あらすじ
話題のシスター・バイオレンスアクション『ババヤガの夜』の著者が放つ傑作小説集。
父親が死んだという連絡がある。母親は三十年以上前に父と離婚してから、まったく没交渉だった人間だ。葬式を準備する私と母の顔には、「めんどうくさい」という字がくっきり刻まれている(「かたす・ほかす・ふてる」)。
誰にも同情されず、注目もされず、生きる営みを淡々鬱々と続ける人々の心を照らすものとは? 孤独な現代人の心を揺さぶる「ダイバーシティ」ファミリー小説五編。
こんな風に書かれる主人公たちが心底羨ましい。理屈じゃなくて、肌触りが好き。独り占めしたいから読まないでください!
―尾崎世界観(シンガーソングライター・小説家)
全編、順番を付けられないくらい好きです。そして、どのお話にでてくる人も好きです。
共に生きられなくても、あなたを生かしてくれるひとはいるのだよ、と王谷さんが語りかけてくれるようでした。
―町田そのこ(作家)
これはあなたの話であり、わたしの話であり、あなたのすぐ隣で生きているひとの話だ。
―永井玲衣 (哲学者・作家)
つながりは言葉のまえに、そこにあって、じぶんの家族も、本当は名付けられないなにかだ。
本書は家族という最小の社会につけられた、無数の傷を愛そうとするこころみである。
―海猫沢めろん(作家)
この小説たちは、まさに現代の「人間喜劇」(19世紀の文豪バルザックの小説群)だ!―(担当編集)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
それぞれにそれぞれの良さが光っている短編集だった。王谷さんの物語には色んな味の痛みがあって好きだ。
『こんなにぎゅっとしているのに、何かがこぼれ落ちていくような気がする。少しずつ。』思わず目が潤んでしまった。愛おしさと哀しさと絶望感に共感する。
Posted by ブクログ
色んな家族のお話。短編小説。
一つ一つが完成されてる感じがして、良かった。
読みやすいし、面白い。
今、話題の「ババヤガの夜」の作者さんだったのか!
って読み終わってから気づいた。
迷ってたけど、ババヤガも読んでみようと思った。
・同棲しているビアンカップルの日常と結婚考察のお話。
・年上彼女とその息子君との出会い。そして、これからの杉井くんのお話。
・タイムリープしてバイト仲間だった子を助ける主婦のお話。
・普通でいたい男子高校生の友情と生活、YouTuber?の実父の謎のお話。
・死んだ父親の家の片付けと、生前の人となりが見えてこない父に、思う事がある子ども達のお話。
Posted by ブクログ
とても読みやすい文章でさっと読めました。
ここでの評価が低いのはなんでだろう??
最初の話はふわっとした終わり方でよくわからなかったけど、他の話は面白かった。たぶん短編が面白い方なのかなと思った!他の本も読んでみたい。
Posted by ブクログ
家族だけでこんな色んな物語が広がるなんて。
面白いです
順列つけたくないくらいよかったですが
特にあのコを知ってる?とリワインドが
よかったです。
読んでみないと、この良さは言葉で伝えきれないかもしれないです。
Posted by ブクログ
『あのコを知ってる?』と『◀︎◀︎(リワインド)』が好き。
低温でドラマチックさはないがそれが心地良い文体。
「遊んでても静かなもんだな、最近の子は」のセリフがなんだか印象に残った。
Posted by ブクログ
初・大谷晶
2025年のダガー賞の翻訳部門受賞の『ババヤガの夜』で有名になりましたが、それで興味を持ったわけでは無く、この本についての好意的な書評を目にしたのがきっかけです。むしろミステリーには手を出さない事にしている私は、受賞を聞いて大谷晶=ミステリー作家と勘違いして、ちょっと躊躇したのです。
しかし、なかなか良かった。
5つの短編。どれも意外な終わり方です。最終盤で少し方向が変わって、かつ完全に決着をつけるのではなく少し曖昧な終わり方。オッそう来ましたかという感じ。個性的で嫌じゃない。
