堀江敏幸のレビュー一覧
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角田光代は20代後半かけて30代までよく読んでいた作家でした。様々の作品が映画化やドラマ化にされていて、女性の感情を丁寧に描く作者だと思いました。堀江敏幸は別の作品でかなり挫折してしまって、角田さんとならきっと挫折せずに読めるんだろうと思い購入。往復書簡だと思いきや、雑誌「dancyu」での散文集でした。それぞれ読書記録の中、「食」に関する内容を紹介するエッセイ。これもまたたくさん触れ合ったことないの作者や作品の中、食べ物や食卓な話が書かれて、短い文章だけどどんどん作品を読みたくなるような描写ばかりでした。
「本来私たちは、病むことではなく健やかであるために食べるのだ、と。」(池澤夏樹 君のためのバラ) by 角田光代
「酒に酔うことは、あとから言葉を組み立てるために必要な、より深い覚醒の場だったのである。」(若山牧水 若山牧水歌集) by 堀江敏幸
作家が読書感想文はどんなものなのか、この一冊は少し垣間見れた。読書は日常として、日々努力を怠らず、だからこうした感受性や文字を手に入れるんだろう。紹介された作品の色に関する描写は、単に美味しそうな描写だけではなく、特に堀江さんが紹介した作品の中、食べるシーンや、またはその食物ですりゃ登場していない作品でも、その一つのヒントがたくさん感想に繋がっていく。また文中と文末に二人の対談も、とても作家らしく、指定されたテーマに沿って描くことに苦労したエピソードも、互いの文章を読んで感じたものも、またこの読書に加味され、互いの人間性や読書に対する姿勢を感じました。 -
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森見登美彦訳『竹取物語』
川上弘美訳『伊勢物語』
中島京子訳『堤中納言物語』
堀江敏幸訳『土左日記』
江國香織訳『更級日記』
こんな、宝石の詰め合わせがあって良いのか⁈
発刊を待ちわびていたし、読むのもドキドキ。
それぞれに訳者の持ち味があって、とにかくすごい。
きちんと全文収録されているのも、嬉しい。
中でも、川上弘美の『伊勢物語』は鳥肌モノ。
歌物語の真骨頂というか、とにかく、和歌の訳し方が素敵すぎる。
言葉の数を少なくしながらも、今の感覚を添えてくれて、色っぽいし切なくなりました。
お気に入りは二段。
起きもせず寝もせで夜を明かしては春のものとてながめ暮らしつ
起きるでもなく
ねむるでもなく
夜は明けてゆく
春の長雨がふっている
わたくしはただ見ている
そして三十段。
逢ふことは玉の緒ばかり思ほえてつらき心の長く見ゆらむ
逢うのは
一瞬
恨みは
永遠
更に月報の小川洋子が、この川上弘美訳を上手く伝えてくれているので必見。
そうそう!ですよね!ってなりました。
あとは堀江敏幸の『土左日記』も、すごく考えられていて、参考文献を見ても納得のラインナップで、仕事の仕方に尊敬を覚える。
江國香織の『更級日記』は、とにかく可愛い。そうして、姉や父の描写を通した家族としての作者がよく描かれていて楽しかった。
紀貫之ではないけれど、言葉について、とても考えさせられる一冊だった。
私たちは、その息吹に今尚こんなに鮮やかに触れられる。 -
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さすがは並みいる男性作家が選んだ作品集である。全部面白い。
「ちょっとちょっと…」と傍で話しかけられるような親しげな語り口と
抜群のリズム感が心地いい。特に気に入ったものを少し…。
「道化の華」
ラスト3行でいきなり視界がぱあっと広がり、ぞくっと怖くなる。
視点のトリックで読者を驚かせるのが上手い。
「彼は昔の彼ならず」
心の本質が似通った人間が近くにいると、お互いに感応してしまうのだろう。
口先三寸のペテン師のような男を非難している主人公の男もまた、
親の遺産で遊び暮らす怠け者。
才能ある芸術家のパトロンになりたいという、
彼の下心を見透かしたペテン師の作戦勝ち。 -
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堀江敏幸さんのエッセイが好きで。
だから、堀江さんの土左日記を読めることにワクワクした。
原文で読むと、この時代の日記の持つ無味乾燥な感じが、まだどことなく漂っている。
「をんな」として書くことの意味が、いまいち捉えきれていなかった。
そこには漢字仮名混じりで、読む側に分かりやすく施された文にも影響されていたのかもしれない。
だからか、ひらがなが主となった新訳を読み始めたときに、なるほどと思った。
読みにくい、でも、感じられるものがある。
記録を記憶として、出来事に想いを乗せて、任地から京へと帰っていくひとびとが浮かんでくる。
所々で、旅の疲れを癒すのは、ちょっとした笑い話であり、子どもの無邪気な姿だ。
そして、その姿を見ながら、一緒に連れて帰れなかった、「置いて来ざるを得ない」魂に、思いを馳せる語りてが見えてくる。
そう考えると、すごい新訳だと思う。
現実を虚構として、自身さえ、その構造の中に取り込みながら。
紀貫之がそうまでして、日記を用いて描きたかったものって何なんだろう。
文学に可能性を見いだすのは、ジャンルというものを新たに拓いていくのは、人なのだ。
そこまで大層な目でこの作品を見て良いのかは分からない。
