語り手はウォール街の一角で法律事務所を営む年配の男。彼はターキーとニッパーズというあだ名の二人の筆耕と、ジンジャーナットというあだ名の雑用係の少年を雇っていたが、仕事が増えてきたために新たに代書人を雇い入れることにした。募集広告に応じてやってきたのは、バートルビーという名の、品はいいがどこか生気に欠けた青年。彼は、当初は非凡な量の筆耕をこなしていたが、しかしあるとき所長に呼びかけられて、書き写したものの点検のための口述を頼まれると、「せずにすめばありがたいのですが」とだけ言って再三の頼みを拒否する。ウォール街の法律事務所で雇った寡黙な男バートルビーは、決まった仕事以外の用を言いつけると「そうしない方がいいと思います(I would prefer not to)」と言い、一切を拒絶する。彼の拒絶はさらに酷くなっていき。
最初「なぜバートルビーは働かなくなったのか」と不思議に思ったが、読み進めるうちに、単なる変わり者の話ではなく、現代社会にも通じる作品だと感じた。特に印象に残ったのは、「しない方がいいのですが(I would prefer not to.)」という言葉。彼は怒ったり暴れたりせず、静かに仕事を拒否する。その態度は社会の「働くのが当然」という価値観に疑問を投げかけているようだ。また、他の書記たちも仕事によって疲弊していた。「社会不適応者」の話というより、機械的な労働が人間を追い詰めていく物語だと感じた。⑤