小川哲のレビュー一覧
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・ちょっとした奇跡が特に好きだった。SF的な世界観で織姫と彦星のような話を展開させるという構造が美しい。千二百年後に死ぬことが分かっているのに決められた計画のためだけに生きることに意味があるのか?という問いには現実社会にも通ずる哲学が内包されていると思う。
・全体を通して、文体が好きだ。理路整然としていて、書き手と語り手人物との距離感が保たれている文章だと思った。泣きながら書いた文章は駄作であるという話を思い出した。一定の距離感で書かれた文章の美しさが体現されていたと思う。とまで考えたときにふと、理路整然って、りじせいぜんで合ってたっけ?と思って調べたらりろせいぜんだった。りじせいぜんの方が読み方的に綺麗じゃね?という気がしたけどこれからはりろせいぜんと読むように気をつけようと思った。何の話やねん。
・文体が読みやすいことの理由として、一文の区切りが細かいことが挙げられると思う。句点までが短い。文章のリズムがいい、ということだけでなく情報の出し方が絶妙に調整されているように思える。ギリギリオーバーヒートしないように少しずつ情報を出してくるような、そんな印象。
・表題作のスメラミシングは、再読したらもっとおもしろい発見がある気がした。スメラミシングの正体であった人物について、解釈できる余地がとても広い物語だったような気がする。
・宗教や、数学、哲学など学術的的で専門的な地盤がある知的なお話が多かった。難しい話なようでいて、文体が恐ろしく読みやすいから、学がない自分でも難しい話をわかったような気になる楽しさがある。それに知識欲が刺激される。へーそうなんだ的な楽しさがあった。 -
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クメール・ルージュから約50年後。
2023年に時代は一気に進む。
ソリヤは首相目指す国会議員に。
一方、ムイタックは大学教授として、脳波を利用したゲーム開発を進めている。
ムイタックは、復讐を誓っていたにもかかわらず、ゲーム開発⁇
『チャンドゥク』で最後に2人が…
長かった…
いきなり50年後とは…
ポル・ポトをソリア、ムイタックがどう打倒していくのかと思っていたが、いきなり近未来の2023年。
上巻とはまったく別物…
上巻の流れで来てくれた方がうけいれやすかったかも…
ゲームそのものが目的であれば、みんながルールを守るはずだろう。
ムイタックは、ゲームが目的でなければ、みんながルールを守ることは難しいと考えていたのだろう。
ポル・ポトがルールを守らないなら、学校をなくしたように…
ソリヤは、どういう社会を目指していたのだろう…
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タイトルは探究心と戦争の暴力性という人間の根源を現したもの。
それが、満州という地域と時代にスポットを当てて描かれている。
歴史、満州、戦争に翻弄される人々を描いた大作なのだが、論理的な作者なので、次々と変わる視点となる登場人物が駒っぽいのが否めない。
筋書きに従って登場し、筋書きに従って出会ったり結婚し、筋書きに従って死ぬ。そこに歴史、人間関係、戦時の世情と言った理不尽や感情や思惑に巻き込まれる魂の叫びはあるといえばあるのだが、いまいち伝わってこないというか。
怪人物もカリスマ性を持ってる人間も頑固な者もいるが、なぜ、なぜ皆温度感が似てしまっているのか。
『君のクイズ』はとても面白かったが、おそらくそちらは作者のストーリーの論理的構築手腕とミステリというやはり論理的なジャンルが合致したせいかなと思う。
文章や構成はとても読みやすい。
=追記=
この後同じく小川さんの『言語化するための小説思考』を読み始めたら、冒頭から
「僕は小説を読むうえで登場人物に共感するという感覚を抱いたことがなかったので(中略)僕の書いた小説が違法である(=つまらない)と主張する読者がいてもどうすればいいのかわからなかった」
「あるいは僕は小説を読む時情景を思い浮かべるという行為を一切せず言語を言語のまま理解しているので、描写が足りない、という理由で(攻略)」
