あらすじ
東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外相広田弘毅。戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共に処刑されるという運命に直面させられた広田。そしてそれを従容として受け入れ一切の弁解をしなかった広田の生涯を、激動の昭和史と重ねながら抑制した筆致で克明にたどる。毎日出版文化賞・吉川英治文学賞受賞。
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日中戦争直前の内閣総理大臣 広田弘毅を主人公とした作品。
内閣総理大臣として、外務大臣としての広田の努力とそれを破壊する陸軍の暴走から当時の様子が想像できた。
また、東京裁判の様子も非常に詳細に書かれており、勉強になった。
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こんなにも歴史を面白いと感じたことはなかった。
最も難しい時期に首相を務めた広田弘毅の生涯を描いている。自身の正義を貫くことが人間にとっていかに難しいことか。国を率いる人間であれば尚更のことだろう。
戦後に行われた一連の裁判の展開は、それまでの広田氏の行動を知った後では耐え難いものがある。自身の無実を主張するよう説得に当たった人の気持ちがわかるし、裁判の不合理を嘆きたい気持ちにもなる。
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明治維新から突貫工事で近代化を進めた日本。
長州の作った憲法により、軍の統帥権が政府から独立した機構が作られる。
結果、本来、米英ではシビリアンコントロール下にあり、行政の一機関であるはずの軍が、大日本帝国では政府のコントロールが効かずに暴走。政府が軍事を政治の一手段として使うことが出来なかった結果、日本は壊滅的な敗戦に追い込まれる。
国家の体制も建築物と同様に、設計に欠陥があると長い年月で腐敗と疲労によりその欠陥部位から国家全体が崩壊する。
当時の日本という国の設計ミスに広田弘毅は官僚、閣僚、首相いずれの立場でも苦しめられた。
憲法9条の見直し気運が数十年前と比べると高まっているように感じる。自衛隊に対する国民のイメージも良くなってきていると思う。
これ自体に嫌悪感は感じてはいない。しかし自衛隊、つまり軍事力の増強を進めるのならば、必ず、それを政府(文民)が完全にコントロールできる仕組みを確立しておかなければならない。そして同時に国民が政府を自由な意思で選挙できる体制を堅持しなければならない。
過去と同じ失敗は避けたいものだ。
小説に話を戻すと、
広田弘毅は東京裁判では自らを弁明すれば、違う結果もあり得たと思う。
死をも恐れず己の生き様を貫く姿勢は、非常に感銘を受けるが、凡人の私には到底そのような覚悟を持って生きることはできないだろう。
名誉を守りたい、死を免れたいと凡人は思うところ。到底真似はできないが、純粋に彼の生き様は尊敬できる。また、国家体制の欠陥により苦しい人生を強いられた彼に同情している。
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夫に面白いから読んでほしい!と言われ、重い腰を上げ読んでみることに。
(難しそうだけど読み切れるのか…とやや心配だった。)
その心配は杞憂に終わり、のめり込むようにして読んでしまっていた。
ここ最近読んだ本の中でもダントツで面白かった…!!!
