王谷晶のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
短編集と言うにはあまりにも収録数の多い一冊。王谷晶は最近読んだ『ババガヤの夜』がすごく良かったのだけれど、これは何年も前に買って少し読んで放置していたものをふと思い出して読み直した。全部が面白いとは言わないけど、何編かに一度ハッとさせられるような鮮烈な作品があり、ドキッとするような居心地の悪さを残す不思議なものもあって、なかなか多彩なラインナップだった。それぞれの作品で登場人物の口調や文体がガラッと変わるのも印象的で、まさに変幻自在。これがとても面白かった。
「Same Sex, Different Day」と「陸のない海」は特に好き。さらに「ときめきと私の肺を」は自伝的なのかなと思いながら読んだ。女性同士の恋の始まりをリアルに(実際にリアルかどうかは分からないけど、リアルに感じた)描いていて、とても面白かった。
読み終えてあとがきを読んで気づいたのは、この本の物語はすべて女性が主人公で、相手も女性だという点だった。読んでいる間は没入していてまったく気づかなかったし、むしろ“そういう特別な短編集”として意識せずに楽しんでいた。だからこそ、作者があとがきで憂いている点については、「こういう読者もいますよ」と伝えたい気持ちになった。良い一冊だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの前に読んだダガー賞受賞の「ババヤガの夜」が、冒頭のバイオレンス満載のハードボイルドタッチから全く別の印象となる後半の逃亡とシスターフッドの物語に就職氷河期世代でさらに性的マイノリティである作者自身が色濃く投影されていた。
この作品は、この後半部分でのあった「今の社会で不安定なひとの現実を不安定なまま、一念発起して自己改革するようなことはなく、ふらふらとしたままなんとか生きていくという」今この社会にもある現実をそのまま描いている。
作者のインタビューにあるように「現代版長屋噺」と語っているように昭和レトロなマンションを舞台に展開する幽霊譚のドタバタ劇でもあるだが、急死した幽霊と交流していた伯父さんの痕跡をたどる主人公を通して社会で人と関わり合うことの理想に迫ろうとしたようだ。
なぜ伯父さんは自らも幽霊と称していたのか?なぜ他人屋として評判のいい伯父さんなのに一族からは悪評しか聞こえてこなかったのか?婚活連敗続きでも“立派”な兄と主人公…
どんな属性であっても“普通”に生きることとその難しさを改めて考えさせられた。 -
Posted by ブクログ
女と女だからこその気安さやわかりあえる事柄もあれば、どうしても憎みあうこともある。性別関係無しにただ愛しかったり、その逆だったりもまた当然、色とりどりの関係が生じ得る。そのバラエティ豊かな女たちの物語を、これまたバラエティ豊かな筆触で生き生きと描いた短編をぎゅうぎゅうに楽しめる短編集です。
ときにあけすけにエロティックに、ときに純粋な思慕を潜ませて、ときにただくだらなくギャグを貫く、豊かな物語の粒のひとつひとつが瑞々しくて堪らなく楽しめました。
「ババヤガの夜」とは全く違う作品群ですが、だからこそまたフレッシュに楽しめました。面白かったです。 -
Posted by ブクログ
題名を見てホラーっぽいコメディかなと何の気無しに読みました。
読み終わって作者の紹介のところに、少し前に賞を取った「ババガヤの夜」と書いてあってびっくり、テレビで見たあの作家さんなんですね。
成り行きで亡くなった親戚の部屋に住む事になると、そこには幽霊がやってきて…
ほとんど交流のなかった親戚のおじさんの人柄が実は、周りから聞かされていたような人物ではなく、その部屋には通ってくる幽霊も…謎はありつつ、交流が続いていく。
印象に残ったフレーズは、自分の事を行きた幽霊だと 生きているけど生きてない 死んでないけど死んでいると話していた先住人のおじさん。
趣味も無く親しい友人もおらず、淡々と過ごす毎日を、行きた幽霊とでも言うのだろうか…
テンポよく一気に読めました。