城山三郎のレビュー一覧
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高校で習った昭和史の中でも、トップクラスにその目的や影響がわかりにくい金解禁。この小説を読む前にこれらの知識を押さえておいたほうがよい。
1、金本位制とは、同額の紙幣と金の交換を政府が保証している制度(実際に交換に行くかどうかではなく、後述の効果がもたらされることが肝要)。
2、金本位制では、紙幣発行量が政府の金保有量と一致するため、無限定な紙幣発行はなくなる。
3、金本位制を採用している国の紙幣は国際的にも信用が高くなり、為替相場も安定する(逆にジンバブエドルとか想像してもらうとピンと来るかも)。
4、金本位制を日本が採用すると、外国からの原材料も購入しやすくなるので、それを加工して貿易しての外貨獲得もしやすくなる。国内経済力の地力を高める。
5、他方、金本位制を採用するためには、政府が金をできるだけ保有しておく必要がある。そのためには、金本位制を採用する前に政府のお金を流出させない緊縮財政が不可避となる。
静の浜口雄幸総理と、動の井上準之助蔵相が、この金解禁に不退転の覚悟で臨んだものの、折悪しく世界大恐慌と重なり、貿易での外貨獲得もそれによる景気復興もできない不評判の政策に終わり、2人とも軍部が台頭していく中で、犯人不明のまま暗殺(総理は一命をとりとめたものの体調が戻らず病死)されてしまったというもの。政治家は読む価値あるが、タッチは思いのほかあっさりしていたのと、上記の金解禁の背景を理解しないとこの2人が’’男子の本懐’’で命を賭けて取り組んだ意味が理解しにくいと思う -
Posted by ブクログ
小説ではなくドキュメントまたはレポート
特攻第1号としてレイテ沖に散った関大尉。
最後の特攻隊員となった中津留大尉。
この二人の人生や生い立ち、そして特攻機にのることになってしまった経緯、当時の戦況、さらには海軍の狂気が語られています。
家族を残して飛び立ってい理不尽さ、切なさを感じます
とりわけ、中津留大尉の最期はつらい。敗戦を知っていたと思われる宇垣のいわば「私的特攻」につきあわされての特攻。米軍キャンプに突っ込む直前で、その命令に背き岩礁に突っ込み玉砕したエピソードは胸が詰まります。
戦争終結後の米軍基地への攻撃を回避したということが戦後の日本平和への軟着陸を果たしたという筆者のコメント。
死なずに済んだ命です。
さらに「桜花」や「回天」など特攻用の兵器開発を進めてきた海軍の狂気ぶり。そもそも何の目的の為にその行為を行っているのかが分からなくなっていきます。
戦争は悲惨さ、残酷さを感じる一冊です。 -
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「日本資本主義の父」ともいわれる渋沢栄一にスポットを当てた小説。
今の埼玉県の豪農の家に生まれた渋沢栄一は、幕末の激動の世の中で農家から幕臣、そして海外留学と若かりしころを過ごす。当初は時勢のままに攘夷だった人物が、知らなかった世界に見を置くうちに志の熱さを変えなまま柔軟に方向性を買えていくのは面白い。
憎しみや利己、そういった感情論とは距離を起いて世の中を俯瞰する姿勢が、結果的に実学の世界で後世に名を残す結果に繋がったのだろうな。世の中に渋沢の名がつく財閥は耳にしないが、渋沢栄一に由来するプログラムは耳にする(どこかの大学とか。。。)
誤解を恐れずにいうと、熱い志を持ちつつ激動の世の中をいかに乗り越えていくかを描いた物語。 -
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身辺雑記のような城山三郎のエッセイ。妻に対して「〇〇させる」って表現してたり、巷のかしましいご婦人たち、女子高生たちへのミソジニーっぷりとか、旧人類男性だなと思うんだけど、そうした強気ないっぽうで彼の日常や心象のなかにやさしさや弱気やシャイっぽい部分が存在する。こんな男っていいかもね、とも思った。