史実に基づいて丁寧に描かれています。
情景描写も好きだった。
読んでいて面白かったと同時に、自分がいかにこの辺りの歴史について無知であるかを知りました。
歴史の学び直しをするのもいいなと思った。
本当におすすめなのでぜひ読んでほしい一冊です。
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101代続く総理大臣のなかでお世辞にも有名とは言えない人物であり正直いって本書に触れるまで広田弘毅を知らなかったが一読で大ファンになれるほど、細やかな調査と強いリスペクトのもと、グズと言われた男を決して美化することなく書いており「自ら計らわず」の生き方を真似たいと思わせるほど、カッコいい。必読。
Posted by ブクログ
戦前から戦後までの日本が描かれていた。
義務教育で学んだ時の印象とは全然違った。
日本も、欧州も。
もちろん、内容はどの立場かによって大きく変わるんだろうなと思う。けれども、広田さんの和平外交は少しでも今の日本を残した理由だと信じたいと思った。
軍の暴走は、誰が悪いとかではなくあの時代の完全に麻痺した考え方が全てを滅ぼしたんだろうなと思った。
2度と繰り返してはならない。
そう思いながらも、今の政治に不安を覚えたりした。
Posted by ブクログ
広田弘毅の事は知らなかったが城山三郎の著書だったので拝読。非常に勉強になったし、広田弘毅の生き方にはリスペクト出来た。
東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元外務官僚、元総理、元外相まで勤めた広田弘毅。
戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共にA級戦犯として裁かれ、それを従容として受け入れた広田弘毅の潔い生涯を激動の昭和史と重ねながら克明にたどる。
福岡の石屋の倅として生まれ余りの優秀さゆえに進学。日清、日露戦争で戦争に買ったが外交で負けた日本を見て外交官を目指した。
どんな時も国際情勢を冷静に分析し誠意をもって外交を行う広田は、軍人に負けない強い信念と、粘り強さと、実行力を持つ数少ない人物として、外務省の役人から外務大臣となり総理大臣へ上り詰めた。
常に平和外交を目指して軍部、右傾の世論と冷静に戦い続けた広田だが最終的には太平洋戦争突入を止められなかった。統帥権独立の名の下に軍部は独走し、同じ軍部でも陸軍、海軍が対立。同じ陸軍内でも参謀本部と陸軍省が対立。関東軍の勝手気儘な独走によって事態は修復不能になってしまう。
史実に忠実に描かれた小説で、近代史を理解するのにこれ以上正しく歴史が描かれた小説は少ないと思う良書である。
太平洋戦争、第二次世界大戦について詳しく知らない人でも、飽きずにテンポよく読めるので歴史を知りたい人にもお勧めです。
丁寧な取材により小説化されているので脚色はほとんど無く外務省同期の佐分利貞男の死因を巡る陰謀についても一部、丁寧に描かれているが故に佐分利貞男の遺族より訴えられている。
この裁判は故人に対する名誉毀損が成立するかどうかと一時期大変話題となった。
個人的には、当時としては珍しかったであろう高級官僚であった広田が恋愛結婚を実らせた妻静子との仲にも真実と誠実さが垣間見れた。
静子は広田が巣鴨に収監されたのち、広田を楽にしてあげられる方法が一つあると言い残して思い出の鵠沼の別宅にて自殺している。享年62歳。
東條英機他の軍人A級戦犯達が、13階段に向かう前に万歳三唱を行った事に対して象徴的な皮肉のような冗談を言っている。万歳、万歳を叫び日の丸の旗を押し立てて行った果てに、何があったのか思い知ったはずなのに、ここに至っても、なお万歳と叫ぶのは、漫才ではないのか?
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文官で唯一、東京裁判で絞首刑に処された、広田弘毅についての本作。
日本人として必ず読むべき作品だと感じた。
日本の教育って史学を世界史と日本史に分けている上に、理系だと高校以降史学をきちんと学ぶ機会がなかったりするので、日本がどういう風に戦争に向かったのか、きちんと頭で理解出来ていない人が多いのではないか。(大変恥ずかしながら、かくいう私もその一人だし、、、)特に私のような所謂ゆとり世代。
意欲がない人に学べというのは無理があるかもしれないからこそ、義務教育時点できちんと広田弘毅のような人について教えてほしいなあ、、、。
