池田真紀子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ハヤカワ ミステリマガジン
21世紀翻訳ミステリベスト!第2位
2007年国内ミステリ各賞を総なめにした
ジェフリー・ディーヴァーの代表作。
ジェフリー・ディーヴァーは
アメリカを代表するミステリ作家。
1950年イリノイ州シカゴ生まれ。
ウォール・ストリートで弁護士として勤務。
長い通勤時間にミステリ小説を書き始め、
1990年、専業作家となる。
本作はディーヴァーの代表シリーズである
「リンカーン・ライムシリーズ」第7作。
2006年、アメリカで出版され、
2007年、日本刊行。
このミス第1位、
週間文春ミステリー第1位、
日本冒険小説協会大賞〈海外部門〉第1位。
国内ミステリ3冠を達成した
現代アメリカミステリのひとつの頂点だ。
四肢が麻痺した鑑識の天才リンカーン・ライムが
活躍するリンカーン・ライムシリーズ。
その最大のライバルとも言うべき
稀代の殺人者ウォッチ・メイカーが登場する衝撃作。
残忍な手口で殺人が行われ、
どの現場にもアンティークの置時計が残されていた。
やがて犯人が同じ時計を10個買っていることが判明する。
つまり、被害者候補はあと8人いるのか?
背筋が凍る展開。
「人間嘘発見器」の異名をもつ、
キネシクスと呼ばれる技術に長けた
尋問の天才キャサリン・ダンス捜査官も初登場。
公私ともにパートナーである
ニューヨーク市警刑事アメリア・サックスとともに
チームでウォッチメイカーを追う。
2006年と言えば、
イラク・フセイン元大統領の死刑が執行され、
アメリカ国内では第一次湾岸戦争への
反戦ムードが高まっていった年。
911への怒りが失望へと変わっていった時代。
そんな年に
ウォッチメイカーは登場した。
次々と殺人を犯し、
現場にアンティークな時計を残す。
独特の美意識と狂気。
この作品の特長を一言で言うならば、
「圧倒的などんでん返し」。
ウォッチメイカーの仕掛ける罠に
リンカーン・ライムは
陥りそうになりながら、
察知し、するりとかわしていく。
ライム、ダンス、サックスを中心とした
チームの能力の高さが、
ウォッチメイカーを徐々に追いつめていく。
恐るべき殺人事件を扱いながら、
ある種の軽妙さも見せて、
上下2巻の大冊をものともせず、
どんどん読み進められた。
複雑なプロットの連続。
その果てに見えてくる真実は
何とも奇妙な後味だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ《あらすじ》
第二部 母国 1939〜1962(承前)
勤勉なノアとは対照的に喧嘩っぱやく学校が嫌いなモーザスは、靴下屋での警察沙汰をきっかけに後藤のパチンコ屋で働き出し、順調に出世していく。後藤懇意の仕立て屋はモーザスの学生時代唯一の友人春樹の実家であり、2人は後にモーザス退学以来の再会を果たす。また、モーザスは仕立て屋の従業員裕美と恋仲になり結婚する。
ノアは浪人の末無事念願の早稲田大学に合格し、ハンスの金銭的援助の元大学生活を送る。そこで晶子という聡明で蓮っ葉な美人の恋人を得るが、ある日晶子がノアの了承を得ずハンスとの会合に顔を出したことがきっかけで喧嘩が勃発。ノアは彼女のうちに秘めた差別意識に気づき、別れを告げる。また、晶子から「ハンスに似てる」と言われたことで出生の秘密を知ったノアは、絶望から大学を退学して家族との縁を切る。
そしてチャンホは帰国事業の波にのって北朝鮮へ渡り、音信不通となる。
第三部 パチンコ 1962〜1989