本書は「無所属の時間で生きる」という。「無所属の時間に」とか「無所属の時間を」じゃないんだよなあ。そうすると恒常的に無所属という感じがするかなあ。確かに彼は、フリーの文筆家だからこういう表現になるということか。いずれにせよ、無所属の自分だけの時間でこそ、生きる、生かされるということだろう。
そもそも手に取ったのが、「組織の歯車たちよ、そこから離れた時間(余暇とか退職後)のことも考えよ」といったことをきわめて常識でうるさ型のジジイが教訓的に語ってくださるのかと思ったからだった気がするんだけど、そういう本じゃなかった。彼自身も、経済小説の先駆者という認識から商社や銀行など企業上がりの人かと思っていたけど、そうじゃなくて大学教員から文筆家に転身したという人だった。びっくり。
そういえばこの人、『そうか、君はもういないのか』とか、確かに彼なりの優しい気持ちをもった人みたいだもんな。
改題前の書名には「この日、この空、この私」とついていて、この言葉が書中にも何度か出てくるんだけど、この言葉もやさしくさわやかでいい言葉だ。実は「この日」も「この私」も結局はいまそのままいるしかない、連続性の範疇のことだと思う。でもこれに、「この空」という言葉が加わって三拍子そろうと素敵なフレーズになるんだよね。そらを見上げる心の余裕とか、そこから目に入る空の広さや高さ、青さを感じさせる。 -
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著者の講演録で、著書で取り上げた人物の生き方などが語られている。
広田弘毅が印象深かった。貧しい石屋の息子として生まれたが頭がよく、石屋としていい字を書くためにと口説かれて中学、高校に進学して東大に入った。在学中には、勉強会でつくった本「日英同盟と世界の世論」が外交官に感心され、満州に行ってロシアの動きを探る仕事を与えられ、その報告書は日露開戦のための資料とされた。卒業後は外務省に入り、「自ら計らわず」を信条に自らを利することがなかったが、省内の人望が高くなって外務大臣となり、その実績が買われて総理大臣となった。2.26事件の実行犯や首謀者にきちっとした決着をつけ、三国同盟についても共産主義に反対する同盟にしようと努力しており、総理大臣を選ぶ元老の立場にあった西園寺公望は「広田のやったことが限界だ」と評価している。戦後の東京裁判では、シナ事変の時には外務大臣だったが、日米戦争時には辞任していて何もしていないにもかかわらず、軍人以外で唯一戦犯として裁かれた。広田は、天皇が追及されないために自らが罪をかぶり、証言台に立とうともしなかった。
日米ビジネスマンとその家族をみてきた医師があげる、悲劇を起こさないようにするための3つの柱は、自分だけの世界(本、音楽、絵、書、座禅)、親近性(家族、友人、地域の人)、達成(仕事、趣味)。1本の柱だけに頼っていると、弱いし脆い。
中国の言葉「硯田悪歳無く」とは、本を読み、物を考え、物を書くことをしていれば、人生に悪い年はない。 -
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解説の小松伸六氏は、スーパーマーケットの経営者矢口にモデルがあるのかどうかわからない。なんて書いていましたが、どう考えてもこれ、中内功がモデルでしょ。
ルソン島での戦争体験、薬局で闇商売、スーパー設立、生きた牛肉を買って自らで加工販売、大手電器会社(松下電器)と再販(独占禁止法)をめぐり長期にわたる裁判等々。どこをとっても中内功物語だ。小説内では、裁判の結末は政治による裏の力が働いて、電器会社側の勝利となっているが、実際には松下電器側が折れる形で和解したらしい。
スーパーマーケットのパイオニアであり、一時代を築いたダイエーは、今はもうどこにもない。中内氏がワンマン過ぎ、社内にはイエスマンしかいなくなり、時代の流れに乗り遅れていったのだ。いまやダイエーのライバル会社イトーヨーカ堂ひきいるセブンイレブンが日本を席捲している。小説ではその凋落まで触れていない。
神戸出身の私としては、ダイエーの文字が世の中から消えてしまったのはとても寂しい。