城山三郎のレビュー一覧

  • 毎日が日曜日

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    昭和54年の著作であるが、今読んでも全く古さを感じさせないビジネス小説。帯同家族の生活、会社に振り回される人生など、生々しいエピソードと共にグイグイ読み込ませてくれる。

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    2021年07月19日
  • 臨3311に乗れ

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     近ツリの社史を、前身の日本ツーリスト社長 馬場勇をメインにして描いた、いわゆる経済小説。著者の入念な資料調査と、機微な人間関係のタッチは良かったと思う。ただ個人的には、宮本常一と近ツリの結び付きについて、もう少し話が聞きたかったところではある。
     観光研究の教科書では、往々にして、「マスツーリズム」から「サスティナブル・ツーリズム」へなどと、短絡的な言葉遊びが展開されているが、かかる「マスツーリズム」の内実を細かに描出した本に出会ったことがなかった。本書は、戦後から70年代までの国内における旅行業事情、言い換えれば、当時のマスツーリズムの諸相をまざまざと見せつけてくれる一冊であった。
     日本

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    2021年07月17日
  • そうか、もう君はいないのか(新潮文庫)

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    以前読んだストーリー・セラーを少し思い出した。
    夫婦の愛、というか、結ばれた心の形というか、読んでいて暖かい気持ちになりつつ、遺された者の視点、特に本人ではなく娘という第三者視点から描かれた筆者の姿が生々しかった。静かに行く者は健やかに行く。健やかに行く者は遠くに行く。この言葉は、惑わされずに己が道を行けということなのだろうか。

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    2021年06月26日
  • 雄気堂々(下)

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    武州血洗島の一農夫から攘夷の志士。そして実業界の父へ。渋沢栄一の波乱の生涯を追った描いた長編歴史小説。

    武州の一農夫渋沢栄一は尊皇の志士から一橋家に取り立てられ幕臣。洋行の後、明治新政府に出仕するまでが上巻。

    下巻では、渋沢が明治政府に仕え 銀行の創設や合本会社(現在の株式会社)など民間企業の育成に努める。井上馨、大隈重信、江藤新平、大久保利通、西郷隆盛など登場。渋沢の評伝であると共に明治初期の政治、経済の歴史ともなっている。

    三井、三菱などの後に財閥となる商店との戦い。横浜での外国商人との争いなど維新の前後を通じ渋沢の正義感と合理的な行動は変わらない。

    やがて野に下り第一銀行の頭取や

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    2021年06月26日
  • もう、きみには頼まない 石坂泰三の世界

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    勧められて読んでみた。
    掴みどころのない石坂氏の生き様が物語となっていた。最後まで掴めなかったが、妻や息子を想う気持ちに心動かされた。
    それがしかの1日の意味を私も考えたい。

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    2021年06月13日
  • 雄気堂々(上)

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    現代日本につながる実業界を作った渋沢栄一。武州血洗島出身、幕末は志士であったという。エネルギッシュな渋沢の波乱の生涯を描いた長編歴史小説。

    上下巻の上巻。
    大河ドラマ「青天を衝け」の渋沢栄一、日本経済、実業界の創立の立役者。武州中山道の宿場町深谷宿の北の血洗島の豪農の家に1840年に生まれる。
    自分にとって渋沢は明治の人。調べてみたところ、意外にも高杉晋作、久坂玄瑞、沖田総司と同世代だった。

    本書を読み渋沢も志士だったことを知る。
    幕末に開国。攘夷、威信の風は空っ風の吹く関東地方にも及ぶ。栄一ら若者は江戸への遊学や武芸の修行者との出会いを通じ、世の中を変えようと思い至る。
    一つ間違えば清川

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    2021年06月05日
  • そうか、もう君はいないのか(新潮文庫)

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    ネタバレ

    田村正和さんの死をきっかけに知った本作。城山さんの作品を読むのも初めて。
    出会った瞬間から別れる瞬間まで、ただただ、温かくて深い愛情を、容子さん一点に注いだ城山さんに心を打たれた。
    これを読んでから城山さんの本家の(気骨ある)作品を読むことと、本家の作品を読んでからこの作品を読むこととは、全く違う読書体験になるだろう。
    城山さんファンとにわかファンの私とは、城山さんとの出会い方が全く違う。恐らく、この出会い方は城山さんの本意ではないだろうが、経済小説に疎い私に対して唯一開かれた、貴重な入り口だと思っている。

    ちなみに、児玉清さんによる解説が、この本の価値を高めているように思う。なんと素晴らし

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    2021年05月23日
  • 雄気堂々(下)

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    上巻とは違い血が流れることはないものの、「八百万の神」との対決が次々に起こりハラハラしました。「人を殺したり傷つけたりする衝突でなければ、衝突そのものは決して無意味ではない。」というフレーズの通り、泰然とする渋沢栄一に感銘を受けました。論語と算盤を愛読していますが、渋沢栄一の半生を知ることができ違った感慨を持てそうです。

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    2021年05月05日
  • 雄気堂々(上)

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    ・精神だけではあきたりぬ。実が伴わなければうそだ。
    ・仕事は与えられるものではない。つくり出すものなのだ。
    ・思いきり能力の開花できる仕事にたずさわれるのは、人間としての生き甲斐である。
    等、心に響くフレーズ多数でした。単純に、読み物として面白いです。

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    2021年05月05日
  • 雄気堂々(上)

