逢坂剛のレビュー一覧
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クラシックギターの演奏家であり、19世紀ギターの愛好家でもある倉石学は、マドリードで開かれていた古書店でドイツ語の古文書を購入する。古文書自体に興味はなく、目当ては裏側に書かれた高名なギタリストであるフェルナンド・ソルの楽譜だった。だがこの古文書に興味を持ったのは倉石の妻の麻里奈で、大学時代、ホフマンを卒論のテーマにしていた彼女は、その文書にホフマンが出てくることに気付く。友人の沙帆は、その文書の翻訳をホフマン研究で有名なドイツ文学者の本間に翻訳してもらうため、その仲介をすることになる。
本間が翻訳した古文書の作中作と倉石一家や本間鋭太らの奇妙な縁とそれに付随する秘密が徐々に明かされてい -
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新宿の雑踏で起こった爆発事件。二人の死者と負傷者二十一人を出した惨劇で亡くなったふたりのひとりは爆弾の所持者とされるフリーライターで、もうひとりは本庁公安部の特務一課に所属する倉木警部の妻だった。男は左翼グループのメンバーだったのか、それとも――。妻を失った倉木尚武は捜査のメンバーを外されながらも、真相を追っていく。一方、能登半島の突端にある孤狼岬につながる道路を傷だらけで歩いていた〈彼〉が発見される。〈彼〉は記憶を失っていて、自分が何者か分からなくなっていた。
ということで、本書は逢坂剛が1986年に発表した一作。『カディスの赤い星』などと並んで、著者の代表作のひとつとされている作品で -
Posted by ブクログ
警視庁公安部に所属する刑事の桂田は、右翼の大物として知られる遠山から、一通の手紙を見せられる。それはテロも辞さない左翼グループ『東方の赤き獅子』の名が記された殺害予告だった。情報を掴むために、桂田とコンビを組む相方の浅見は張り込みをはじめる。時を同じくして、浅見のもとにひとりの男が訪ねてくる。特別監察官の津城は、逸脱した捜査や取り調べを行い、金の流れにもおかしいところを感じる桂田を調べているらしいのだが――。
というのが、本書の導入。文庫裏の内容紹介に書いてある部分なので、言ってしまってもいいような気はするのですが、本書の一番の読みどころになる部分は敢えて伏せました。結構中盤に来てから起