大学退学後、ノアは在日であることを隠して長野のパチンコ屋にて経理の職を得、そこで知り合った理佐と結婚。4人の子供を授かるも、ソンジャがハンスに連れられて会いに来た翌日に自ら命を断つ。
春樹は仕立て屋の主任あやめと結婚するが、2人の間に子どもはできなかった。春樹の母の逝去をきっかけに、2人は障害を持つ春樹の弟大介を連れて横浜へと引っ越す。ある日、あやめは散歩の途中で同性愛者の性行為を目撃したことにより、自身の性的欲求を自覚する。そして発展場へ再び赴くことになるのだが、その際春樹が男性と性行為をしているところを目撃する。
モーザスと裕美の間には、2回の流産の末1人息子のソロモンが誕生。しかしソロモンが3歳になった年、交通事故によって裕美は命を落とす。数年後、モーザスは悦子と交際を開始。悦子は自身の不倫によって過去に家庭を崩壊させており、子どもたちとは今も関係が良好とは言えない。唯一口を聞いてくれる娘は10代にして悦子と同じように妊娠し、中絶する。花は母とモーザスの縁で出会ったソロモンに関心を抱き、やがて2人は関係を持つようになるが、しばらくして花は家を飛び出し行方をくらます。
数年後、モーザスと悦子は再婚。その頃花はホステスやソープで日銭を稼ぐ生活を送っており、後にエイズで若くして命を落とす。
ソロモンはアメリカの一流大学から投資銀行就職と出世街道を歩み出し、ガールフレンドのフィービーと共に日本へ戻る。
しかし、投資プロジェクト失敗の責任を負わされて会社をクビになり、フィービーとも別れる。ソロモンは花が死の床で放った「パチンコ屋になれば?」という言葉に導かれるようにして、父のあとを継ぎパチンコ屋になることを決意する。
《感想》
読み出してすぐ、「あ、これは苦手かもしれない」と悪い予感がした。主人公のソンジャはじめ、彼女の一族がまぁことごとく人間ができているかのように描かれているのだ。実際の言動を見れば「ん?」と思う箇所も散見されるのだが(もちろんその時代の朝鮮における倫理的価値観を現代に生きる私が受け入れ難く感じるのは当然のことではあるが)しかし、とにかく作者がこの一族をやけに持ちあげることには、やはりどうしても鼻白らんでしまった。
例えば
「フニは口唇裂と内反足を持って生まれたが、たくましい肩とがっちりした体つき、黄金色の肌に恵まれていた。優しく思慮深い性質は、おとなになっても変わらなかった」p9
「国中のあらゆる家族がこれほど分別のある父母に恵まれたわけではなく」p11
「嫁に与える食事や衣類を惜しんだりなど決してしない義父母だった。無事に育つ跡取りを産めない嫁に、暴力を振るったり非難を向けたりしたことも一度もなかった」p17
「ヨセプはおおらかで心の広い人物だ」p93
といった具合に、ちょっとパラパラページを捲っただけで、こうした褒め言葉にかなりの数遭遇する。もうおなかいっぱいですよ。。
あと、おそらく作者は在日を題材に「抑圧や差別の歴史に翻弄された人々」を描きたかったのではないかと思うが、メインキャラたちの不幸話が「不倫からの妊娠」「事故死」、「自殺」などかなり個人的なもので、歴史の渦に巻き込まれたダイナミックさにいまいち欠けるところがある点にも「うーん…」となった。
ヨセプの被曝や帰国事業の話などをもっと掘り下げてほしかったが、この2つはことの他あっさり流されてしまい、消化不良感が否めない。
それから、日本人女性が皆やけに性に奔放というか、性的倒錯を抱えている点には気持ちの悪さを感じた。しかもこれが揃いも揃って美女ばかりで、ソンジャ一族の男たちをホイホイセックスに誘うのだが、この辺りはなんというかすごく村上春樹みを感じる。ノアは早稲田で英文学専攻してジャズ喫茶行ってるし。いや、もう春樹やん。
というか、モーザスの親友の「春樹」とあやめの話、なんやったん…??