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極東裁判で天皇を守るために身を挺して責任を被り、門官で唯一絞首刑となった男の話。
小学生の時に読んで心を打たれた。
もっと世に知られるべき日本の隠れた偉人。
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平民宰相である広田弘毅の物語。外務官の広田は平和外交を主として活動するが軍部の暴走により戦争を止めることができなかった。長州の作った憲法により統帥権干犯問題を出され軍部は中国を侵略。極東軍事裁判では自ら証言に立つことなく責任を負い文官で唯一の死刑になる。行政が軍を制御できないとやはり戦争になるのか。広田と同期の吉田も大概な奴だ。紫綬褒章は広田かららしい、文化人にも日が当たるようにしたのだ
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1人の男の壮絶な人生の話だった。以前東京裁判のドラマを見た時は裁判官側の視点だったけど、この小説は逆で、何が正しいのかも曖昧になってしまった。
ただ、1人の文官の使命、行動、覚悟を見た時に、心を動かされずにはいられない、ある意味では清々しいしく真っ直ぐな話し。
ただただ感動した。
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7人のA級戦犯のうち、ただひとり文官で処刑された広田弘毅の生涯を描いた毎日出版文化賞、吉川英治文学賞受賞作。
広田は福岡の貧しい石屋の子に生まれながら、苦学して外交官の道を選びます。その理由は純粋に日本が外交の力の必要なことを痛感したから。時代は大正、昭和の激動期。本書の前半は幣原喜重郎、松岡洋右、吉田茂といった外務省の一癖も二癖もある人物たちとの対比によって広田の「自ら計らわぬ」という超然とした行き方を浮き彫りにして、広田の人間としての面白さ、魅力を描いていきます。また、満州事変、支那事変の関東軍の暴走を懸命に食い止めようとする広田の外交官としての責任感、平和への希求が冷静に描かれます。
後半は戦犯として裁かれる東京裁判での広田の描写が中心となりますが、前半で広田の協和外交を見てきた読者は広田が被告となったことに驚くはずです。本書は東京裁判が非常に政治的なイベントであり、外交官として「戦争について自分には責任がある。無罪とはいえぬ」と自ら弁護を行わなかった広田の潔さを描き、広田が絞首刑になるまでの過程を淡々と記します。
激動の昭和史を描いた歴史小説ですが、広田と夫人、3男3女との交流も触れられ、小説に奥行きが生まれました。
広田弘毅は本書で悲劇の宰相として知られるようになりました。ただ、実際の広田に関する実際の評価は一定していないと理解しています。それでも、外交官としての広田の生涯を鮮明に描いた作品は本書だけではないでしょうか。とても面白い本であることは間違いなく、一気に読みました。昭和史を手っ取り早く俯瞰したいという方にもお勧めですが、他の本も読む必要はあると思います。
Posted by ブクログ
日本が戦争に足を踏み入れないように、外交努力を重ね各国の大使からも信頼を得ていた広田弘毅さんの生涯を綴った作品。広田さんが重ねた努力は軍人の暴走、妨害により悉く潰されてきた。にもかかわらず東京裁判では、その軍人たちと共に処刑される。一切の弁解をしなかった広田弘毅さんの軌跡を学ぶことができる。
東京裁判の歪んだ構図も伝わってくる。
8月は、戦争に関する書籍を手にしたくなる。お勧めの一冊。
Posted by ブクログ
東京裁判の結果、A級戦犯としてただ一人文官でありながら処刑された広田弘毅。
名前は知っていたけれど、どういう人物であったのか、この本を読むまで知りませんでした。
貧しい石屋の長男に生まれ、勉強は好きだしよくできたけれども家の後を継ぐことしか考えられなかった少年時代、彼の才能を惜しんで進学を強く勧めてくれた人がいたおかげで 東大まで進む。
そして日清・日露戦争後の国際情勢を見て、軍隊だけでは国際社会で勝ち残ることはできないと、外交官を目指すのです。
戦争で得ることのできなかった国益を、外交の力で得る。
そのためには多くの国とうまくやっていく力がないとだめだ、と。
