狗飼恭子のレビュー一覧
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狗飼恭子は大学生のころにずいぶんと読んだのだが、おととし本の大整理を行ったときにほとんど手放してしまった。
しかしいまでもたまに読みたいと思うのが、この『南国再見』だ。
恋人が消えた。私を残して、いなくなってしまった。旅にばかり行っていた彼は「俺、天国って南の国のことだと思うんだ」と言い残して死んでしまった。
彼が残していった大きなコートには彼のにおいがしみついている。そのぶかぶかのコートを羽織って、私は彼のいる南の国を探しに行く。
<人は二度死ぬという。
一度目は自己の死。
そして二度目は人に忘れ去られるという死。
忘却という死。
それならば私は、忘れないでいよう。
できるかぎり、できるだけでいい。
私の中で生きればいい。
私は彼を胸に抱いたまま生きよう。
そのままで、他の誰かを愛そう。
ただ、私は。
ほんの短い間ではあったけれど、二人の重なった軌跡を、大切にしよう。
それが私のできるすべて。
あなたは永遠に私の恋人ではないだろうけれど、私は、永遠にあなたの恋人。>
そんなお話。悲しいよ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレやられた。。最初の方に出てきた、何もしてくれない、分かってくれない別れも考えてる婚約者は『不在』やったんやね。雑学王のくせに私のことは何一つ分かってないのは彼じゃなくて『不在』(じゃあ夢事典を手渡してくれたのは誰?)。何の仕事してるかわからん在宅警備の嫌なヤツって思ってたけど…そりゃ何もしてくれんわな。何の期待も出来ないけど居てくれないと生きられない。絶望が生み出した幻。
不妊治療の末、やっと授かった第一子を流産した自分を死んだことにして恵梨香として絶望と共に京都で生きる事にした香子さんを軸に、突然の事故で夫を亡くして空っぽになった津秋と、恵梨香さんが好きなどこか浮世離れした正臣がロシアへのビザ申請場所で出会うまでの物語。
なるほどみんな妙にボンヤリしてるし、フッ軽やねんけど、この世界に絶望しながらも他人の幸福を願える強さもある。これだけ絶望しかない中で最後に希望が見出せそうな展開で終わってくれたのは救いか。キムさんがええ味出してて、最後のセリフ「恋人同士は希望がなくちゃ一緒に居られないのかも知れない。けどな、一緒に絶望できるのが夫婦ってもんなんだよ。」がめちゃくちゃ今の自分には刺さった。深い。果たして私達は…一緒に絶望出来るのか? -
Posted by ブクログ
【あらすじ】
いつも突然泊まりに来るだけの歳上の恵梨香に5 年片思い中の正臣。婚約者との結婚に自信が持てず、仕事に明け暮れる津秋。叶わない想いに生き惑う二人は、小さな偶然を重ねながら運命の出会いを果たすのだが――。噓と秘密を抱えた男女の物語が交錯する時、信じていた恋愛や夫婦の真の姿が明らかになる。今までの自分から一歩踏み出す恋愛小説。
『人生は続く。それはもう容赦なく。だから信じがたいようなことや嘘や夢物語は、それでも生きていかなきゃならない私たちの、ささやかな光だ。』
『きっと人は、自分に欠けていると信じ込んでいる美徳を他者が発見してくれた時、ひときわ嬉しくなるものなのだろう。』
『こんなことなら佑太郎が言うように、さっさと押し倒してしまえばよかった。ちゃんと嫌われればよかった。彼女を恨むくらいなら、彼女に恨まれたかった。』
『恋人同士は希望がなくちゃ一緒にいられないのかもしれない。けどな、一緒に絶望できるのが夫婦ってもんなんだよ。』
『見たことのない世界の平穏より、目の前のあなたの幸福が嬉しい。自分の愛する人の幸福を願う優しさは大抵みんな持っている。でもそれ以上は難しい。私たちにとって見たことのない世界のものだから。』
【個人的な感想】
物語自体は私にはあまり響かなかったが、心に残る言葉はたくさんあった。 -
Posted by ブクログ
日常と非日常が交差する。
東京都と、京都が交差する。そして世界が。
久しぶりの狗飼さん。刊行されてから約1年ですが、新刊の存在を知らず、慌てて入手したところです。
読み終わったら、すぐ2週目に入りたくなること間違いなし。
何とも不思議な質感の物語です。
確かに肌で感じられる現実があるのに、どこか夢みたいな、ふわふわした感じ。それでいてヒリリと焼き付くような痛み。
ああそうか、これが「生きる」ということだ。
今読むからこそしっくりくる。いや、絶望を味わったことがあるからこそ、かもしれない。形は違えど、絶望はこんなにも身近にあって、それを内包して人は生きているんだ、ということに想いを馳せられる。
そして、もう1つ伝えられるのは、食べることは生きること、ということ。
私たちは、食べたもので形作られる。
生きることを大切にすることは、食を大切にすることに繋がる気がしている。だからこそ、とても共感を覚えた。サムゲタン、アリョンカのチョコレイト、崎陽軒のシウマイ弁当。
いい読書時間を過ごさせてもらいました。
タイトルも末尾に「か」があることが優しい。あるのとないのとでは大違い、ですね。