開され、彼女の日常や仲間たちとの関係が描かれる。
物語の中で、マリアはさまざまな試練に直面する。特に、他の虫との交流や、群れの中での役割を果たすことが強調されている。彼女の成長や葛藤は、単なる虫の物語とは思えないほど感情豊かに描かれ、時には涙を誘う場面もある。自然の中で生きることの厳しさや、仲間との絆がどれほど大切であるかを教えてくれる。
一方、擬人化されたハチたちの会話には、少し説明的な部分も見受けられる。特に、学術用語や数字が盛り込まれることで、時折会話が硬く感じられることがあった。これは好みが分かれるところかもしれないが、虫たちの視点から見る世界は新鮮で、思わず引き込まれる。特に、ハチの生態についての知識が豊富に盛り込まれており、「へぇ~、ハチって、そんなことをするんだ!」と驚きの連続だった。
この作品の魅力は、何と言ってもマリアの勇気と絆である。彼女が無実の罪に直面し、それを乗り越えようとする姿勢は、希望を与える。生き物たちの世界における家族の絆が描かれることで、時には人間社会における絆の大切さをも感じさせられる。自分も、大切な人たちを守るために、どれほどの勇気を持てるか考えさせられた。
Posted by ブクログ
こんなに分かりやすく、オオスズメバチ対様々な生き物の戦いを文字で味わえたことに興奮した。
他の生物との対話の中で違いを感じ不思議に思ったり、自分の生き方に疑問を抱く。
でもその度に、「戦うために生まれてきた戦士だ」と自分を言い聞かせる姿が、かっこよくもあり切なくもあった。
オオスズメバチVSニホンミツバチの戦いは衝撃的で、思わずYoutubeで検索した。
虫は決して得意じゃないから普段は見ないようにしてるけど、この本を読んだ後だと、かっこいい!!って思ったな。
Posted by ブクログ
スズメバチの一生を描いた小説ということで、あまり食指が動かず、ずっと読まずにいた小説だけど、想像していた内容とは違いとても感動した。
もっと淡々とした昆虫記のような本を想像していた。
物語の主人公は、スズメバチの中でも最強と言われるオオスズメバチのメス。オオスズメバチは女王蜂を筆頭に巨大な帝国(巣)を築き上げ、ワーカーと言われる無数のメスバチ達は巣を大きくするため、女王蜂が産む沢山の妹達を育てるために日夜働き続ける。
その生命は長くて30日間というから驚くほど短い。
主人公のマリアもオオスズメバチのワーカー。自分の役目に誇りを持っているが、外部の虫から、恋も知らず、子も産まず、何のために生きているのかと指摘され、時にアイデンティティが揺らぐ。
この本は、生物とはいったい何のためにこの世に生を受けて何のために生き、そして、何のために死んでいくのかという、生物としての壮大な疑問を読者に突きつけている。
昨今の晩婚化、子を産まない人達に対しては痛烈な疑問を投げかけられているようなもの。
では、スズメバチのメスはなぜ子を産まないのか。これにはちゃんとした遺伝子の法則がある。
スズメバチというのは、自分(ワーカー)が産んだ子よりも、女王蜂が産んだ子の方が、自分の遺伝子情報を多く引き継いでいる。
具体的に言うと、ワーカーが産んだ子の遺伝子共有率は50%に対して、女王蜂の産んだ子は75%も遺伝子を共有している。
自分と同じ遺伝子を後世に残すという法則に立つと、自分で子を産むよりも、女王蜂に子を沢山産ませてそれを育て、一匹でも多く生き残って次世代の子を産んでもらった方が効率が良いことになる。
全ての生物は、自分と同じ遺伝子をいかに多く後世に残すかという宿命のもとに生かされているのかもしれない。
たかが蜂の小説と侮っていたら、とんでもない哲学的な一冊だった。
Posted by ブクログ
作者さんは戦争関連の2冊を読んだのと、その後メディアでのキャラがあんまり好かんかったので以降敬遠してました。
が、人に進められて読んだ。いきもの好きの人に進められて、納得の内容。幼少の頃シートンとか椋鳩十とか読んだ頃の懐かしい気持ちになりました。しかしゲノムの説明はへたくそでした(笑)
Youtubeで生態動画見ようと思って探してたんですが、なんか個人が買ってる虫で実験してみた系が多くてなんだかな~ってなりました。それはそれで興味を引く動画なのは否定しませんが、NHKとかどこかの博物館とか自然公園とかの動画の方がまじめでまともでした。
生きることの意味
オオスズメバチに限らず、蜂たちの生態がとても面白かったと同時に、
妹たちを育てるために戦って死ぬワーカー蜂のマリアが、雌としてのアイデンティティに揺れたり、何にもならない恋をしたり、それでもやっぱり戦うことに命を懸ける姿に考えさせられました。
私達は蜂とは全然違う生き物だけど、全然違う生き方をするって分かっているのに揺さぶられるのは面白いものです。
Posted by ブクログ
本書の解説で養老孟司教授が、虫が寝ること、小さいけれで脳があることが最近わかってきたと述べている。だとすると、虫にも「意識みたいな活動がある」可能性も期待できるそうである。なるほど・・・実に面白い。オオスズメバチ恐るべし
Posted by ブクログ
オオスズメバチ(マリア)が主役の変わった小説。
蜂って危険で嫌な奴としか思ってなかったから、蜂の種類によって性質が全然違う事、オスの蜂は毒針がないことを知った。
蜂の種類が違う同士で縄張り争いがある事も知らなかった!