しかし時代はどんどんきな臭くなり、天皇のため・お国のためを振りかざす陸軍が、政府の言うことも参謀本部の言うことも天皇の言うことすら聞かずに独断専行することになります。
”軍中央は、事変の不拡大を関東軍に指示した。それが天皇の命令であり、統帥といわれることなのに、関東軍は、統帥の独立をうたいながら、統帥に背いて独走した。”
*関東軍:中華民国の関東州に派兵された大日本帝国陸軍の部隊
*統帥権:大日本帝国憲法下における軍隊の最高指揮権
広田は割と早いうちに陸軍の暴走に対して「長州の作った憲法が日本を滅ぼすことになる」と言うのですが、その憲法すら踏みにじって陸軍が暴走してしまうわけです。
このあたり、偽勅を振りかざして天皇をないがしろにした長州のやり口に似てる。
明治維新も昭和維新も同じだな。
そして、平和外交こそが日本が国際的に生きる道と信じている広田のもとで、外務省官僚すら軍に同調していきます。
「目先ばかり見て、勢いのいいところにつこうとする。ああいう軽率な連中に国事を任せては、日本はどこへ行くかわからん」
大きなことを成し遂げて名をあげようとする輩が多くいるなか、広田は最初から最後まで「外交官としては、決して表に出るような仕事をして満足すべきものではなくして、言われぬ仕事をすることが外交官の任務だ」という。
外交官だけでなく、公務員ってそういうものだと私は思って仕事をしていますが。
どんな時も国際情勢を分析し、誠意をもって外交を行う広田は、とうとう大臣に迎えられます。
軍人に負けない強い信念と、粘り強さと、論理を持つ数少ない人物として。
外務大臣から総理大臣へ。
政治家となると、途端にいろいろなものがいろんな人から送られてくるようになりますが、広田はそれを孤児院や日雇い労働者にまわします。
そんな彼を「人気取り」と書く新聞もありましたが、「いつの世にも、下積みで苦しんでいる人々がある。そういう人々に眼を向けるのが、政治ではないのか。政治は理想ではないのだ」とつぶやく。
なんとか陸軍の暴走を食い止めようと手を打ちますが、常に一歩軍の暴走が先んじてしまい、とうとう戦争が始まってしまいました。
東條英機の独裁下で、満足に御前会議を開くことさえできないなか、それでも平和への努力を惜しまなかった広田が、どういう運命なのか軍人たちと一緒にA級戦犯として処断されます。
「あの時はどうしようもなかったんだ」「そういうつもりじゃなかったんだ」「前線が勝手に暴走したんだ」
見苦しく言い訳をする軍人たちのそばで、広田はついに自己弁護をしなかったのだそうです。
「善き戦争はなく、悪しき平和というものもない。外交官として、政治家として、戦争そのものを防止すべきである」
それができなかった自分を、彼は決して言い訳することなく、刑に臨みました。
東京裁判が多分に政治的な裁判であり、最初からバランスとして文官を入れたいという、答えが先に決まっている茶番でした。
近衛文麿が自殺しなかったら、広田にお鉢が回ることはなかったのではないでしょうか。
それでも、外交官時代の広田を知る各国の大使たちが助命嘆願してくれてもよかったんじゃないの?なんて思ってしまいますが、どうなんでしょう。
私としてはパール判事が広田についてどのように語ったのかを知りたいところです。
*パール判事:戦勝国が敗戦国を裁くのは事後法で、罪刑法定主義に反するとしてA級戦犯全員を無罪とした
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文官としては唯一A級戦犯で処刑された広田弘毅の伝記です。
外交官として地位を築き、望まない戦争に巻き込まれていく広田弘毅をえがいています。
読み終わった後、広田弘毅の生き方のファンに慣れるような本です。
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「自ら計らわぬ」という生き方。
戦争を回避しようとした広田弘毅がなぜ処刑されたか。
当時の極東裁判のことが詳しく書いてあり学ぶことが多かった。
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東京裁判にて死刑を受けた、唯一軍人ではなかった元総理、元外相の広田弘毅の一生。
知らなかった。
外交官として戦争を始めないように努力した人物。
でも歴史は勝利したものによって書かれるとは正にこの事で。
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再読。良い小説。
