狗飼恭子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
日常と非日常が交差する。
東京都と、京都が交差する。そして世界が。
久しぶりの狗飼さん。刊行されてから約1年ですが、新刊の存在を知らず、慌てて入手したところです。
読み終わったら、すぐ2週目に入りたくなること間違いなし。
何とも不思議な質感の物語です。
確かに肌で感じられる現実があるのに、どこか夢みたいな、ふわふわした感じ。それでいてヒリリと焼き付くような痛み。
ああそうか、これが「生きる」ということだ。
今読むからこそしっくりくる。いや、絶望を味わったことがあるからこそ、かもしれない。形は違えど、絶望はこんなにも身近にあって、それを内包して人は生きているんだ、ということに想いを馳せられる -
ネタバレ 購入済み
ラストはぼんやり?
一気に読ませられました。最後はなんだかぼやけているなあ、というのが読後すぐの正直な感想。
しかしよくよく考えてみると、記憶をなくした人間が劇的に過去を思い出すなんていうのは、フィクションが過ぎるのかもしれない。ある日突然、知らない自分を生きなくてはならなくなった者にとっては、生きるに纏わるすべてがあいまいになる。実際のところは、少しずつ、断片的に過去を思い出しながら、記憶をなくす前の「彼女」の感情や行動の意味が、ひたひたと染み込んでくるものなのかもしれない。そしてその後の自分は、もはや「彼女」とは違う人間だ。
そういった意味で、この物語は現実を鮮やかに描きだしていて、だからどこかむなしい。 -
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Posted by ブクログ
他に好きな人ができた。
同棲していた年下の彼氏から告げられた優美。
彼が出ていくまであと一か月。
それまでに彼の心を取り戻したい。
高校時代大好きだった作家さん。
たくさん読んでいたはずなのに、この作品は読んでなかったのかな。
この人の書く恋愛小説は自分にぴったりとハマるものが多くて、よく読んでいました。
5年くらいたちますが、ますますこの人の書く女性に似てきたような感じがします。
最初の一節で、私もかつて似たようなことを付き合っていた人に言ったことがあるなって思い出させられました。
ストーリーというよりは感情の揺れが細やかに表現されていて、切なさがこみあげてきま -
Posted by ブクログ
ネタバレ佐知は母親の営む喫茶店でバイト生活。
昔の男友達から連絡が来たり、その友達の元カノ・桜子が現れたり、平凡な日常にさざ波がたち始め…、というお話。
「喫茶店というものは、いつでも誰のことでも受け入れられる場所でなければならない。」
「彼は彼だから、わたしは好きなんだって。どんな欠点も愛することしかできなくなる。」
「…わたしは好きよ。ずっと好き。一度好きになった人のことは一生好きだと思う。どんなことがあっても、何を言われてもどんなに変わってもきっどずっとずっと。」
「今のわたしで、今の彼で出会えたことを、本当に幸運に思える。」
「別れた恋人同士というものは知り合いでも友達でもなく、別れた恋人以 -
Posted by ブクログ
私が初めてこれを読んだのは遠距離恋愛をしていた頃でした。
"逢えなくても、逢いたいと思い続けることができる限り大丈夫だ" という言葉にとても強く励まされたのを覚えています。久しぶりに読んでみると以前よりももっと言葉が染み込んできた気がします。それは、苦しいくらいに。
普通の小説なら、真夏にコートを着ているなんておかしい人じゃないか。と感じていたかもしれないけど、狗飼さんの言葉から感じたのは、ただひたすらに愛する人を想う気持ちでした。狗飼さんは、なんて丁寧に言葉を紡ぐ人なんだろう。
強い人は自分と向き合える。私も彼女のように逃げることなく自分と向き合えたらと