城山三郎のレビュー一覧
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神風特攻のリアルが伝わる作品だった。関行男と中津留達雄という兵学校同期で宇佐航空隊での実用教程を共にした数少ない仲間が主に描かれている。
二人とも結婚してにもかかわらず妻を残し軍の命令で特攻にでていくが関行男は特攻の幕開けを、中津留達雄は特攻の幕下ろしをするのがまさに運命か。
中津留の特攻は本当に不必要だったな。すでに終戦が決まっているのに伝達不足のために余計な突撃を強いられるのが辛い。不幸中の幸いは彼らの突撃が米軍基地に当たらなかったことか、これで当たっていたら戦後もっと厳しい制裁となっていただろう。
人間を武器として特攻させる発想に至ってしまうのが戦争という特異的な環境のせいなんだろう、当時を知らない我々がとやかくいうのはまた違うのかな。 -
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浜口雄幸、井上準之助二人の信頼関係や政治家としての覚悟は伝わるのだが、正直、この二人が命をかけた金解禁と緊縮政策が一体何のためだったのかがよくわからない。緊縮によって軍の膨張を抑えられたかも知れない、というのはあとづけであって、二人の遭難もテロの時代を呼び込んだものとも言えるし、浜口後継の若槻政権で満州事変が勃発、15年戦争が始まることを思えば、一内閣の財政政策でその後の日本の進路が変わったとも思えないのだ。じっさい政権が政友会に移ったら即金輸出再禁止となるのだが世界経済の情勢からして政権交代がなくとも早晩そうならざるを得なかったとも言える。当時まだケインジアンは主流派ではなかったが、それでも金輸出の再禁止に踏み切った高橋是清には井上の緊縮政策は財政のために国民経済があるかのように見えたのではないか。
二人ががこだわった2つの政策、まず一つ目の金解禁では、実行された旧平価による解禁と、現行相場による新平価解禁が選択肢だった。恐慌が迫りつつある情勢ではより穏健な新平価解禁が現実的との判断もあり得たはずだが(実際高橋是清はこの路線を支持していた)、法改正には野党政友会との妥協が必要との考えから忌避されたという。
二つ目の官吏俸給の削減にしても、財政の本質に関わるようなスケールではなく、むしろ些末な話にもみえる。
二人が命がけでこだわった政策と関わらない場所で、ハプニングや、どうでもいいこと、どうにもならないことが連続して発生し、むしろそれらが起動力となって世の中は動いていったようにも思える。
もう一つ、本書が二人の命を狙ったテロリストたちには背後関係を含め全く触れていないのもやや不自然に感じるところである。 -
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ネタバレ風越を中心として通産省の官僚達の生きざまを描いている。登場人物にはモデルがいて、特に政治家に関しては多少の知識があれば推察できるので面白い。また、内容自体もとても読みやすくかつ読み応えのあるものだった。馬車馬のように働く風越たち、理知的で人当たりが悪いとも言える牧、そしてワークライフバランスに重きを置き人懐っこい片山、どの生き方が正解、というのは無いだろうがやはり片山の生き方に惹かれてしまう。一方、自分の人生はどのように描かれるのか、どんな人生をこの先歩むのか、と考えたときに兎に角自分なりに個性のままに生きよう、それが例え風越たちのようであっでも、と思った。
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1975年、読売新聞で連載開始。
2010年、田原総一朗が必読の経済小説として雑誌プレジデントに掲載し、
2023年、文庫本が65刷69万部(Wikipediaより)を達成、今も増刷されている。
息の長い経済小説というのも珍しい。
テーマは商社マンの人生の幸福とは。
物語は昭和の、高度経済成長時代が終わりを迎え、日本全体がアイドル状態に入って来たるべきバブルに向かう端境期、
世界を駆け巡る商社マンたちの悲喜こもごもの毎日を描いたもの。
主人公の沖は歴戦の商社マンだが、閑職である京都支店長に転勤となり同期からは「毎日が日曜日」と揶揄される。
もう一人の主人公、笹上はサラリーマン時代から退職に備えて小さな居酒屋を4店舗経営し、満を持して定年を迎え、本当の意味で「毎日が日曜日」を体現している。
沖は海外生活が長く、日本に戻ってからは子どもたちが日本の生活に馴染めず苦労が絶えない。
笹上の家族はすでに破綻。それでも定年まで働きあげ、待ちに待った理想の生活を迎える、と思ったが、孤独、張りのなさから、次第に行き詰まっていく。
仕事に人生を捧げている沖と、捧げた笹上。
人生の幸せとは何か、二人に問いかけていく。
私にとって等身大の物語、まさに笹上と同じ世代、笹上の葛藤に思わず自分の気持ちを重ねてしまう。
どんなに蓄えがあろうとも、仕事から離れると生活の彩りは無くなってしまうのか。
だからといって、老後に備えて貯蓄に励み、多くの友だちを作るべきなのか。
お金はあれば安心はする。
でも、それは今だけなのかもしれない。
実際、老後を迎えて、お金の心配は無くても何もすることがない、親しい人はいない、という状態になると人は「毎日が日曜日」では物足りなくなる。
人はできれば働かずに楽して暮らしたいと思う。
お金があって、定年後は働く必要がなくても、
お金が無くて、定年後も働かなければならなくても、
人と関わり、人に必要とされ、そのために毎日の時間を使うことが大事なのだろう。
余裕があって楽したい=幸せ、と考えると、「毎日が日曜日」になると物足りなくなり、
毎日張りのある生活をする=幸せ、と考えれば「毎日が平日」になるかもしれないが、使命感を持った毎日を送ることができる。
それが、自分のためだろうが、家族のためだろうが。。 -
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高度成長期の日本を舞台に、国家を背負い、自分の人生を懸けた通産省の官僚たちの生き様を描き出した作品。主人公は飽くなき人事への興味を持ち、ミスター通産省とも呼ばれることになる有力官僚ながら、歯に衣着せぬ物言いとざっくばらんな態度から、野武士然とした官僚らしからぬ男。彼はあくまで国家のために、そして有用な人材を生かすべく奮闘するのだが、彼の言動は政財界との軋轢も産んでしまうのだった。。。
世間一般の官僚のイメージとはかけ離れた主人公。これでうまくやっていけるのかと心配していると、案の定彼の理想の実現は暗礁に乗り上げるのだが、まあ今の目で見るとフランス式経済というのもどうかなとは思う。でもそんな彼も権益争いやら順送り人事からは完全に自由になれていないところが、やっぱり官僚か。と思ってしまった。それにしても反主人公派の暗闘は当然として、彼が目をかけたある人の態度はどうにも納得がいかないな。 -
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78歳で財界人から初めて国鉄総裁になった石田禮助の伝記。戦前三井物産社員として中国やアメリカで活躍したところから当時の部下へのインタビューも交えて話を起こし、パブリック・サービスの精神で国鉄総裁に就任、安全重視と健全経営に向けた改革を進める姿、一方で"ブレイン・ファーマー"として自給自足の農園暮らしを送るなど家族生活の模様も描き出している。
自分のことはマンキー(猿)であると言いながら、"粗にして野だが卑ではない"として、合理的な考えを通し、どんな相手にも直言を辞さなかった生き方には好感が持てる。時代もあるとは思うけれど、こういう筋の通った人が今の世の中にもほしいものだ。