オオスズメバチが虫を狩るのは自分が食べるためではなく、子供達を食べさせるためで、そのためには獲物を肉団子にして運ぶそうで。他の種類の虫達は恋をするためだけに生まれて死んでいくが、働き蜂はメスだけど、恋をすることなく、ただ国の子供達を食べさせるためだけに戦って死んでいく。他の虫達から見たら、何のために生きてるの?って思われる変人ならぬ変虫扱いだ。
この小説で好きなシーンは
木の洞の中で休憩していたら、蝶々のミドリシジミとばったり相席して、恋について話をする。
オオスズメバチのマリアは
「そんなこと(恋)なんかに一生懸命なの?」
と少し小馬鹿にしながら言った。
それに対してミドリシジミは浮かれながら
「これから素晴らしいメスに出会えるはず!僕は運がいいから!」と、洞の中で飛んだら蜘蛛の巣に引っかかってすぐ殺された( ´∀`)笑笑
ミドリシジミ「ああ、何ということだ」
↑
ミドリシジミ鈍臭すぎて笑っちゃった笑
蜂同士の縄張り争いで、
マリア達が一方的に襲いに行って仲間死んだのに、後から来た別の仲間が、「姉さん達の敵はうつ!!!」って言ってるの理不尽すぎる( ̄∇ ̄)
この小説に出てくる虫の名前とかわからんから、ネットで画像検索しながら読んだ。途中から野生ポケモン見てるような気分になりながら読んでた。まぁまぁ面白かった!蜂の生態について少し詳しくなった!
Posted by ブクログ
自分に課された使命を全うすることが生物としての役割なのか。自分に置き換えてみると深く考えさせられました。蜂という世界に没入できる面白い作品でした。
Posted by ブクログ
虫は好きじゃないんだよ。
特に蜂は昔顔を刺されてから、怖いんですよ…。
なのに、次もしオオスズメバチ出会ってしまったら、格好良い!と思ってしまうだろう。
その短い一生を懸命に生きたマリア達に献杯。
Posted by ブクログ
他の虫たちとの会話でいろんな生き方に触れてそれでも最後までヴェスパの戦士として生きて飛んだマリアかっこいい。
あっという間の生涯、しかも生まれながら生き方が定まっている中で、一族と自らの定めに誇りを持ち戦うのは昆虫だから?スズメバチだから?
虫は嫌いだけど、蜂は少し好きになった。
Posted by ブクログ
主人公のマリアはオオスズメバチのハタラキバチ。夏の終わりに生まれ、巣が終焉を迎える秋の直前まで生きたドラマチックな人生が描かれている。闘争本能に突き動かされて他の虫を狩りながら、ちらっと他の虫と比べて自分の人生とは何かと頭をかすめる。もしも生き物を擬人化するとすると、このくらいなら許されるのかなと思われる。オオスズメバチの生態や遺伝的特性など、これだけ科学情報を盛り込んで物語になっているのがすばらしい。
社会性昆虫は、子どもを産まずに自分の妹の世話だけに明け暮れてわれわれの間隔からは理解しづらいが、社会全体が一つの生き物だと考えると、納得がいく。これは以前、働かないアリがたくさんいて、その方が長生きだということを知って感じた。1個体ごとの人生だと思うと、一生懸命働くと危険にさらされて命を縮めるのが納得いかないけれど。