町山智浩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『Twin Peaks』と『聖なる鹿殺し』のみ未視聴でしたが、楽しく読めました。いわゆるネタバレ的な内容に踏み込んだ形で書かれていることが大半ですが、映画の全てがオチや結末で語られるものでもないと思いますし、そこに隠された意図や意味を紐解く役割も持つ本書。
現代はネットの記事も優れたものが多く、メイキングの映像やインタビューも国内向けにシェアされるものも少なくありません。なので、知っている情報もあれば、本書を通して初めて知ったこともあります。特に『Loveless』を観た時のあの救いようのなさ、不毛さ、虚無感の底に隠された意味を知り、観かえしたくもなりました。作り手のこだわり、細部に宿る神を盗み見るような気分。
『Roma』のNetflix のメイキング。配置するエキストラの話で『男女が何人ずつだけでなく どの社会階級から何人かもです 階級の中でも各民族から何人かもです 先住民もいれば混血もいます 白人のメキシコ人もです』と話しているシーンがありました。
語られることのないところにも意味があるように、ストーリーのなかには歴史があり、数々の引用がしのばされ、作り手の想いやある種の執着があり、うまく言葉には出来ないけれど惹きつけられる作品になるのだと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレちゃんと読み込めば今のアメリカの現状が(政治も含めて)
すごくわかるんだろな。きっと。
この本の通りだとすると、ほんとトランプはめちゃくちゃ。
自分に都合がわるい側近はどんどん解雇し、民間人を殺戮した軍人たちは特赦し、自分の発言には責任を持たず言い逃ればかり、セクハラ、ヘイトスピーチは日常茶飯事。
大丈夫?アメリカ。来期はトランプ以外なら誰でもいいとさえ思えてくる。
マイケル・ジャクソンの少年に対する性的虐待も筆者の見解だと真実に思えてくる。あーマイケル、なんで?
永遠の少年なら、愛する少年にあんなことしちゃだめだよ。
ドキュメンタリー映画”ネバーランドにさようなら”は日本には配信されないのかな。
その反対にキアヌ・リーブスはすごい。
目立たない善行が全米各地で目撃されているらしい。
長女は死産、愛する恋人もその一年後に交通事故死、キアヌが10歳の時、父と兄も飛行機事故で失くすという身近な愛する人ばかり失ってきている苦労人だったなんて…。
今回も中身充実の一冊でした。 -
Posted by ブクログ
町山智浩さんのいわゆる外国映画講義は何冊か読んでいるのだけど、不思議なことに日本映画については読んだことがない。映画館で年間100-140作観る私が常に感心するのは、町山さんの映画評だけだ。必ず面白い話が聞けるーそう確信して本書を紐解いた。WOWOWの『町山智浩の映画塾!』の書籍化。
残念なのか、流石というべきか、戦争・パニック映画を講義して大きく扱うのは7作品だけだ。『人間の条件』『兵隊やくざ』『日本のいちばん長い日(1967)』『激動の昭和史 沖縄決戦』『日本沈没(1973)』『新幹線大爆破』『MIFUNE THE LAST SAMURAI』である。2作は未見だが選択は納得する。
『人間の条件』原作者も監督も撮影監督も実体験をフィルムに焼き付けようとした。
『兵隊やくざ』は『人間のー』の裏返し。公開当時、実体験を持つ観客は多かったから、さぞかしスカッとしただろう。会社組織の上司の関係も同じ。風呂場で喧嘩シーン、前貼りなしなのに絶対アレは見せない(大映撮影布陣の技術力)。有田と大宮の関係はBLだ。赤ん坊のために戦闘が一瞬止まる場面は後に『トゥモロー・ワールド(06)』が影響されたに違いない。等々参考になった。
『日本のいちばん長い日』脚本との違いがある。阿南(三船敏郎)の切腹場面と森師団長(島田省吾)の殺される場面は、音だけの描写だっが、血みどろ描写を丸見せした。奇跡的に生き残った岡本監督の出発点だったからだ。『ヒトラー 最期の12日間』に、書類を焼いている所はこの作品のオマージュ。横浜守備隊の隊長がポケットに入れていたのは『出家とその弟子』、『シン・ゴジラ』で『春と修羅』が出てくるのと同じ。
『激動の昭和史 沖縄決戦』71年岡本喜八監督、新藤兼人脚本。未見。戦争を憎みながら、戦争アクションは見事。東宝スタッフ子会社化前の、総力作品。一人ひとりの生き方死に方に描いて、ウエットに描かない。
『日本沈没』(73年森谷司郎監督、中野昭慶特撮監督、橋本忍脚本、そして木村大作の撮影デビュー)タイトルが出てくるまで1時間。『日本のいちばんー』でも20分かけた橋本脚本。この映画によって、二本立て興行が一本立てになった。
『新幹線大爆破』(75年佐藤純弥監督、高倉健主演)80キロに減速したら爆発する。『スピード(94)』『アンストッパブル(10)』で使われた。タイトルを聞いて国鉄の協力が得られなくなったので、遠景は無許可、駅は私鉄だった。元ネタは黒澤明脚本の『暴走列車』。東映は社会的メッセージを入れる伝統がある。博多市民を救うために新幹線を止めて乗客を犠牲にしろ、という選択は「トロッコ問題」。選ぶことができない、というのが正しい(と私は思う)。宇津井健は「私は一回でも新幹線を止めようと思ったから国鉄マンとして失格だ」という。
『MIFUNE THE LAST SAMURAI』(三船敏郎のドキュメンタリー)『椿三十郎』の殺陣は三船が考えた。それまでの殺陣ではなく、お互い切るつもりでやっている。黒澤明が要求した。みんな黒澤に酷い目に遭っている。『蜘蛛巣城』で矢を射られたのは、後々トラウマになったらしい。
