城山三郎のレビュー一覧
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ネタバレ三井物産に35年間在籍し、華々しい業績をあげた後、78歳で財界人から初めて国鉄総裁になった”ヤング・ソルジャー”―明治人の一徹さと30年に及ぶ海外生活で培われた合理主義から”卑でない”ほんものの人間の堂々たる人生を著者は克明な取材と温かな視線で描いた。
「朝、ミスター・イシダが来ると、全員立ち上がらんばかりのふんい気でした。ミスター・イシダは何か明らかに不満があっても、大声を出したりはしない。怒りを内に溜めていて、なぐりはしないけど、こちらはなぐられた感じがした」
石田はとにかくオープンで、ざっくりばらん。多勢の前で、
「おれの知識ではよくわからん。もっと詳しく説明してくれ」
などと -
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三井物産に35年間在籍し、華々しい業績をあげた後、78歳で財界人から初めて国鉄総裁になった”ヤング・ソルジャー”―明治人の一徹さと30年に及ぶ海外生活で培われた合理主義から”卑でない”ほんものの人間の堂々たる人生を著者は克明な取材と温かな視線で描いた。
「朝、ミスター・イシダが来ると、全員立ち上がらんばかりのふんい気でした。ミスター・イシダは何か明らかに不満があっても、大声を出したりはしない。怒りを内に溜めていて、なぐりはしないけど、こちらはなぐられた感じがした」
石田はとにかくオープンで、ざっくりばらん。多勢の前で、
「おれの知識ではよくわからん。もっと詳しく説明してくれ」
などと -
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ネタバレ濱口雄幸は第27代内閣総理大臣として、1929年から1931年という世界恐慌の真只中の激動の時代に宰相を務めた人物です。
本作では、その主要な経済政策である金解禁を実現するために、蔵相の井上準之助とともに信念を貫く濱口の姿勢が主題として描かれています。
実直謹厳な濱口と、日銀出身で海外経験も豊富な井上。二人のスタイルは正反対ですが、金解禁を実行するために抵抗勢力と徹底に対峙する信念の強靭さが強く印象に残ります。
濱口は1931年に東京駅にて凶弾に斃れ、題名の「男子の本懐だ」という言葉を発します。一時は回復を見たものの、死去。更にその翌年、盟友井上も血盟団の凶弾により命を落とします。
デ -
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高校で習った昭和史の中でも、トップクラスにその目的や影響がわかりにくい金解禁。この小説を読む前にこれらの知識を押さえておいたほうがよい。
1、金本位制とは、同額の紙幣と金の交換を政府が保証している制度(実際に交換に行くかどうかではなく、後述の効果がもたらされることが肝要)。
2、金本位制では、紙幣発行量が政府の金保有量と一致するため、無限定な紙幣発行はなくなる。
3、金本位制を採用している国の紙幣は国際的にも信用が高くなり、為替相場も安定する(逆にジンバブエドルとか想像してもらうとピンと来るかも)。
4、金本位制を日本が採用すると、外国からの原材料も購入しやすくなるので、それを加工して貿易し -
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小説ではなくドキュメントまたはレポート
特攻第1号としてレイテ沖に散った関大尉。
最後の特攻隊員となった中津留大尉。
この二人の人生や生い立ち、そして特攻機にのることになってしまった経緯、当時の戦況、さらには海軍の狂気が語られています。
家族を残して飛び立ってい理不尽さ、切なさを感じます
とりわけ、中津留大尉の最期はつらい。敗戦を知っていたと思われる宇垣のいわば「私的特攻」につきあわされての特攻。米軍キャンプに突っ込む直前で、その命令に背き岩礁に突っ込み玉砕したエピソードは胸が詰まります。
戦争終結後の米軍基地への攻撃を回避したということが戦後の日本平和への軟着陸を果たしたという筆者のコ -
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「日本資本主義の父」ともいわれる渋沢栄一にスポットを当てた小説。
今の埼玉県の豪農の家に生まれた渋沢栄一は、幕末の激動の世の中で農家から幕臣、そして海外留学と若かりしころを過ごす。当初は時勢のままに攘夷だった人物が、知らなかった世界に見を置くうちに志の熱さを変えなまま柔軟に方向性を買えていくのは面白い。
憎しみや利己、そういった感情論とは距離を起いて世の中を俯瞰する姿勢が、結果的に実学の世界で後世に名を残す結果に繋がったのだろうな。世の中に渋沢の名がつく財閥は耳にしないが、渋沢栄一に由来するプログラムは耳にする(どこかの大学とか。。。)
誤解を恐れずにいうと、熱い志を持ちつつ激動の世の中をいか -
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身辺雑記のような城山三郎のエッセイ。妻に対して「〇〇させる」って表現してたり、巷のかしましいご婦人たち、女子高生たちへのミソジニーっぷりとか、旧人類男性だなと思うんだけど、そうした強気ないっぽうで彼の日常や心象のなかにやさしさや弱気やシャイっぽい部分が存在する。こんな男っていいかもね、とも思った。
本書は「無所属の時間で生きる」という。「無所属の時間に」とか「無所属の時間を」じゃないんだよなあ。そうすると恒常的に無所属という感じがするかなあ。確かに彼は、フリーの文筆家だからこういう表現になるということか。いずれにせよ、無所属の自分だけの時間でこそ、生きる、生かされるということだろう。
そもそも