とあり、なるほどこの作品と読者(私)の溝、キャラの温度感について私が感じたのはそこか!と思った。
小説においても字を字のままに、文章を文章のままに読む人ならばパンチ不足は特に感じず、この作品はある時代のある地域と人々の辿った運命である、と歴史書のように読めるかもしれない。 -
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満州を舞台に時代は第二次世界大戦、そして終戦へと移り変わっていく。やはりこの作者は小説が非常に上手く、感傷的になりすぎず、さりとて倫理との距離を見誤ることなく、悲惨な戦争の実態とともに物語は進んでいく。戦争による破壊と対になる都市と建築がテーマであるのもバランス感覚に優れており、気候を読み建築の才のある明男は本作における主人公と言っても過言ではないだろう。また端々で暗躍する細川も魅力的であり、それ故に前回と書いたが時代のうねりが巨大すぎてそれに翻弄されるがあまり「個」としての人生やエピソードを見出すことができず、端折られているような感覚になったのは非常にもったいない気もする。史実のインパクトに押される形でドラマ的な盛り上がりも薄く、情緒的な話の好きな自分としては技巧面で唸らされる反面感情面ではいまいちハマりきることができなかった。ただそれをやると上下巻では収まらず、史実ベースの空想大河として視点を変えて読むことで個人的には何とか折り合いをつけることができた。
地政学を元に戦争の行末を検討するための組織「戦争構造学研究所」と、数々の未来の可能性を議論して予知していく「仮想内閣」という設定は非常に面白く、あとがきにもある通りこの部分のSFっぽさはとても良かった。
ただ、タイトルでもある地図と拳は本作のテーマを超えて人類のテーマと言ってもいいほどに逸脱しており、そのスケール感と物語への落とし込みぶりは素晴らしかったように思う。 -
Posted by ブクログ
日露戦争直前の、各国の思惑が入り乱れる満州という土地で繰り広げられる群像劇。激動の日本史という史実を舞台に架空の物語を挟み込む手法が非常に上手く、空想歴史巨編と言っても過言ではない圧倒的なリアリティとドラマ性を誇っている。どちらかといえば歴史ドラマ的な側面が強く、群像劇視点であるため明確な主人公がおらず、年月の経過による一個人の風貌や心境の変化を掴みにくい点にあり、ガラリと変わる政治情勢が見どころであり、良くも悪くもそれが持ち味なせいかそれに翻弄されっぱなしである。個人のドラマではなく、歴史の大きなうねりを通して浮かび上がる個人の生き様といったほうが正確なのかもしれない。
あと、これは難点の一つなのだが、このタイトルであるならば当時の満州の地図を付けて欲しかったなと思う。ただ、それを調べつつ実際の歴史にあたりながら読む本作は非常に面白く、下巻も期待したい。 -
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新しい文芸誌
表紙可愛い。
キャラクター(表紙の子)可愛い
毎刊テーマが決まってる(今回は愛)
紙の本の価値について熟考されている。
紙という素材にもこだわっている
識字困難な人も読める対応をとっている
ジャンル多彩
投稿作家多彩
等々とにかくてんこ盛りに盛りに盛った体制に携わった人たちの鼻息が聞こえそう。
値段が510円ってのが安すぎて気になるけど、四方八方から手にとって貰えるような配慮なのかも。頑張って欲しい。
とにかくビックリするくらい沢山の作家さんが投稿してるのに驚いた。業界のことはわからないし、小説しか読まないけど売れっ子作家さんがずいずいと並ぶ様は圧巻。一月に数冊読む位の自分だけど、お、この人の本他にも読んでみようかな。とか、え、こんな物も書くのか。とか気付きはめちゃくちゃあった。あと合間に挟まれる座談会的なのも(例えば哲学とか)へーーみたいな腑に落ちあったり。作家さんによる短歌合宿とか(おもしろい!)モー色々がてんこ盛りの忙しい誌だったよ。巻末に識字困難者のための本についてがあってこれは興味深かった、シリーズ化されてるのかも、、、。
こういう鼻息荒い新しい文芸試、長く続くことを祈ります!!