城山三郎のレビュー一覧
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昨年他界された城山爺さんによる、生き方にまつわるエッセイ集。流れるように読みやすくも刺さる文体は、読んでいて心地よい。けれど、まるで自分の父親の話を聞いているよう、というのも2~3歳程しか違わないから、かもしれない。
渋沢栄一をモデルにした小説や石田禮助についてのノンフィクション等、氏のいわゆる経済小説なるものは、学生の頃には結構読んでいた。でも年を経ていわゆる「偉人伝」よりも「市井の名もなき人々の物語」の方に興味が移ってきたからか、氏の本からは遠ざかっていた。追悼の意味で読んだけれど、心地よすぎて実は何も残らないことが分かった(笑)。まー私のまわりには、自分も含めて結構「無所属な人」が多か -
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無所属であるということは、自分を直に見つめる機会にあるということである。
いかに生き、いかに精神的な満足(あるいは不満足じゃない)を得られるのか…
作家となり数十年来、無所属であることを節目節目で振り返る。
三十代、四十代、五十代、六十代…
一日の中でも自分の時間をいかに生きるかで、それは大きく変わるのだから。
“ほぼ完全な無所属の時間の中に、同じように居てどう生きたか、自分をどう生かしたか。
その差がはっきり顔つきに出てくる”
のだから、それはとても怖いものだ、とも著者は言う。
“この日、この空、この私”
一日一快、その日生きたと思えるような、そんな生き方ができれば -
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クラレ、倉紡、法政大学大原社会問題研究所、
そして何より、倉敷大原美術館。
中国地方の大資本家で大実業家の大原孫三郎の物語。
メセナの精神を大正期に唱えた功績は
倉敷を一大文化都市へと昇華させただけではなく、
日本の産業、財界の在り方にも大きく影響を与えた点にある。
その生涯は信念と情熱に燃え、内にあっては
真の友を求めやがて人を信じ愛しつづけ、
外にあっては、労働環境の整備を第一として
会社と市民の関係を重視するという。
そして文化を愛し育てることに注力している。
日本の片田舎の美術館に、これほどの世界的名画があるという事実。
これって、本当にすごいことだ。
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一橋の石川先生のオススメ本。城山三郎の2冊ある自叙伝的小説のうちの一つ。城山三郎と、彼の大学時代の指導教官でその後生涯を通して師となる山田雄三教授との師弟愛を描いたもの。城山三郎が一橋で理論経済学を学び、作家に転身する前は学者だったなんて知らなかった。さらに驚くべきは、山田ゼミの当時のゼミテキストがモルゲンシュテルンとノイマンの『ゲーム理論と経済行動』だったこと。ケインズかマルクスかの時代に当時外務省にのみ入っていたというゲーム理論のテキストを学んでいたなんて、今日のその分野の隆盛を見ればその先見の明に驚かされるばかりです。もっと言えば、この数理経済学の難解さが城山を文学の世界へと誘い、大小説