あらすじ
太平洋戦争末期、理想に燃える軍国少年・柿見。激動の時代に翻弄される少年の行く末は……。社会の価値観・思想が目まぐるしく変化する中で生きた少年の青春と葛藤を描く、城山三郎の最重要作品。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この主人公は作者を投影したものらしい。「大義」という杉本少佐なる人の本に影響され、海軍に志願した軍国少年。天皇のために死ぬことに疑問もなく、自由に生きることなど、はなから考えられなかった時代。いざ軍に身を置いてみれば、全く理想とはかけ離れていた。復員してみれば、さらに同じ戦争を生き抜いた人たちの変わり身に、さらなる絶望を感じながら、天皇制について問い続ける主人公。
城山三郎氏は「軍隊という組織悪の標本みたいなものを書き留め、復讐したい」と言ったことを、作家になった理由として挙げているそうだ。
「大義の末」は1959年(昭和34年)に出版され、私の手にとったこの文庫本は、令和2年に改版されたものだ。今この本を読めた幸運に感謝したい。
今また戦争の危機が迫ってると感じる。「天皇というものは、権力者にとって便利な存在。自分たちの不都合なことを天皇の意志だと責任逃れできる」とかつて、城山氏は語っていたそうだ。そんな時代に戻ってもらっては本当に困る。
Posted by ブクログ
今こそ読むべき。城山三郎は志願して海軍に入ったが、結局戦争を煽る世間の雰囲気に踊らされたのだ、ということ。その理不尽さ、暴力、そして戦後の人々の変節ぶり。ぼんやりしてると追体験させられることになるよ!
Posted by ブクログ
天皇の権威を自身の拠り所にしようとする情けない人々のなんと多いことか。理性的に考えれば国体だの大義だの、もっともらしいことを言っても空虚なだけなんだが。
つづく
Posted by ブクログ
「人間は幸せを求めて生きるという単純なことを教師も親も誰も教えてくれなかった」時代を恨み、敗戦により一夜で価値観が逆転した社会に戸惑いながら天皇制を問う。その答えを求めてもがき苦しむ主人公=筆者の分身=の姿が痛い。軍隊での体験を「書き留めることで(戦争に)復讐をしたい」という筆者の思いがとても強く伝わってくる作品。語り部として最後の世代といえる氏の“証言”には重みがあります。もう一編は多くの少年兵が命を落とした住吉丸の悲劇を描いたもので、こちらも胸締め付けられる話です。