あ、そして、ノアは結婚したのに在日って隠し通せているのはどういうこと…??あと父を自殺で亡くした妻と子ども4人を残して自殺するなよ。
と、不平不満をタラタラ書きましたが、とはいえこの四世代に渡る壮大な物語をサクサク読み進めていかせるリーダビリティの高さには目をみはるものがあり、飽きずに楽しむことができました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ⭐︎感想は下巻に
《あらすじ》
第一部 故郷 1910〜1933
釜山の影島にて生まれたフニは、口唇裂と内反足という障害を抱えていたが、聡明な働き者であったため気立の良い娘ヤンジンとの良縁に恵まれる。
2人の間には結婚後すぐ幾人かの子どもが生まれたが、元気に成長したのは女の子のソンジャだけだった。2人はソンジャに愛情をかけ、大切に育てる。
彼女がこの物語の主人公である。
ソンジャが13歳の時、フニは結核で命を落とし、その後母娘は2人で精一杯下宿屋を切り盛りして生計を立てていく。
17歳になったソンジャは市場で一人の身なりのいい男と出会う。名はコ・ハンス。ある日、ソンジャが日本人の学生に陵辱されそうになっているところを助けられたことがきっかけで、二人の距離は急接近。やがてソンジャはハンスの子を身ごもる。しかし、実はハンスには大阪に妻子がいたため、ソンジャと結婚することはできないと打ち明ける。だから、朝鮮の愛人になってくれ、面倒は見る、と。ソンジャはその申し出を拒否し、結局二人は破局を迎える。
ある日、ソンジャとヤンジンが切り盛りする下宿屋に平壌から一人の青年が訪れる。青年の名はイサク。フニと同じく結核を患った牧師であり、体調不良を2人に助けられたこともあって、父無し子を孕ったソンジャを妻として迎え入れる。
影島にて婚礼をすませた夫婦は、イサクの兄ヨセプをたよって大阪の鶴橋へ渡る。
ヨセプには美しく優しい妻キョンヒがいたが、2人は子どもに恵まれずにいた。彼らはイサクからソンジャの事情を聞かされてはいたが、もっともらしい理由をつけて自らを納得させ、イサクとソンジャをあたたかく迎え入れる。イサクは牧師のポストを得るがその給料はままならず、四人の生活はヨセプのビスケット工場での稼ぎにかかっていた。また、ヨセプ自身もそのことを誇りに思い、キョンヒが働きに出ることをよしとしなかった。
ある日、ソンジャとキョンヒが家事をしているところに二人の男がやって来る。実はヨセプは弟夫婦の渡航費を借金でまかなっていたのだ。返済額は213円。ソンジャはハンスからもらった懐中時計を売ってこれを返すが、そのことがヨセプの逆鱗に触れ一悶着おこっている最中にソンジャは産気付き、そのまま無事男の子を出産。ヨセプによってこの子はノアと名付けられる。
第二部 母国 1939〜1962
ノアが6歳になった頃、ソンジャはイサクとの子モーゼスを出産。しかし、モーゼスが生まれてすぐ、教会の同僚が神社参拝を拒否したことにより、イサクは彼らとともに警察に捕まってしまう。ソンジャは毎朝差し入れを持って警察署にむかうが、決して面会は許されなかった。
ソンジャは生活のためキムチを路上で売ることを決意。キョンヒにも話を持ちかける。ヨセプは当然これに反対するが、キョンヒが売りに出ないことを条件にしぶしぶ承諾する。やがてキムチは評判を呼び、焼肉店からスカウトされてソンジャとキョンヒは調理の働き口を得る。
それから2年ほど経過したある日、イサクが釈放され家に戻ってくる。しかしイサクは衰弱しきっており、帰宅した翌日に息をひきとる。
その後、戦況はどんどん悪化していき、日本は慢性的な物資食糧不足に陥る。焼肉店も閉店を余儀なくされるが、そこにハンスが登場する。実はこの焼肉店はハンスのもので、ハンスは売りに出された懐中時計をきっかけにソンジャの消息を知り、彼女たちの生活を支えるため焼肉店での職を与えたのだった。
ハンスはさまざまな情勢に通じており、やがて大阪も空襲に見舞われるから疎開するようソンジャを諭す。ちょうどヨセプが長崎にて高収入の働き口を見つけたこともあり、一家は大阪の家を売り、ソンジャたちはハンスのつてで日本人農家のもとへ、ヨセプは一人長崎へと旅立つ。また、ハンスはソンジャの母ヤンジンもソンジャの元へ招き入れ、二人は久方ぶりの再会を果たす。
やがて日本は終戦を迎える。長崎にいたヨセプは被曝して大怪我を負い、一家は大阪へと舞い戻る。 -
Posted by ブクログ
するべきことがあると分かりながら、幾度となくスマホを手に取りSNSを見てしまう自分に危機感を持ったことから手に取った一冊。
SNSを代表する現代のインターネット環境により、各人がセルフコントロールを失い、主体性をなくすことに警鐘を鳴らす。それを「魂を抜かれる」と表現する。
本書では、インターネットから離れるための具体的な方策を提示しているが、個人的にはドラスティックであり若干非現実的と感じた。(世論でそこまでSNSのデメリットが共有されていないためとも思う。社会全体として、懸念が顕在化してくれば、そう思わないかも。)
むしろ本書での気づきは、SNSを辞めた時に生まれた時間を、いかに有意義に使うかを合わせて考える必要性を問うていること。それがなければ、結局最高の暇つぶしであるSNS、ネットサーフィンに戻ってしまう。
インターネットという、受動的な娯楽に慣れ切ってしまった中で、なかなかの難問であるが、心に留めながら生活していきたい。