佐々木譲のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
佐々木譲『裂けた明日』新潮文庫。
内戦により国内が分断された近未来の日本を舞台にした逃避行ロードノベル。
現実と虚構とが入り混じった設定の中、緊迫感あふれる逃亡劇が描かれるのだが、さもありなんというありふれた結末だった。
作中では、東日本大震災、新型コロナウイルス感染禍の他に日本は南海トラフ地震に見舞われたという設定になっている。その後に2つの政府が争い、内戦状態になった日本の混沌とした姿が描かれるのだが、決して架空の話とは思えない。
今年で戦後から81年となる日本には今だに米軍が駐留し、米国は密かに日本政府に多大なる影響を与えている。日本政府など米国の傀儡政府に過ぎないのかも知れない。
そんな米国が日本政府のやり方が気に入らなければ、直ぐにでも戦争を仕掛けてくるだろう。主要産業が軍事兵器で国家事業が戦争と言っても過言ではない米国が突如仕掛けたイランやキューバへの軍事攻撃を見れば、その脅威は明らかである。
海外からの平和維持軍に占領された日本に平和維持軍の傀儡政府である国民融和政府が打ち立てられ、それに対抗する北の反政府組織が結び付いて盛岡政府が打ち立てられ、日本は内戦により国内が分断されていた。
盛岡政府と国民融和政府との軍事境界線の近くである福島の二本松市に住む定年後に独り暮らしを続けていた沖本信也の家に沖本の大学時代の同級生の娘と言う酒井真智とその娘で11歳になる由奈が現れる。真智と由奈はテロリストの疑いを受け、北から逃避行を続けていたのだ。
沖本は東京を目指す2人を安全圏まで送り届けることを決意し、民兵や検問を掻い潜るために福島第一原子力発電所の放射能汚染地域を通り抜け、竜田駅を目指す。しかし、次々と襲い掛かる危機に沖本も2人と共に東京へと向かうことになる。
本体価格850円
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Posted by ブクログ
1990年第8回 日本冒険小説協会大賞
1990年第43回 日本推理作家協会賞(長編部門)1990年第3回 山本周五郎賞
『ベルリン飛行指令』
『ストックホルムの密使』
と共に佐々木譲の戦争三部作の1作
そして、今日は真珠湾攻撃のその日。
本書冒頭の「はしがき」にも
〈1941年12月7日、オアフ島真珠湾の米国海軍太平洋艦隊基地が奇襲された〉
と始まり、歴史上の重大な瞬間へと読者を引き込んでいきます。
ストーリーの基軸は、真珠湾攻撃の情報がアメリカ側の日系人スパイによって事前に察知されていたのか、そして第二次世界大戦中の諜報活動とはどのように行われていたのか、という点にあります。
読み進めるうちに、私は自分が「北方」を何も知らなかったことに驚きます。千島列島には、クリル人と呼ばれたアイヌ民族が生活しており、隣国ロシアとの混血も存在していた。酷寒の自然と厳しい環境の中で営まれる暮らしがあったのです。
そして当時の日本は、他国との開戦以前から、この地に対し厳しい支配と侵略を強いていたのだと、改めて思い知ります。
第二次世界大戦下のインテリジェンス小説として読めるのでは、と期待していました。けれど実際に描かれていたのは、訓練されたスパイの鮮やかな諜報戦というより、日本を恨み、複雑な出生を背負った男の力ずくの潜入劇。エトロフを目指すその道のりには、荒々しさと生々しい人間味が濃く漂っています。
私の中にあるスパイ像の柳広司『ジョーカー・ゲーム』のような知略に満ちた冷静さ――とはかなり異なったアプローチでした。
真珠湾へ向かう艦隊が、単冠湾にひそかに集結していた――その情報を送る緊急電。この場面は歴史のリアリティを感じさせるものの、カバーに描かれた繊細な空母の姿とは裏腹に、「この物語の軸はどこにあるのか?」と、後半になるほど揺らぎが生じてしまい、大作でありながら掴みきれない印象が残ります。
とはいえ、開戦前の日本の緊張感や
北方の地元民の様子等、読みどころは
この長編の中に幾つもあります。
私がもっとインテリジェンスの奥行きを読むつもりだったんですね、きっと。
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Posted by ブクログ
佐々木譲『闇の聖域』角川文庫。
カッコいいタイトルに惹かれて購入。開戦前夜の満洲が舞台の警察サスペンス小説という触れ込みであるが、後半になると伝奇小説の趣きを見せてくる。しかし、それが災いしたようでどっち付かずの中途半端な作品に仕上がってしまったようだ。
さらには連続殺人を続ける犯人の動機やその正体が明らかにされぬまま結末を迎えたことで、全てが消化不良の読後感であった。
佐々木譲と言えば、警察小説のイメージが強いのだが、このような佐々木譲の伝奇小説を読んだのは初めてである。
開戦前の満州が舞台となる。大連駅近くの空き地で男性の遺体が見付かった。遺体の頸動脈には凶器不明の不審な裂傷が残っていた。東京から大連警察署に赴任してきた河村修平は、赴任前に東京で見た遺体と傷痕が似ていることに気付く。やがて、同様の殺人事件が相次ぎ、関東軍の参謀までもが犠牲となる。
一方、大連で画家として暮らす中村小夜は、ある日、謎めいたロシア人の青年ルカーシャと出会う。穏やかで紳士的な彼に次第に惹かれていくが、やがて警察が殺人事件の容疑者としてルカーシャを追っていると知る。
本体価格960円
★★★