池田真紀子のレビュー一覧
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ネタバレジェフリー・ディーヴァーの新作だったので。
短編集で電子版のみだったのを、日本の読者のために訳し書籍化したらしい。
ありがたい。
もちろんリンカーン・ライムのお話もあるし、それぞれ面白かったが、
一番は「麗しのヴェローナ」。
ヴェローナとはロミオとジュリエットの舞台なので、
恋に落ちるふたりが主人公のお話。
ふたりは別々の犯罪組織のボスの娘と息子で、
父親たちはさらに別の犯罪組織のボスの死をきっかけに
その縄張りに食い込もうとしている最中に、
葬式の日に近くのバーで出逢って一目ぼれをしてしまう。
だが、もちろん悲しい結末のラブストーリーではなく、
「組織」の世代交代の話だった。
恋に落ちたふたりは、
父親たちに盗聴器を仕掛けられその情報を利用される…と見せかけて、
罠にはめられたのは父親たちの方で、
父親たちを逮捕に追い込んだふたりは新しい犯罪組織を立ち上げる、
というストーリーにも驚いたが、
その出遭いもボスの死も仕掛けられたものだというのにはかなり驚いた。
この展開もさすがジェフリー・ディーヴァーという感じだが、
それだけではただの恩知らずの娘と息子になってしまうところを、
鬱で自殺未遂を繰り返す娘に「仕事」のことをセラピーで話すなと脅す父親、
息子を殺人に利用し、妻は虐待していた父親を描き、
ふたりの反逆にも色をつけてみせた。
悪いふたりとは判っているが、
できればふたりが犯罪の世界で活躍するシリーズにしてほしい。 -
Posted by ブクログ
連邦捜査官サンチェスの妹が殺されかけたことをきっかけに、サイバー犯罪専門家のヘロンとともに、クモの刺青のある犯人を追うというお話し。
600ページを超える長編ですが、冒頭から面白くて一気読みでした。犯罪捜査ものですが、犯人の視点も描かれており、それぞれの状況と心情が読めるので、物語の展開が理解しやすかったです。ただ、警察側の事情が細かくて、やや読みにくい部分も。
サンチェスとヘロンの背景が、物語の展開を邪魔することなく語られていくので、そこはさすがだと思いました。正義感のかたまりのサンチェスと、犯罪行為ありきでマイペースのヘロンが、今後どのような関係になっていくのかも楽しみです! -
Posted by ブクログ
X、Facebook、Threads、スポーツナビ、Yahooニュースなど、ちょっとした時間になくなんとなく開いてしまっていたアプリをさっそくスマホからアンインストールした。
アンインストールして数日経つが日常生活にはまったく支障がないので、これらのアプリをいかに目的もなく、ちょっとした間を埋めるためだけに使ってたのだと気付いた。
これだけでスクリーンタイムが1時間以上減った。ちょっとした間の合計時間が1時間以上というのが恐ろしい…。
インスタグラムやLINEはまだ残ったまま。とりあえずインスタグラムは1日10分しか使えないように設定して様子見。 -
Posted by ブクログ
リンカーン・ライムシリーズのジェフリー・ディーヴァーと元法執行官のイザベラ・マルドナードの共著作品。
共著という事で、リンカーン・ライムシリーズとは異なるリズムで物語が進みます。連邦捜査官のカーメンと、セキュリティコンサルタントの大学教授ジェイクのコンビが、サイバー空間の闇の中から犯罪すれすれの行為で(ってか、犯罪行為で?)犯人に迫る証拠を掴んでいくんですが、リンカーン・ライムシリーズはどちらかというと静の印象ですが、こちらの作品は動の印象です。
女性と男性という組み合わせはリンカーン・ライムシリーズと同じですが、全く異なる物語に仕上がっています。シリーズ化もされ、且つ、映像化もされるようです。期待大ですね。 -
Posted by ブクログ
最初は正直、何が起きているのかよく分からないまま読み進めていた。語り手は支離滅裂、場面は断片的で、ファイト・クラブがいつの間にか組織化し、強襲集団のようになっていく展開。それでも読み進めるうちに、この「分からなさ」自体が、この小説の読書体験なのだと感じた。
強く印象に残っているのが、ハッセルに銃を突きつけ、獣医になりたいという夢を聞き出し、「それに向かって生きろ」と言い放って解放する場面。暴力的で危険な行為であることは間違いないのに、その言葉だけを切り取ると、私たち自身に向けられているように感じられる。
人は誰でも、「今ではない」「まだ時間はある」「いつかやる」と言い訳を重ねながら、本当にやりたいことから目を背けてしまう。その事実を、容赦なく突きつけられている。
『ファイト・クラブ』は、分かりやすい答えを与えてくれる小説ではない。むしろ、読み終えたあとに「自分はどう生きているのか」「本当に自分の人生を生きているのか」と問いを残す作品と言える。その問いが今も少し胸に残っている、そんな読後感。 -
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『わたしが自分の道を歩んでいるように、あの子は自分の道を歩んでいる。世界はもう、ずっとわたしなしで進んできた。わたしはあの子に命を与えた。それは大きな贈り物だ。それは無の反対だ。そして無の反対は、"何か"ではない。すべてだ』―『第五部』
