城山三郎のレビュー一覧
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倉敷紡績、クラレの創業家、大原家。明治後期から昭和初期にかけてこの一地方企業を率いた大原孫三郎氏の半生をメインに、その息子である總一郎氏までを描いた城山三郎の小説。孫三郎氏の社会から得た富は全て社会に権限するべきだという「主張(意志)」と、戦乱期にあって会社を守り育てた剛腕経営者としての一面。ほぼ一個人が設立した、世界有数の美術館である大原美術館、今でいうシンクタンクにあたる社会問題研究所、地域に開かれた病院の建設など、業績を上げればキリがない。当時の経済学者が、「財を成したという意味では三井、住友、三菱に劣るが、財を用いて公共に資したという意味では、いかなる事業家よりも偉大であった」と絶賛。
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7人のA級戦犯のうち、ただひとり文官で処刑された広田弘毅の生涯を描いた毎日出版文化賞、吉川英治文学賞受賞作。
広田は福岡の貧しい石屋の子に生まれながら、苦学して外交官の道を選びます。その理由は純粋に日本が外交の力の必要なことを痛感したから。時代は大正、昭和の激動期。本書の前半は幣原喜重郎、松岡洋右、吉田茂といった外務省の一癖も二癖もある人物たちとの対比によって広田の「自ら計らわぬ」という超然とした行き方を浮き彫りにして、広田の人間としての面白さ、魅力を描いていきます。また、満州事変、支那事変の関東軍の暴走を懸命に食い止めようとする広田の外交官としての責任感、平和への希求が冷静に描かれます。
後 -
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ネタバレ東京裁判の結果、A級戦犯としてただ一人文官でありながら処刑された広田弘毅。
名前は知っていたけれど、どういう人物であったのか、この本を読むまで知りませんでした。
貧しい石屋の長男に生まれ、勉強は好きだしよくできたけれども家の後を継ぐことしか考えられなかった少年時代、彼の才能を惜しんで進学を強く勧めてくれた人がいたおかげで 東大まで進む。
そして日清・日露戦争後の国際情勢を見て、軍隊だけでは国際社会で勝ち残ることはできないと、外交官を目指すのです。
戦争で得ることのできなかった国益を、外交の力で得る。
そのためには多くの国とうまくやっていく力がないとだめだ、と。
しかし時代はどんどんきな臭 -
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ネタバレ今年は仕事でもプライベートでも「死」と向き合う機会がとても多かったので。
遺族として、共感出来るところがたくさんあったし、読み進める中で母や祖父の事を思い出さずにはいられなかった。
ー死んだ人もたいへんだけど、残された人もたいへんなんじゃないか、という考えが浮かんだ。理不尽な死であればあるほど、遺族の悲しみは消えないし、後遺症も残る。ー
母の死後、残された父を見ているのが辛い。母の死を受け入れるのは辛いが、それ以上に残された父を見ているのが辛い。突然死という理不尽な死だっただけに、後遺症は大きい。
ー最愛の伴侶の死を目前にして、そんな悲しみの極みに、残される者は何ができるのか。
私は容 -
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指揮官たちの特攻 城山三郎
8月は毎年、戦争に関する本を読むことにしている。今年は、コロナ対応が後手後手に回っていることなどの政治の失敗が先の戦争の体制と酷似している点などが叫ばれ、「やはり日本は戦争をしてはいけない」というムードが流れているように感じる。神風特攻隊などというものは、作戦としては最低の代物であり、パニックに陥った当時の政府にとっての苦し紛れのものであったことが想定される。特に、本書では特攻によって死にゆく若者たちの悲哀を描いている。無論、神風特攻隊によって死にゆく道を取った人々は、しっかりと弔われるべきであり、なお本書を読むと彼ら自身が作戦に不服としながらこの世を去っていった -
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東急グループ総帥
東急グループ総帥の五島昇氏の生涯が描かれています。とても面白い一冊でした。創業一族の二代目としての葛藤、そして、二代目だからこその生き様を拝読できました。