特に「リワインド」。タイムリープを繰り返すケン・グリムウッドの『リプレイ』や北村薫『ターン』の様な”ループもの”のSF的設定ですが、最後に主人公を同時大量発生させて。。。。どう決着をつけるのかと思ったら、その件は放っていきなり未来に戻っちゃった。でも、その放り出しっぷりがなかなか清々しく、突っ込むよりも面白がってしまいました。
もう一冊、どうしようかな。
Posted by ブクログ
確実に身の回りにあるのに、誰も文章にしてこなかった人間関係や人生が書かれていた。
『リワインド』だけは少し感触が違うが、これはこれで結び方が飾りなしで、普通のファンタジーには落とさないところが徹底していてよかった。
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家族をテーマにした5つの短編集。
どれも甲乙つけがたいほど、良かった。
ハッピーな話もあれば、切なくなる話もあり。
表題作「父の回数」は、胸糞悪い最後だった。タイトルの意味がわかると、本当にムカついた。
小説を読んで、怒りの感情がわくことはあまりない。主人公が哀れで、抱きしめて、慰めたくなる。
「おねえちゃんの儀」は、同性婚が認められないので、「姉と妹」として暮らしている女性二人の話。家族になりたいけど、なれない主人公の切なさが沁みる。
「あのコを知ってる?」はシュールでおかしかった。思わず笑ってしまう。
「リワインド」は爽快!
何度も過去をやり直す主人公を応援したくなる。
「かたす・ほかす・ふてる」は、疎遠だった父を亡くした主人公と、義理の弟の話。父の死を悲しいとも思わないくらい、思い出も特にない主人公が語り手なので、全体的に淡々としているけれど、ラストはしんみりさせられる。
自分の中の、色んな感情を引きずり出されてしまう、恐るべき一冊でした。
一言で言い表せないけれど、無理やりまとめると、「とっても良かった」!
Posted by ブクログ
「おねえちゃんの儀」
「あのコを知ってる?」
「◀◀(リワインド)」
「父の回数」
「かたす・ほかす・ふてる」
5話収録の短編集。
私達の身近にいそうな人達が織りなす共感ポイントが高い物語も良いけれど、本作は私の周りを見渡しても全くいなさそうな人達のお話。
でもこれがやけに面白い。
毛色の異なる5編だが、登場人物は皆、人生を諦観しているようで、その冷めた目線に興味をそそられる。
無味無臭にも思えるが、どこかおかしみがあり、人間は本当にたくさんの感情で構成されているのだと改めて感じた。
表題作の『父の回数』には呆然。
父よ…。
Posted by ブクログ
短編5篇からなる本作。中でもタイトルにある「父の回数」という話で離婚して疎遠になった父親が亡くなり、父親宅を掃除することになり、もしかしたら自分たちの思い出の品が出てくるかも?と期待して何もなかった時の空虚感がリアルだった。
Posted by ブクログ
初読みの作家さんです。短編5話すべて、その後が気になる終わり方ですが、人の心の声を細やかに拾っている文章が好みでした。タイトルも、読み終えると「それでこのタイトルなのだ」と納得。5話それぞれいろんな主人公たち。皆の未来に幸あれと祈ります。著者の他の作品も読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
王谷晶連発!
こういうのも書いちゃうんだ!個人的には「ババヤガの夜」より こっちかな。表題作「父の回数」がとってもよかった。じんわりと絶望感がしみてきた。家族を見る目も 角度を変えたら 違ってみえちゃうんだな。夏の終わりの読書におすすめ。他の作品も読んでみようっと!
Posted by ブクログ
五つの話。
「かたす・ほかす・ふてる」が、よかった。
2階離婚した父が死んだ。
片付けをする中で、ゴミはあるけど、生きていた何かがない父の生活。
なんとなく生きたのか。
人の人生に、こういうことってよくあるんじゃないかな。結局、なんとなく生きてきた。
人生って奴を、考えてしまう。
Posted by ブクログ
短編集5篇
同性婚出来ないため姉妹として暮らしたり、同居人が家を出て行き突然息子が現れたり、離婚して会ってなかった父の死で知った弟の存在など、家族ではない家族を描いていて面白い。「リワインド」は違ったアプローチでタイムトラベル物。