解かれた制約は、新たな制約を生み出す。
そこに込められた貫之の思いを読んでいる。
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danchuに連載された食に関わるリレーエッセイを集めた一冊。
著者は角田光代さんと堀江敏幸さん。
取り上げられるのは小説が多いけれど、エッセイやノンフィクションなど、幅広い。
100作取り上げられていて(連載ではもっとたくさんあったのかな?)、自分が詠んだことがあるのはたった15作。
タイトルだけ知ってはいる、というものを含めても、30余りしかないのだが、知らない作品に関するエッセイも面白く読ませてしまう。
ここらへんはさすが手練れの作家のお二人。
面白さを伝える力だけではない。
作家の味読力のすごさも随所に感じられた。
ピンポイントに「食」というテーマに引き寄せるものもあるのかもしれない。
例えば、角田さんが「海辺のカフカ」(村上春樹)を取り上げた回。
見えざる力に導かれて四国高松にやってきて、恐ろしい世界への扉をあけてしまう主人公が最初に口にするのがうどんだったということに着目する。
物語上、もう彼が戻ることのできない、元の穏やかな世界の「純然たる幸福」の象徴、それがうどんだったのではないか、と読み解く。
二人の書き手の文章が交互に配置されているのもいい。
甘いものの後のしょっぱいものとか、ビールと枝豆とかにあるような、無限ループ状態に陥ってしまう。
はっとさせられるのは、角田さんの文章。
一方、そうだよなあ、としみじみ共感するのは堀江さんの文章だった。
これから読んでみたいもの。
・ランダル・ジャレル「はしれ! しょうがパンうさぎ」
・鴨居羊子「カモイクッキング」
・吉田篤弘「それからはスープのことばかり考えていた」
・イアン・マキューアン「初夜」
・ロアルド・ダール「味」 -
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中村文則さんのエッセイを最近読んだので、その繋がりで読みました。
太宰治の人となりについてはほとんど何も知らないので、読む前の勝手なイメージでは「気難しく人嫌い」な人かと思っていましたが、作品を読むと「ユーモアの感覚もあって、実際に話せばあんがい話好きな人だったんじゃないか」という印象を受けました。
個人的に良かったのは富嶽百景の一場面で、天下茶屋の2階に寄宿している主人公が店の人間とも親しくなってきた頃、店の若い女性店員が1人で客の相手をしている時に、わざわざ1階に降りて隅でお茶を飲みながら遠巻きに見守ってあげているところです。
そんなにあからさまな優しさを出す感じの主人公じゃないんですが、さりげない描写の中に書き手の優しさが滲み出ているなぁ、と感じました。 -
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伊勢物語、きちんと読むの初めて。
川上弘美さんの日本語は美しいな。
和歌の訳がそこはかとなく典雅だ。
物語絵でよく出てくる有名な九段の八橋、宇津山だけにあらず。
しかし業平はすごいね、さすが歴史に名を残すプレイボーイ…
三十段の、歌を「逢うのは 一瞬 恨みは 永遠」て訳すのはしびれる。伊勢物語もすてきだけど川上弘美さんもすてき。
最後125段
「生きるとは
なんと
驚きに満ちたことだったか」
ってところなんて、めっちゃすてきじゃないですか
もりみーの竹取物語もすごく面白い。
もちろん元の話自体が面白いけど、彼の訳がなんともシュールで人間臭くて好きだ。
しかしなんておもしろい話なんだろうなぁ、古事記とかも面白くてユーモアあふれてるけど、竹取物語のファンタジーたまらん。昔の人すごい。 -
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錚々たる方々の訳した古典文学!
竹取物語がモリミーの手にかかると、翁や貴公子たちの下心がスケスケで困惑するかぐや姫が目に浮かんでしまう。
和歌の訳がまたニヤニヤ。
むかし男ありけり、の伊勢物語はこんなに長いお話だったのかと驚いた。恋愛だけでなく友情や仕えた親王とのやり取りが印象的だった。
男としか出てこないので、これが業平のことなのか、時期はいつなのかとモヤモヤもするけれど、一遍の凝縮ぶりに愕然とする。
堤中納言物語はいろんなテイストの話が襲いかかってきて気が抜けない。
和歌の訳が絶妙!
有名な虫めづる姫君の女房たちの嫌らしさときたら、普通に和歌を訳しただけでは伝わってこないかも。
土佐日記、この本でいちばんツラかった。
たぶん元々の話がまどろっこしくて合わないんだろうなあ。
ひらがなばかりだとこんなにも読みにくいのかー。
学生の頃、何度も目にした更級日記。
物語に憧れた少女が田舎から出てきて、ようやく手に入れた物語を読みまくる…。
でも、今回読んで、その上京の旅の行程が楽しかった。現在の場所を思い、その過酷なこと!
そして京についてからもやたらと転居していて、それぞれの家の簡易さにも驚く。
平安の時代のリアルな日常を垣間見た感じ。
「学者ならぜったいにしない蛮行に及ぶのでなければ、小説家が仕事を引き受けた意味はない」と中島京子さんがあとがきに書いているけれど、厳密に言ったら解釈が違うところもあるのかもしれない。
それでも、とても楽しく古典が身近になった良い本だった!
ただ、持ち運びの出来る大きさ厚さにして欲しい…切実。