あらすじ
「俺、天国って南の国のことだと思うんだ」旅行に出かけてばかりだった恋人は、こう言い残して死んでしまった。突然の出来事に戸惑う私は、ただ、もう一度彼に逢いたい、と色とりどりの花々が咲き甘い香りの漂う、彼のいるはずの「天国」を探し求める。世界で一番大切な人を想う、切なく純粋な気持ちをヴィヴィッドに描く、ある夏の一日の物語。
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Posted by ブクログ
食べたものが身体の一部になるように、誰かと共にした時間は人生の一部になる。終わった恋も。哲学的なテーマを繊細なラブストーリーにできるのが著者のすごいところだと思う。
初めて読んだ時は私は地方に住む女子高生だったのですが、最近(上京して10年も経過してから)ギョエンが新宿御苑だ!!と気づいて衝撃をうけたので再読。
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狗飼さんのお話で一番好きな本。
『人は二度死ぬという。一度目は自己の死。そして二度目は人に忘れ去られるという死。忘却という死。それならば私は、忘れないでいよう。できるかぎり、できるだけでいい。私の中で生きればいい。私は彼を胸に抱いたまま生きよう。そのままで、他の誰かを愛そう。ただ、私は。ほんの短い間ではあったけれど、二人の重なった軌跡を、大切にしよう。それが私のできるすべて。あなたは永遠に私の恋人ではないだろうけれど、私は、永遠にあなたの恋人。』
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人を亡くしたら、忘れたくないって思う。でも、少しずつ、その人がいた気配が消えていく。消したくないのに記憶は薄れていく。すごく怖いこと。でも当たり前のこと。忘れないためにどうにかしたい。あがきたい。そんな気持ちがここにあります。
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狗飼恭子は大学生のころにずいぶんと読んだのだが、おととし本の大整理を行ったときにほとんど手放してしまった。
しかしいまでもたまに読みたいと思うのが、この『南国再見』だ。
恋人が消えた。私を残して、いなくなってしまった。旅にばかり行っていた彼は「俺、天国って南の国のことだと思うんだ」と言い残して死んでしまった。
彼が残していった大きなコートには彼のにおいがしみついている。そのぶかぶかのコートを羽織って、私は彼のいる南の国を探しに行く。
<人は二度死ぬという。
一度目は自己の死。
そして二度目は人に忘れ去られるという死。
忘却という死。
それならば私は、忘れないでいよう。
できるかぎり、できるだけでいい。
私の中で生きればいい。
私は彼を胸に抱いたまま生きよう。
そのままで、他の誰かを愛そう。
ただ、私は。
ほんの短い間ではあったけれど、二人の重なった軌跡を、大切にしよう。
それが私のできるすべて。
あなたは永遠に私の恋人ではないだろうけれど、私は、永遠にあなたの恋人。>
そんなお話。悲しいよ。
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私が初めてこれを読んだのは遠距離恋愛をしていた頃でした。
"逢えなくても、逢いたいと思い続けることができる限り大丈夫だ" という言葉にとても強く励まされたのを覚えています。久しぶりに読んでみると以前よりももっと言葉が染み込んできた気がします。それは、苦しいくらいに。
普通の小説なら、真夏にコートを着ているなんておかしい人じゃないか。と感じていたかもしれないけど、狗飼さんの言葉から感じたのは、ただひたすらに愛する人を想う気持ちでした。狗飼さんは、なんて丁寧に言葉を紡ぐ人なんだろう。
強い人は自分と向き合える。私も彼女のように逃げることなく自分と向き合えたらと思いました。これは私にとってとても大切な本で、これから先もずっと大切なままなんだろうと、読み直してからまた思いました。
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死んでしまった恋人の軌跡を、
ある日一日かけて辿る主人公。
もう一度会いたい。もう一度彼の温度を感じたい。
そんな主人公の想いが切なく迫ってくる。
Posted by ブクログ
死んでしまった恋人に、会いに行くお話。
真夏の8月に、彼のカーキ色のコートを着て。
狗飼恭子さんの小説には、全てではないけれどいつも部分的に共感する。
「逢えなくても、逢いたいと思い続けることができる限り大丈夫」