ヴェネツィアに死す

ヴェネツィアに死す

小説・文芸
704円 (税込)

3pt

高名な老作家グスタフ・アッシェンバッハは、ミュンヘンからヴェネツィアへと旅立つ。美しくも豪壮なリド島のホテルに滞在するうち、ポーランド人の家族に出会ったアッシェンバッハは、一家の美しい少年タッジオにつよく惹かれていく。おりしも当地にはコレラの嵐が吹き荒れて……。『魔の山』で著名なトーマス・マンの思索と物語性が生きた、衝撃の新訳。

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ヴェネツィアに死す のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    20世紀初頭のミュンヘン。著名な作家グスタフ・フォン・アッシェンバッハは、執筆に疲れてあることがきっかけで旅への憧憬をかきたてられる。いったんアドリア海沿岸の保養地に出かけたが、嫌気がさしてヴェネツィアに足を向ける。ホテルには長期滞在している上流階級のポーランド人家族がおり、その10代はじめと思われる息子タジオの美しさにアッシェンバッハは魅せられてしまう。

     映画でストーリーを知る者が多いので、粗筋はいまさら蛇足かもしれない。

     原作を読んでみると、タジオに逢うまでに若干溜めがある。まず彼はミュンヘンで、異様な風采の男を見かけて後を着けている。ちなみに美少年の類ではない。容貌の描写が続くが、むしろ逆である。目が合ってしまいその場を去るが、その時アッシェンバッハに起こったのは
    「ある種のあてどなくさまよう不安、若々しく飢えた異郷への渇望、それは実に活発で、実に新鮮なのに、とっくの昔に捨て去って忘れ果てた感情」

    これだけでは何のことかわからないのでもう少し続けると
    「それは旅への欲求だった。それ以上ではなかったが、実に発作的に現れ、情熱となり、幻覚にまで高まった。」

    とある。要は、“そうだ、京都、いこう”の類―旅への郷愁である。

     著名な作家なので旅行費用はある。問題は彼の心情にあった。
    「人生がゆっくりと傾き始め、完成できないという芸術家としての恐れ―自分の仕事を果たし、完全に自分を出し尽くす前に時計が止まってしまうのではないかという心配が、単なる気まぐれとして、もはや払いのけることができなくなっ」

    たから、故郷の街を一歩たりとも離れる事は考えていなかった。そんなに苦しい思いから逃れればいいのではないか、と第三者は思うが
    「自分のしぶとく誇り高い、繰り返し実証されてきた意思の力と、次第に募ってくるこの疲労感との間の、神経を磨り減らす日々新たな戦いも嫌ではなかった。この疲労感は人に知られてはならなかったし、作品に淀みや弛みが現れて人に悟られてもならなかった。」

    生みの苦しみもまた人生に必要であった。
    その均衡を破ったのが、特に美しくもない男性との出会いだったが、その旅先に―後に危険になる―留まることになったのは、間違いなく美少年との出会いであった。

     文中にもはっきりタジオへの愛が述べられているが、直接告げることはない。また、いずれ彼の美が失われることも、アッシェンバッハはわかっているし、彼自身の美が完璧でないこともわかっている。映画では、タジオに一目ぼれし、何もかもわからなくなっている状態で、ただただ逃げ遅れて亡くなる、という印象だったが、原作ではもう少し理性的であった。なぜなら彼についての散文を書いているからだ。作家であることに満足し、時に苦しみながらも、最後はやはり書くことに戻ってきた、というのは作家の生涯としては幸福だったように思われる。

    0
    2026年01月19日

    Posted by ブクログ

    懸命な仕事ぶりで多大な業績をあげた初老の芸術家が、保養先で美少年に出会い、恋に落ちていく様子を描く。それまでの人生からすればまるで逆の生き方、すなわち欲望のままに生き、堕落して行くさまはデカダンスと言えるが、一方で人間らしくまっすぐな生き方であるとも言える。一貫してゆったりとした調子で物語は進んでいくが、その結末はあまりにも甘く、悲しい。

    0
    2013年10月30日

    Posted by ブクログ

    だいぶ前に読んだので,詳しくは覚えていません。
    もう一度読み直したら、書き直します。

    トーマスマンで読んだ記憶があるのはこの本だけかも。

    0
    2011年12月20日

    Posted by ブクログ

    情景描写がとにかく綺麗。目に浮かぶ景色だけで癒される。好き。心情描写も綺麗で癒される。とにかく作品全体が癒し。

    0
    2022年06月22日

    Posted by ブクログ

    トーマス・マンの傑作。
    20代の頃は、若者に恋する年寄りって、身の程知らずだし醜いよなぁと思っていたけど、30代になって、少し気持ちがわかる。
    若い身体、美しさってそれだけですごく輝いていて(まじで光輝いてる)、眩しくて、憧れてしまうし、自分の若い時代を振り返り、みすみす無駄にしたと悔やんでしまうものだ。

    きっともっとしわくちゃになれば、更に思うのだろう。

    最近、老いを受け入れる等の考えが急に増えているし、30代でも若いと言われ、公共交通機関を見渡すと、確かに40代以上ばかりで、さすが高齢化社会だと思うことも多いが、反面トルコに行って、若い人の多さに驚いた。
    若い、というだけでエネルギーが溢れ出し、醜いものはそれなりに、それなりなものは美しく、美しいものはカリスマのように輝いてみえる。

    何が言いたいか分からなくなってきたけど、恋焦がれて、最後にスペイン風邪かなんかで死んでしまう小説家は、幸せだったのかだけを判断したい。
    最後に強烈な生を愛することができ、幸せだったと思いたい。

    0
    2021年12月12日

    Posted by ブクログ

    人生で一番難しい本な気がする……
    正直途中わけわからんくなりながら、ページ進めてた(´・ω・`)
    しかし、トーマス・マン研究の方の授業で『魔の山』のレポートを一ページも読まずに書いて提出した自分を思い出してしまい、若いとは何と恥知らずで痛々しいことか……(人生で一番反省してます)

    0
    2020年07月01日

    Posted by ブクログ

    面白みのある作品ではないが、魅力的である。美少年に対する想いが延々と綴られるので、若干人を選ぶ本ではある。映画のほうが良いかもしれない。訳者別に読み比べる価値はある。

    0
    2013年05月21日

    Posted by ブクログ

    濃厚な死の気配。
    老作家、アッシェンバッハを魅了して止まなかった青白い顔をした美少年タッジオ。彼は、性別や生死をも超越したような存在に思えた。

    0
    2011年11月23日

    Posted by ブクログ

    これは…なんというか…おお…(せんりつ)。
    圧倒的な耽美と官能と退廃に酔います。
    指先ひとつ触れないのに、瞳しか見てないのに、しっかりうしろぐらいエロスが存在するんだもの。
    古びるなんてとんでもない、これぞ古典と言うべきなのでは。
    ずっと読みたい読みたいとは思ってたんだけど、読んでよかった!

    0
    2009年10月07日

    Posted by ブクログ

    劇的で美しくて破滅的で準古典ならではの明快さ。題材には時代を感じるけどこの美しさは普遍だと思う。ってか個人的にこういうお話は大好き。
    新訳読みやすかった!でもなんとなく味がなくてさっぱりした感じ。話はよく分かったから重厚な古い翻訳で読んでみたい。

    0
    2012年04月13日

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