王谷晶のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「ババヤガの夜」が面白かったので、他の作品も読んでみようと手に取った。「ババヤガ」の解説に本作の「ヤリマン名人伝」からの引用があり、気になっていたのでこれから読み、後は掲載順に。
印象に残ったのは、「ばばあ日傘」、「あなたのことを考えると無駄になる」、「ヤリマン名人伝」、「タイム・アフター・タイム」、「北口の女」の五作品。
「あなた」と「アフター」は、どちらも、ガールズラブ(シスターフッドと作品案内では書かれているけど違いはよくわかっていない。性的比率が下がるとシスターフッド?)が始まる瞬間まで。
「ばばあ日傘」が出色の出来。会話劇が行われている場所(刑務所の出口前)が最後に分かるのがかっこいい。
「北口の女」は、アンソロジーで読んだことがあったが、もう一回読んだ。
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Posted by ブクログ
この作品は3通りの読み方ができると思います。
ひとつは「女性が主人公のバイオレンスアクションやノワール」。もうひとつは「性別を超越したところにあるシスターフッド小説」。これは私の語彙力が不足していただけで、調べたら「クィア・シスターフッド」と呼ぶらしいです。
私は本作をダガー賞の件以降に知ったのですが、多分出版された当初はさほど話題にならなかったはず。恐らくほぼ前者のみの文脈の中で消費されたのだろうと想像します。
それが時を経て、3つ目にして作者の本来意図したであろう読み方、「バイオレンスの皮を被ったクィア・シスターフッド」という本質が理解され、ダガー賞はじめ海外で評価された上で国内での再評価となる訳ですが、いざ読んでみると確かにこれは海外に受ける小説なんだろういう印象を持ちました。
ただし、必ずしもいい意味でというわけでもありません。
というのは、普段から日本のエンターテインメントに接している人は、少し本作のストーリーがありきたりに感じる面もあるのではないかと思うのです。
腕っぷしが強いが不器用で孤独な主人公と深窓の令嬢(訳アリ)の逃避行。これは主人公が男性なら小説に限らずフィクションでよくある話でしょう。高倉健のような往年のスターならば昭和のヤクザ映画に、桐生一馬ならば『龍が如く』に。他にもたくさんありそうです。
また、新堂と異なり腕っぷしに頼れない尚子がアクションシーンに参加する終盤。そこで使われる武器と力の弱い女性の組み合わせもやはりありがち、というかド定番に感じる。この武器、日本のものは構造上精度が低く百発百中にはなり得ないのですが、その辺りの違和感は海外の読者には伝わらず、逆に力を持たざる女性が次々に男性を倒すというクールな場面として映るのかもしれません。
少し粗探しのような意地悪な見方をしてしまいましたが、本作がとても魅力的な作品であることは間違いありません。主人公の新堂が女性であるということの意味は大きく、体調面で月経周期の影響を受けたり、性的な被害に遭いかける場面がある。これはもちろん高倉健や桐生一馬ではあり得ないことです。
身体が大きく力のある新堂に過度な男性性を与えず、あくまでも女性として男性に立ち向かっていく様は素直にカッコよく、この作品の精神性を象徴していると思います。
クィア・シスターフッドの「クィア」の部分はネタバレになり得るので触れませんが、「シスターフッド」の部分はとても印象的でした。終盤から最後にかけての新堂と尚子の関係性。これは女性同士だから成り立つ関係なのでしょう。最初は上下関係だった2人が最終的に極めて対等な関係へと変化している。関係性の変化が共に過ごした時間の濃密さを静かに、しかし饒舌に物語っているようでした。
個人的には読んでいる間どうしても「ありがち感」への違和感を払拭できず、無条件の絶賛とまではいきませんでした。しかしクィア・シスターフッドをバイオレンスという強烈なスパイスをまとわせて提供するという試み、本当にお見事という他ありません。ダガー賞翻訳部門受賞という快挙に値する作品だと思います。王谷晶さんがこれからどういう作品を書かれるか、楽しみにしています。 -
Posted by ブクログ
オーディブルで。ちょっと変わった形の家族を描いた短編五篇。
「おねえちゃんの儀」レズビアンカップルの日常。
「あのコを知ってる?」彼女(40歳)が失踪?主人公(30歳)のもとに、その息子を名乗る男(20歳)がやってくる。この息子の造形が切なかった。
「リワインド」偶然知った昔のアルバイト仲間の死。それを救うため、何度もタイムリープする。
「父の回数」幼いころ別れた父。その理由を知る高校生。高校生の、何もしたくない、植物のような精神と、父の幼児性。回数って、YOUTUBEの再生回数のことだった。
「かたす・ほかす・ふてる」孤独死した父の部屋の片づけを、初めて会った腹違いの弟とする。父は何を考えて生きていたのか。
おもしろかった。どれも切なくて。