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    幕末維新激動の中、渋沢栄一が武州の一農夫から明治新政府の一員(租税正、今で言えば財務省主税局長)として招かれるに至る迄がこの上巻で描かれる。尊王攘夷に燃え仲間と共に討幕の行動を起こす決意をしその機を常に窺い乍らも世の中は目まぐるしく変化し続け、なかなかその意を遂げる事が出来ない。しかしそんな中でも、栄一は世の中の動きを常にキャッチアップして、初志貫徹する事の武士としての潔さ等に縛られる事なく、今どうすべきかの方向性を柔軟に修正する事が出来る。そんな思考・行動特性が、回りの若くして散っていった仲間に比べて、僥倖とも言える程の境遇に導いて行かれる事に繋がるんだなぁと思う。

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    2021年02月08日
  • 雄気堂々(下)

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    最後の物語の展開は早かったが、渋沢栄一の人生と、日本の動きが連動しているダイナミックな動きを感じることができた。

    自分を生かしながら、人を信じ、人のために生きるとはどういうことなのか。
    私も常にその視点を忘れないように生きていきたい。

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    2021年02月06日
  • 雄気堂々(下)

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    勇気堂々、斗牛を貫く
    人格形成、国家形成、時代形成。
    八百万の神達、神計りに計りたまえ。
    やろうとしていることは、すべて知識も経験もないことばかり。わからんものが智慧を出し合い、これから相談してやっていこうとしている。
    いつの時代も混沌としているから先例は役立つ。しかし全てではない。知恵と勇気を持って生きていこう。

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    2021年01月17日
  • 雄気堂々(上)

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    自分の変わり方について「生も大いに老練用ゆるところこれある人物に相成り申し候」と書く。
    老練とは久しく経験を積み、物事になれて巧みなこととある。
    環境は人格形成に影響する。広い視点を養うようにしたい。

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    2021年01月17日
  • そうか、もう君はいないのか(新潮文庫)

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    夫婦愛にほっこりしたあと、娘さんのあとがきが涙で霞んで読みづらい。
    「五十億の中で ただ一人「おい」と呼べるおまえ
    律儀に寝息を続けてくれなくては困る」

    結婚当初から、一緒に長生きしよう、と言ってくれ るパートナーとできる限り長く一緒に幸せに暮らしたいなぁ、と改めて強く思った次第。一緒に長生きと言いつつ、必ず、自分より長生きしてくれ、と付け加えるパートナーの温かな言葉はいつもわたしを少し切なくさせるのだ。

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    2021年05月05日
  • 男子の本懐

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    「静」の浜口雄幸と「動」の井上準之助。対照的な二人の人生が金解禁という大事業を前に交錯し、政治を動かしていく様を史実に基づいて生き生きと描いた傑作です。二人は対照的でありながら、働くことについての信念や経済観などの核心部分では通低している部分があるように思え、そこもまた面白いです。

    二人は、戦前、命をかけて軍部に立ち向かえた最後の政治家ではないかと思います。二人の死後、軍部に物言える政治家を挙げろと言われてもなかなか難しいのではないのでしょうか。

    日露戦争と太平洋戦争に挟まれた時代の、しかも経済の話ということで、日本の近現代史の中ではあまり陽の当たらない箇所をテーマにしていますが、二人の波

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    2021年01月18日
  • 落日燃ゆ

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    文官としては唯一A級戦犯で処刑された広田弘毅の伝記です。
    外交官として地位を築き、望まない戦争に巻き込まれていく広田弘毅をえがいています。
    読み終わった後、広田弘毅の生き方のファンに慣れるような本です。

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    2022年07月06日
  • 役員室午後三時

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    面白い!!

    「官僚たちの夏」でも感じたことですが、登場人物の躍動感、リアリティを描くのが抜群に上手いです。
    単純な善悪二元論、勧善懲悪的世界観ではなく、「それぞれの正義」がぶつかり合い、ハレーションを起こすことで物語がいきいきと進んでいきます。

    とても読み応えがあり、経済小説の傑作だと思います。

    余談ですが、読んでいてひょっとしたらこの矢吹は、沈まぬ太陽の国見と同じモデルでは?と思い、調べてみたらやっぱりそうでした。違う物語がこういう形でつながるのも面白いですね。

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    2020年12月30日
  • 官僚たちの夏

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    おもしろかった。
    官僚に対する漠然としたイメージが、少し変わった。

    ただ、ここまで仕事に打ち込み、24時間働く男たちの姿は、心打つものはあるが、女性の視点で見ると、無理だなと思ってしまう。
    ひと世代前の働き方、人生観かもしれないな。

    どちらかというと、作中の登場人物である片山の考え方に共感した。

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    2020年12月12日
  • 雄気堂々(上)

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    来年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、そして新1万円札に決定した渋沢栄一の前半生を描いた「雄気堂々」上巻。近代日本最大の経済人であり、そのダイナミックな人間の形成を激動の中に描く雄大な伝記文学!

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    2020年12月10日
  • 官僚たちの夏

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    本作の舞台になった1960年代から60年が経っていますが、本作が持つメッセージ性は少しも色褪せることなく、それどころか現代人に向けたものであるかのような錯覚さえ覚えます。

    天下国家のために働くエリート官僚たちの姿をリアルに、生々しく描き、官僚国家が孕む問題点を鋭く描きます。
    登場人物のキャラクターがそれぞれ立っているのですが、それは決して一面的な平板な設定ではありません。それぞれの信念がぶつかり合い、信念と現実とのギャップに苦しみ、それぞれがもがきます。
    国家のために働く、官僚たちのリアルがここにあります。

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    2020年11月08日