あらすじ
自分を呼ぶのに「私」も「あたし」もしっくりこない妙子が出会ったのは、一人称からフリーな夏実(「小桜妙子をどう呼べばいい」)。ほか、恋愛、友情、くされ縁……名前をつけるのは難しい、でもとても大切な、女同士の関係を描く23篇。読後に世界の景色が変わる1冊。
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Posted by ブクログ
まずタイトルがむちゃくちゃ好き。(ダブルミーニングには英タイトル読んで初めて気づくという)
そして、サクサク読めてツッコミの切れ味鋭い語り口も大好き。ずっと浸っていたくなる感じ。収録されているのも、甘いものからおぞましいもの、ガンガン行く系まで幅広く最後まで飽きなかった。
「しずか・シグナル・シルエット」のみじめな2人同士のなんともいえない関係好き。
「だからその速度は」恋の突然来る感じと、恋したせいで世界が変わる感覚が鮮やかに書かれてて好き。
「陸のない海」のお先真っ暗なくせに爽やかな感じも、「夢で見た味」の不気味さ気持ち悪さも、「シオンと話せば」のどこかさみしい雰囲気も好き!
Posted by ブクログ
短編集と言うにはあまりにも収録数の多い一冊。王谷晶は最近読んだ『ババガヤの夜』がすごく良かったのだけれど、これは何年も前に買って少し読んで放置していたものをふと思い出して読み直した。全部が面白いとは言わないけど、何編かに一度ハッとさせられるような鮮烈な作品があり、ドキッとするような居心地の悪さを残す不思議なものもあって、なかなか多彩なラインナップだった。それぞれの作品で登場人物の口調や文体がガラッと変わるのも印象的で、まさに変幻自在。これがとても面白かった。
「Same Sex, Different Day」と「陸のない海」は特に好き。さらに「ときめきと私の肺を」は自伝的なのかなと思いながら読んだ。女性同士の恋の始まりをリアルに(実際にリアルかどうかは分からないけど、リアルに感じた)描いていて、とても面白かった。
読み終えてあとがきを読んで気づいたのは、この本の物語はすべて女性が主人公で、相手も女性だという点だった。読んでいる間は没入していてまったく気づかなかったし、むしろ“そういう特別な短編集”として意識せずに楽しんでいた。だからこそ、作者があとがきで憂いている点については、「こういう読者もいますよ」と伝えたい気持ちになった。良い一冊だった。
Posted by ブクログ
多彩な女同士のあれこれが詰まった短篇集。
なんとも形容しがたい関係性や友情までいかない距離感が良い。
たった数頁でも妙に刺さる話が多くて、まさにコンパクト&インパクトだなと思った。
個人的に『イエロー・チェリー・ブロッサム』と『ヤリマン名人伝』がお気に入り。
Posted by ブクログ
女と女だからこその気安さやわかりあえる事柄もあれば、どうしても憎みあうこともある。性別関係無しにただ愛しかったり、その逆だったりもまた当然、色とりどりの関係が生じ得る。そのバラエティ豊かな女たちの物語を、これまたバラエティ豊かな筆触で生き生きと描いた短編をぎゅうぎゅうに楽しめる短編集です。
ときにあけすけにエロティックに、ときに純粋な思慕を潜ませて、ときにただくだらなくギャグを貫く、豊かな物語の粒のひとつひとつが瑞々しくて堪らなく楽しめました。
「ババヤガの夜」とは全く違う作品群ですが、だからこそまたフレッシュに楽しめました。面白かったです。
Posted by ブクログ
女同士の関係が1番自由なのかもしれない…友情でも愛情でもなんとなく隣りにいるでも、強く結びついてても付かず離れずでも今は遠く離れてても何にでもなれる。
初読みの作家さんでしたがもっと読みたくなりました。
いかにもありそうなお話から、自分や友人が変態していくファンタジー、ゾンビもの(とても楽しいし終わり方が好き)まで自由でした。
お婆さんのひとり語りのお話も、夢で見た料理を友人が作ってくれるお話も好きです。不味い餃子のお肉それ鈴木さんですよね……?
Posted by ブクログ
例えばマイノリティやフェミニズムに目配せしたような題材の小説があったとして、にもかかわらず作者自身の古臭い考え方が文章から露呈しているもの(社会的なものでしかないジェンダー観を所与のものと捉えてるっぽい、地の文で男性は苗字で女性は名前で表記するという慣習を疑問に思ったこともなさそうな書きぶり等)が少なくない中で当たり前に著者はそんなこともなく、物語を楽しむために不快な部分に目を瞑ることもせずに読める貴重な作品集でした。こういう作家さんが増えていくといいな。長編のババヤガは既読でしたが、こちらは短編集でより多彩な味付けを楽しめました。