原題は「Mars Room/火星部屋」。サンフランシスコのストリップ小屋の名前。直訳あるいはカナ起こしでは余り人の目を引き付けないと誰かが考えたのだろう。ただ、読み通してみるとそれだけでは何の感情も惹起しない固有名詞が持ち得る意味が染みて来る。それはただの場末の店の名前。店の従業員も客も世間の枠組みからこぼれ落ちている人々。そこへ集まる目的も、そこでの振る舞いも感情も千差万別ながら、誰かの必死さに付け入る構図だけが虚構に満ちた世界の中にあるたった一つの真実。主人公もそんな場所に必死さを売りに行く一人。
その構図は主人公である女、ロミー・ホールが収監される刑務所に移っても変わらない。登場人物は誰しも何か自分自身にとって鎧となるようなペルソナを被って生きている。そうでもしなければ、その悲惨な人生と相対できないとでもいうように。
とても皮肉なことに、終盤になって漸く登場する主要人物の一人の独白(本書は複数の人物による一人称の語りで構成されている)にだけ、そんな薄っぺらい仮面の構図がない。その意味は、余りにも虚構の世界に深く沈んでいるか、余りにもナイーブに人の感情を信じているかのどちらかだが、それを判断する間もなくその人物は舞台から降りてしまう。
邦題からは何となくクリント・イーストウッドが主演した昔の映画「アルカトラズからの脱出」やモーガン・フリーマン主演の「ショーシャンクの空に」のような脱出劇の話なのかと想像してしまうかも知れないけれど、映画で例えるならむしろジーン・ハックマンとアル・パチーノ主演の「スケアクロウ」あるいはジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンが主演した「真夜中のカーボーイ」のような物語。そう言ってしまうと映画好きの人にはすぐに解ってしまうと思うが、本書は救いのない悲惨さに満ちた物語であるとも言えると思う。
ただ最終章の最後にだけある微かな光。その直前に描かれている主人公の行動は、これまた映画の喩えで申し訳ないがポール・ニューマンとロバート・レッドフォード主演の「明日に向かって撃て!」あるいはウォーレン・ベイテイとフェイ・ダナウェイ主演の「俺たちに明日はない」(余談ながらこの邦題の意図の構図も本書と似たところがあるね。原題はBonnie and Clyde/ボニーとクライド)を彷彿とさせるもの。ただしこちらの主人公には託す未来がある、というのが異なるところか。
カリフォルニアという陽光燦燦と輝くリベラルな土地柄(あくまで個人のイメージ)。かつてママス・アンド・パパスが「夢のカルフォルニア」と歌った場所は多種多様な人々が自由に暮らしていける夢の場所であった筈なのだけれど(そんな多様性の問題は刑務所内にもまたある)、一端世界の枠組みから外れてしまうと転がり落ちるしかない場所でもある。そんな底辺に暮らしていた主人公が護送車の中でこう語る。『サンフランシスコについて、ようやく理解できたことがある。わたしは美しいものに囲まれていたのに目をふさがれていたのだ』。人は失ったものにしか本当の価値を感じられないものなのかも知れない。
読むと判るのだけれど、本書には謎の一人称が一人登場する。それが誰のことなのか、あるいは名前を持たない登場人物なのか、そのエピソードはいつのことなのか、それを想像するのもまた一つの読み方かも知れない。自分の解釈では、これは名前の付いた登場人物の一人、だと思う。
余談ながら、池田真紀子氏の翻訳は大分昔にパトリシア・コーンウェルのスカ―ペッタ・シリーズでお馴染みだったけれど、改めて、テンポがあって読み易くて良いね。 -
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★★★★★ 韓国から日本に渡った一人の女性、彼女の人生で絶えることなく続く苦労と小さな幸せと愛。人生はパチンコの如く。負けると決まっている勝負、なのに続けてしまう。力強いエピック。
★★★★★ Life of a Korean woman who survived all the difficulties the life threw at her. And about her beloved ones, Korean or Japanese. Life is a Pachinko. It’s not fair. You’re bound to lose. But you keep playing. An epic.
Pachinko
Min Jin Lee, 2017 -
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普段であればこんな厚い文庫本は手に取らない。だが、クリスマスの陽気が私をそうさせたのだと思う。この本を買ったのは10年近く前になる。そして短編集だと知ったのは先日だ。
事実は小説よりも奇なりと言うが、やはり小説の方がよほど「奇」だ、なぜなら事実を時系列に並べているはずなのに「大どんでん返し」が成立するのだから。
なごやかな雰囲気で読む短編集では無いと思う、一転二転三転する内容に心の準備が追いつかない。
どんでん返しの瞬間は一瞬だ。字を目で追う一瞬。痛い話だが、紙で指を切ってしまう、あの一瞬に似ている。心臓からじんわり血が滲んで痛む気持ちだ。
よかった。ディーバーの長編もトライしてみたい。