日本映画の知識は、圧倒的に春日太一が上。そのせいか、対談のせいか、イマイチ切口が鋭くなかった。 -
Posted by ブクログ
鑑賞後に該当作品を拾って読んだり、作品ガイドとして上映や配信を追いかけたりした。ラジオやネットでの解説とかぶる部分は当然あれど、データや裏話の博覧強記は映画の印象を覆すも促すも、深くしてくれる貴重な本。
もちろん意見として譲れない章もあって、ワンダーウーマンなどは主義主張よりも歴史的な正義の欠落がどうしても納得できなかったりしたものだが、本書ではその監督の主張を手放しで称賛していたりする。ただ鑑賞後に居酒屋で戦わせる議論のような読書感であるため、だから楽しいのだ。
是非年刊でいいのでレギュラー化してほしい。町山師匠の解説する作品はとにもかくにも面白いから。蓮賀なんちゃらとはそこが圧倒的に違う。 -
Posted by ブクログ
戦後日本で多く作られた戦争・パニック映画から見る映画史。基本的には有名作品がほとんどだが、黒澤明と三船敏郎、小林正樹と仲代達矢、田中友幸と田中収、橋本忍、長坂秀佳ら、人間関係や人間像に焦点化しつつ作品を読み解いていく視点はとても勉強になる。個人的には、『兵隊やくざ』シリーズの勝新太郎にしても、初期黒澤映画の三船敏郎にしても、戦後日本映画は、じつは〈かわいい少年のような純粋な男たち〉を一貫してヒーローとして描いてきたのだ、という発見もあって、面白かった。
かねてから、戦後日本の戦争映画が作ってきた「戦争」の表象と記憶について考えてみたいと思っていたが、本書はその入口として相応しい内容と思う。岡本喜八の『独立愚連隊』『血と砂』への注目にも、膝を打ちたくなった。これらの作品は、田村泰次郎の小説と並んで、戦後における日中戦争表象を考えるうえできわめて重要。どこかに先行研究は出ているのか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ離婚協議中の私が、離婚エッセイを読んでみました。
枡野さんは昔から好きだし。
離婚はつくづく十人十色。
結婚よりずっとバリエーションが豊富だよね。「豊富」と言うと、自分でもなんだか悲しく響くけど、でも実際子ども有無からバリエーションは無数にあって、私と誰かの離婚が同じなんてあり得ないんだろうなー。
お子さんと会えなくなった枡野さんは本当にかわいそうで、読んでいる私もその場にうずくまりそうになったくらいだったけど、こうして公の場に晒される元奥様やお子さん達にもやはり同情してしまう。
そして、解説の映画評論家の町山さんが厳しい。鋭い。
町山さんもおもしろい方だな。町山さんの著作もちゃんと読みたいと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ妻に離婚を迫られているAV監督速水の物語だが、中に挟まれる書評は実在の本について。
どこまでホント?とか思いつつ読み進めると、後ろ三分の一は「あとがき」として枡野浩一の実際の状況と、枡野に加え、穂村弘と長嶋有の特別寄稿。そして枡野の短歌30首。最後に映画評論家、町山智浩の解説、という変わった本。
最後の解説で、一気に読者のひっかかりがクリアになる感じ。穂村弘の指摘もするどい。
枡野浩一について、本人が一番わかっていないっぽい。
一言で言ってしまえば、だから奥さんがあのような形を取ってでも離婚したんだね、ってこと。
この人の短歌は嫌いじゃないけど、人としてはね~。
むしろ、発達障害系空気読めないサンプルの参考にはなるかも。
気になる存在ではあり続けそう。 -
Posted by ブクログ
相変わらず町山さんらしい映画紹介本。
映画の造詣の深さがさく裂しつつ、するする読める。
今回は、映画と本(原作だったり、映画に出てくる本だったり)の関係をテーマにしている。
前半は割と本と映画との関係が色濃いのですが、中盤かは「本」との関係が色濃くもなく、本の紹介というよりは映画がほぼ主役です。
紹介されている映画はどれも面白そうだが、特に興味が湧いたのは。
・あなたを抱きしめる日まで
これが実話だなんて、「事実は映画よりも奇なり 」ですね。
・リンカーン
リンカーンが鬱でいて、無類のジョーク好きだったなんて、まったくイメージになかった。
リンカーンの人間の大きさというかオリジナリティに惹かれます。
「リンカーン うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領」って本があるみたいですが、なんかすごい副題のつけ方ですね。
・ニーナシモン 魂の歌
私はニーナシモンの歌は本当にかっこいいと思ってますが、まさかこんな激しい性格の人と思っていませんでした。どっしりと構えていて強いという印象でしたが、それとは違うんですね。
また境遇、人生も波瀾万丈で。黒人として差別のなかエンターテイメント業界に生きていた人たちは基本的に皆、過酷な人生を送っているともいえますが。
・眼下の敵
このエッセイは、映画が副で、本(詩人)がメイン。
自己と肉体を讃えるホイットマン
内向的なエミリー・ディキンソンの対比。
エミリー・ディキンソンも名前も知らなかったが、素敵な詩を書く人ですね。弱い者の味方。
・キャロル
パトリシアハイスミスが別名で発表していた女性の同性恋愛の物語。
パトリシアハイスミスの若い時代は同性を好きになることは精神病として扱われていた。そんな中、パトリシアハイスミスはきちんと自分の性質と向き合い、婚約を解消したという逸話がなんともかっこよい。その時代にそれができるというのは本当に意思が固いのだろうと。