佐々木譲のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
妻子を17歳の少年に殺されてしまい、以降自暴自棄な日々を送っていた真鍋篤。そして警察官であるはずの夫から毎日のように暴力をふるわれ、ついに幼い子供と共に逃げ出した門脇祐子。ある駅で人が転落した現場に偶然居合わせ、その救助に手をかしたことが縁で同じ就職先に決まり、2人はやがて・・・。
息もつかせぬ展開で、一気読みした。追われる側となってしまった真鍋と門脇が”ユニット”になるのは予想通りとしても、まさかあの2人もユニットを組むことになろうとは。祐子の夫の警察官が無茶苦茶すぎて怒り心頭。さすがにここまで狂っているのは小説の中だけかと思うけれど、近いようなのはきっとあるのだろう。こういう施設の必要性を強く感じた。最後はハードボイルドちっくに派手な展開となってしまったが、2人と子供には幸せになってほしかったので、結果的には満足。ただ、少し心情として「うーん?」と思ったのは真鍋の気の変わりよう。加害者少年の出所してからの行動や、実際対峙した時のあの姿を見て、どうして気が済んでしまったのか。決して反省しているようには見えなかっただろうし、あまつさえ必要以上に反撃までしてきたのに。就職がふいになった事実も真鍋は知らないはず。それ以上に祐子の存在が心の中で大きくなっていたと言われたらそうなのかもしれないが、あまりにもそのあたりの描写があっさりな気がした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ上巻途中での感想に
【日本人は阿呆ばかりだ!】と書いたが…………。
通読しての感想を一文で表すならば
【日本人は阿呆ばかりではない!】となった。
太平洋戦争末期、何故にあれだけの被害を受ける前に、戦局から判断して早期講和に持ち込めなかったのか……。
何故に日本人は、世界初にして唯一の被曝国となってしまったのか……。
フィクションではあるが、指導者側登場人物にはそれぞれモデルとなる実在の人物がいての、史実の流れを汲んだ物語。
長いものには巻かれろ
臭いものには蓋をしろ
溺れる者は藁にもすがる
会議至上主義で決断力が欠如
……日本人の“負の特性”そのものな人間達と闘った、勤勉かつ己の正義と国全体の未来を考えて動いた信念の人……。
彼らはあくまで架空の人物たちではあろう。がしかし、きっと彼らのような人達も、確かに存在したのだろう、と思うことができた。
日本人は、阿呆ばかりではなかった。
だからこそ、壊滅的な打撃を受けた敗戦国にして、天皇制を廃止させられることなく、短い期間でめざましい復興を成し遂げることができたのだろう。
カタチは違えどやはり再び“阿呆な日本人”が多くなってしまったこの国も、やはり捨てたものじゃないのだなと、思えた。
2012.04.02.了。 -
Posted by ブクログ
寒くなってきたねぇ。とは言え、物語の中はここらの寒さとは桁違いの世界。「制服捜査」の続編で、短編集だった前作とは異なり、今回は長編で頁たっぷり。
北海道東部の何も無い田舎町に倦んだ人たちにそれぞれの事情で事が起こり、爆弾低気圧が引き起こす猛吹雪に翻弄される中、彼や彼女の運命は町の小さなペンションに引き寄せられていく…。
序盤、普段何も無い町に、こういう日に限って、こうも事件が起こるのかと思うと、設定はかなり陳腐な感じがするのだけど、まあそんなことは言いっこなし。
むしろ、それを引き取って、多くの人の行き先をひとつの夜に収斂させるお話は、古~い映画だけど、同じ雪の夜を描いた「大空港」を思い出させ、次はどうなるんだと惹き付けられながら頁は進む。暴雪の描写がリアルで、雪に閉ざされた世界ってただでさえ気詰まりなんだけど、この怖さも良く出てる。
川久保巡査部長のキャラは前作いまイチ分かりにくかったのだけど、今回もまた主役は猛り狂う風雪で、捜査が出来ない制服警官の立場に加え、事件を目の前にしても出動も出来ない川久保は、今回は更に脇役の鬱屈を募らす。
ラスト、あっけなく絞る引き鉄にその心情を推し量るが、大団円とならぬところに、前作で『どの事件もスッキリした解決は見ず、読み味は暗く苦い』とした印象を引きずり、★はこんなもんで。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ佐々木譲の第二次大戦末期を舞台にした『諜報3部作』完結編の下巻。パリでナチに拘束された森四郎は流れついたストックホルムで大和田市郎大佐から極秘情報を託され、亡命ポーランド人のコワルスキとロシア経由で日本を目指す。捕縛の危機をなん度も脱しながら、モスクワで合流した小川芳子と国境地帯で満州軍に捕えられ、航空機で本国に送り届けられることになるのだが、その途上、運命の時間を迎えてしまう・・・。佐々木譲は「戻るべき処」を持たない者を書かせたら右に出るものがいないのではないか。組織に馴染めない、孤高の、意志を持ち合わせた、逆境に立つ人物を創造し、抵抗感を覚えながらも「やるべきこと」をやらせようとする。『ベルリン飛行指令』や『エトロフ発緊急電』で顔を出したメンバーの個人史も絡み合いながら、終戦というイベントに惰性のように向う歴史を鮮やかに描き出している。