広田弘毅の人生が軍部の暴走により決定づけられていったことは事実であろう。一方で広田の悲劇性がどこまで「描かれたもの」通りであるかは眉唾ものである。ここに描かれていることが間違っているという指摘ではないが、広田の真意がどうであるか考える余地を残したい。
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やっと読み終わった。難しかった。
『落日燃ゆ』(城山三郎 著)は、太平洋戦争終戦後にA級戦犯として処刑された広田弘毅を主人公に据え、その生涯と人間性を描いた歴史小説です。以下に感想を述べます。
この作品は、単なる歴史小説を超えて、「責任とは何か」「誠実とはどうあるべきか」を深く問いかけてきます。
城山三郎の筆致は重厚でありながら、感情に流されず、史実に基づいた静かな語り口が広田の誠実な生き様と響き合っています。戦争という巨大な悲劇の中で、「誠実であること」がどれほどの力を持つのか、またどれほどの代償を伴うのかを、読者に突きつけてくるような一冊です。
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太平洋戦争前という混迷の時期に外務大臣、内閣総理大臣という要職にあり、何かにつけ好戦的な軍部による横槍に煩わされながら国際協調で日本を守ろうとするも、戦後の東京裁判で戦争責任を問われ、軍人ではない文官としてはただ1人、A級戦犯として処刑された人物、広田弘毅の生涯にスポットをあてた伝記的な作品です。
源義経や石田三成のような、史上の悲劇の被害者に惹かれる人には、とっても刺さる作品だと思います。
ただしかれらを強い武勇や権力、指導力で集団を導いた剛のリーダーとするならば、広田は柔のリーダーシップの持ち主であると言えます。
この作品を読んで私は広田弘毅という人物ほど、<柔>の一字を象徴する人は、なかなかいないのではないかなと思いました。
まず話を聞いて受け止め、知識と状況判断力に基づいた決断を下すというリーダーシップ。
そして彼には<自ら計らわぬ><物来順応>というある意味受け身な人生観が根底にある。
過度に自分を売り出すことはしないし、不本意な場所に飛ばされるという処遇を受けてもこれをすんなりと受け容れ、そこで自分にできることをやる。
終盤の東京裁判においては、死を目前にしても決して抗わず、保身に走らず、責任をとろうとした。
リーダーとしてだけではなく、その人柄も、果ては死生観に至るまでも、すべてが柔。
受け身な人生観と評してしまったけれど、それでいて柔のなかに確固とした信念を内包しているような、そんな柔軟性と包容力の権化みたいな人物として描かれている広田弘毅に魅力を感じました。
いっぽうで優柔不断な一面が、軍部の発言権を強くするきっかけとなってしまった、それが平和主義者にもかかわらず、最終的には戦犯として、東條英機などの武官と同列の戦争責任を問われてしまった要因なのかもしれない。
たしかに結果だけ見れば大臣としての評価は必ずしも良くはないだろうし、調べてみると実際、彼に対する辛辣な意見も結構あります。
けれど、自己主張や保身にあふれた現代社会で生きている身からすれば、その対極の人生を貫いた広田弘毅は、めちゃくちゃカッコイイと思います。
言ってしまえば広田弘毅の人生とは、運命に翻弄された、自分はじっとしているのに大波の方から向かってくるような人生であって、そんな人生を描いたこの作品が、悲劇的ムードを帯びることは避けられないかもしれません。
それでも、自分を売り出すこと、自分だけを助けようとすること、そんなものとは無縁だった稀有な男の人生に触れることで、誇り高い大切なものに気づかされる作品でした。
Posted by ブクログ
やっと読めた、、、。難しい。とにかく難しい。ハンカチ→ハンケチと書かれている。時代を感じる作品。意味はわからなかったけど、とにかく読むことだけはやめず、意地で完読。分からないなりにも広田氏の人となりや、妻静子のこと、どの様な生き様だったのかはわかった(つもり)。決して読みにくい文章では無く、自分があまりにも無知だったために読むのに時間が掛かってしまったと言うオチ。A級戦犯。全く意味もわかっておらず1番悪いことをした=A級かと思っていた。恥ずかしい。自国で起こった出来事は日本人として知っておく必要がある。広田氏の生き様にマンザイをおくりたい。
そして、もっと日本が大好きな人が、自国愛が強い人が国のトップに立ってほしい!
