王谷晶のレビュー一覧
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初・大谷晶
2025年のダガー賞の翻訳部門受賞の『ババヤガの夜』で有名になりましたが、それで興味を持ったわけでは無く、この本についての好意的な書評を目にしたのがきっかけです。むしろミステリーには手を出さない事にしている私は、受賞を聞いて大谷晶=ミステリー作家と勘違いして、ちょっと躊躇したのです。
しかし、なかなか良かった。
5つの短編。どれも意外な終わり方です。最終盤で少し方向が変わって、かつ完全に決着をつけるのではなく少し曖昧な終わり方。オッそう来ましたかという感じ。個性的で嫌じゃない。
特に「リワインド」。タイムリープを繰り返すケン・グリムウッドの『リプレイ』や北村薫『ターン』の様な”ルー -
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ネタバレ家族をテーマにした5つの短編集。
どれも甲乙つけがたいほど、良かった。
ハッピーな話もあれば、切なくなる話もあり。
表題作「父の回数」は、胸糞悪い最後だった。タイトルの意味がわかると、本当にムカついた。
小説を読んで、怒りの感情がわくことはあまりない。主人公が哀れで、抱きしめて、慰めたくなる。
「おねえちゃんの儀」は、同性婚が認められないので、「姉と妹」として暮らしている女性二人の話。家族になりたいけど、なれない主人公の切なさが沁みる。
「あのコを知ってる?」はシュールでおかしかった。思わず笑ってしまう。
「リワインド」は爽快!
何度も過去をやり直す主人公を応援したくなる。
「かたす -
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ネタバレ初読み作家さん。「君の六月は凍る」というタイトルにひかれて手に取りました。2篇収録。内容は全然違う2篇ですがどちらも私にとっては良作でした。
君の六月は凍る
名前を目にした途端に湧き出てきた、わたしと君の三十年前のこと。狭い世界、ありきたりの日常から兄が出ていくという変化が訪れたころ、ひょんなことから関わるようになった君。
初めての気持ちをうまく処理できず相手を傷つける。語られるわたしと君の過去は読み手の私の思い出も蘇らせる。
思い出でできた数珠玉が連なった糸をずるずると引き出すように語られる過去、その文章に身を任せるだけでその思い出に存在する熱と臭いが感じられました。
ベイビー、イッ -
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表題の『君の六月は凍る』と『ベイビー、イッツ・お東京さま』の二本立て。
どちらも匂い立つ(いい意味ではない)感じで、記憶に残りそう。
『君の六月は凍る』は登場人物の名前も性別もはっきりせず、読み手に想像させるのだが、それでも他人に抱く恋慕や恨みにも似た怒りというものは、そういう前提がなくてもスッと入ってくる感じがした。
『ベイビー、イッツ・お東京さま』は、主人公がTwitterやエッセイで読む王谷晶さんそのままで、「自伝?」とも思ってしまった。他県の田舎住まいとしては、東京は光の街のように見えるのだが、なるほど「メトロポリス」と「ゴッサム・シティ」ね。わかりやす…。『君の六月は凍る』でも大橋を -
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「北口の女」があまりに良かったので、これが所収されている本書を手に取った次第です。もう、あんまり覚えていないのですが、最後の「タイム・アフター・タイム」が好きです。歌がらみの話が私のツボにはまるのかもしれません。女同士のドロドロなのも好みでした。SNSとかニコが若い頃には影も形もなかったもの。これの影響力のスゴさに感心すると同時に、こんなんに振り回されてんじゃねぇ、と言いたい気持ちも募ります。そういいつつ、最早、社会とか流行とか風俗とか、そういうものの第一線から遠ざかった、少なくとも外部からはそのように認定されるであろう私。その私に、シンディ・ローパーの気怠いバラードが染みるのです。
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