城山三郎のレビュー一覧
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BtoC (大衆相手)から BtoB(企業相手)の商売に手をだして、本来の才能や神通力などが失われることもある。評判だったお好み焼き屋のオヤジがナイロン工場を始めて失敗する。「大衆は海である。焦れば溺れるが、身を預ければ浮かばせてくれる。機械を相手にせず、大衆相手に生きるべきだった。大衆を相手にする商売だからこそ花開いたのだ。大衆を捨てて、神通力が失せ、自分も捨てられる羽目になったのだ。」 古い本だけど、今も十分通じる。安売りの薬屋から年商500億のチェーンスーパーに育てる主人公は、ダイエーの中内功がモデルらしい。後半、”平安”電器とダイエーとの再販価格をめぐる争いも描かれています。
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ネタバレちらほらと、著者の体験や考え方が分散されつつも、根本的なものは何一つ変わらない。
時代の中で、みな、自分の立ち位置をきちんと理解し、その先を見通し、それぞれの場所で生きている。
考え悩むだけに終わらず、「生きている」のだ。
しかし、その生き方はがつがつとしたものではない、少年兵らは、まだ子供だというのに老成していて、「仕方ない」中で生きている。悲しいはずの死も仕方なく、ただの自然の中の流れ…ひどくさみしく、しかし最後の短編からは、この時代も今の時代も、どこか何かが欠けていて、それで完結しているような感じがした。
あの時代に生きていた人の、あの時代の感覚にもっと触れたい。 -
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城山三郎による、石坂泰三の生涯を描いた長編小説。
石坂泰三・・・第一生命、東芝社長を歴任後、高度成長期に長年、経団連会長を務め、“日本の陰の総理”、“財界総理”とうたわれた、気骨ある財界人。
もともとは、土光敏夫の本を何冊か読んでいるうちに、
土光氏が影響を受け、色々教えられた先達として石坂が語られているため、
読んでみた。
土光は、清貧・実直でいくならば、
石坂は、自由奔放・豪放磊落。
しかし、二人揃って、筋を通し、言行一致の人であり、
栄誉や権力・お金を全く求めないところなど、
生き方がとても似ている。
土光との比較で読んでみると、
経営者、あるいは人としての生き方の一つの指標を得 -
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ネタバレフィリピン、ルソン島で地獄を経験した矢口は日本に帰り、「どうせ一度は死んだ体」と割り切って会社を辞め、「価格破壊」を標榜しスーパーマーケットを立ち上げる。
従来のメーカー⇒卸⇒小売という商流の中にあった慣れ合いや癒着を一切排除し、次々と常識を打ち破っていく矢口の言葉・行動は力強くて圧巻。
常識を打ち破る姿が痛快で、文章の歯切れはいつもの城山三郎のように非常に良く、読んでいて本当に気持ちがいい。
モデルは誰だろうと思って調べるとやはりダイエーの中内功であった。
原体験のある人は強い。自分にはそんな強烈な原体験はないけれど、この本だって原体験になりうる。だから小説でも読書はやめられない。