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唯一の文官ながらA級戦犯にて死刑判決を受けたという広田弘毅という人物ついて深く知ることができ、それまでの見方と180度変わった。
外交官として長く手腕を振るって和平外交に注力し、また二二六事件で混乱している最中の内閣総理大臣となり、常に国のために奔走してきた生涯だったはずなのに、暴走する軍部と時勢に逆らえず最後はその彼らと共に戦犯の裁きを受けることとなったことに理不尽さを感じまた深く心を痛めた。 しかし最後まで一言も弁明をせず保身に走ることなく、責任を抱え込んで覚悟の中で死んでいった彼のことを思うと哀しみよりも敬意を表することが必要だと感じた。
Posted by ブクログ
日本の歴史を詳細に知ることができた。外交官としての活躍と、戦争回避のための努力と、戦後の裁判での潔さが淡々と描かれていて、逆に著者の熱量を感じた。
勉強になりました。
Posted by ブクログ
清廉潔白に描き過ぎの感は否めないが、文官からみた太平洋戦争に突入する道程を描いていたことは勉強になり、また東京裁判の過程については知らないことも多かった。読んで損はなし。
Posted by ブクログ
歴史小説はシバシカンで成り立っているので他の歴史小説読んでもイマイチピンと来なかったのですが、この本は違いました。行動と他己評価で主人公を形作る筆致に感銘を受けました。城山三郎先生の本をもう少し読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
日本史をほとんど勉強したことがないのと、一般教養不足なのもあり、誰のことを言っているのか、なんのことを言っているのか分からないことが多く、かなり読むのに苦戦した。登場した政治家の中ですぐ分かった者といえば吉田茂くらい、、それもこんな人物だとは全く知らず新鮮だった。
戦争という悲劇を招いたとはいえ、この時の政治家たちには、今の政治にはない政治家としての信念や熱意を感じた。政治家だけでなく会社でも、上役になることを拒む者が多く、今の日本は皆責任を追うことを避けたがる風潮があると思うが、当時はこんなにも皆自信を持ち、野心があり、生き生きしていたのかと、ある意味感動した。
印象的だったのは身内の死に対する広田の受け止め方。自分が広田の立場だったとすると、一生立ち直れないだろうと思った。広田がそれぞれの死を自分なりに解釈し、消化して、かなり前向きにとらえていてすごいな…と思いつつも、只者ではなかったというか、そういう人だからここまでのことができたのかと納得させられた気がする。
A級戦犯という言葉は知っていたが、何も知らなかったと痛感した。自国の歴史くらい、いい大人なんだからちゃんと知っておかねばと反省。
Posted by ブクログ
A級戦犯とは「平和に対する罪」で訴追された者を指し、B級戦犯、C級戦犯はそれぞれ「通例の戦争犯罪」、「人道に対する罪」であるようだ。では「平和に対する罪」とは何なのかというと、「侵略戦争を計画、準備、遂行し、共同謀議を行なったかど」とのこと。
日本では極東国際軍事裁判にて28名がA級戦犯で訴追され、そのうち以下の7名が絞首刑に処せられた。
土肥原賢二:陸軍大将
板垣征四郎:陸軍大将
木村兵太郎:陸軍大将
松井石根:陸軍大将
武藤章:陸軍中将
東條英機:陸軍大将
広田弘毅:文官
ただ一人の文官、広田弘毅。外交官から二・二六事件後の首相となり、後に外務大臣として戦争防止に努めた人物。その生涯を描く本書は、吉川英治文学賞受賞の長篇です。
広田弘毅は、外務大臣として国際協調路線を貫き、とにかく戦争回避に奮闘します。一方で、現実的な判断を兼ね備え、うまく軍部と渡り合おうとしたようにも感じました。統帥権の独立と帷幄上奏権の濫用が軍の暴走に繋がったと認識していますが、そのような状況下、すべて軍部に反対していては、そもそも何もできないか暗殺されるかのどちらかですので、文官としてできることを模索していたように思えます。
とはいえ、何かとタイミングが悪い時期に重職に就いているな、との印象。例えば、二・二六事件後の首相時代は「軍部大臣現役武官制」を採択しています。軍部大臣就任資格を現役の陸海軍大将あるいは中将に限定した制度ですが、これがために軍部の政治的進出が強化されます。そして、近衛文麿内閣における外務大臣時代に盧溝橋事件が勃発し、日中戦争に拡大。南京大虐殺が引き起こされます。日中戦争を始めたことや、南京大虐殺を止める有効な手立てを講じなかったことが罪状となり、起訴されたようですので、広田弘毅自身の本意ではないところで処せられるという、悲しい結末です。広田弘毅の処刑にはさまざまな憶測があるようですが(例えば早々に自決した近衛文麿の身代わり)、いずれにせよ、戦争反対に努めた者に対する処置としては、あまりに皮肉。
ちなみに、不作為の罪という言葉のとおり、何もしないことも罪だと見方もあるようですが、本書を読む限りにおいては、広田弘毅は全く何もしなかったわけではないので、その見方も一方的だな、と思う次第。
激動の昭和史を描く小説は何かと暗い気持ちになりがちですが、広田弘毅という偉大な人物が存在したということを知れたことは大きな勉強でした。