【感想・ネタバレ】書記バートルビー/漂流船のレビュー

あらすじ

ウォール街の法律事務所で雇った寡黙な男は、決まった仕事以外の用を言いつけると「そうしない方がいいと思います」と言って一切を拒絶するのだった。男の不可解な振る舞いを通して社会の闇を抉る「書記バートルビー」。アメリカのアザラシ猟船の船長デラーノは、遭難同然のスペインの奴隷運搬船を発見する。嫌な予感を抱きつつ支援を申し出るが……劇的な展開が待ち受ける傑作「漂流船」。アメリカ最大の文豪の代表的中篇2篇。

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バートルビーだけ読んだ。
「そうしない方がいいと思います」

バートルビーは一般社会の人間からするととてもおかしな人に見えるけど、本当にそうなのかなあと考えたり、雇い主である語り手のバートルビーに対する態度が複雑で、でも分かる気がする感じがしたり。届かなかった手紙を処分する郵便配達人だった過去も意味深。喜劇要素が絶妙で、どんどん読めてしまう。

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2024年06月02日

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雇い主の弁護士の善意も常識もまったく通じないバートルビー。こんな人物が現実に現れたら、私も翻弄され、ただ腹を立てるだろう。人間社会のルールに従わないと、生きる権利を失う世の中。説明可能な言動以外は許されない。人間が常日頃、いかに四角四面の生き方を強いられているかを実感した。

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2022年01月14日

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これは面白かった。バートルビーのおよそ理解できない行為。バートルビーを許すどころか助けようとする雇用主。同僚たちの奇行。謎解きのように語られる過去。それでも理解は進まない。こんな不可解な話なのに先を読まずにいられない。
漂流船は実話にもとずく作品だが、巧妙に仕掛けられた作者の罠によって、疑心暗鬼を深める。そして最後のどんでん返し。やられました。

原題:BARTLEBY,THE SCRIVENER/BENITO CERENO

書記バートルビーーウオール街の物語
漂流船ーべニート・セラーノ

著者:ハーマン・メルヴィル(Melville, Herman, 1819-1891、アメリカ・ニューヨーク、小説家)
訳者:牧野有通(1943-、アメリカ文学)

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2019年10月31日

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両作品ともミステリー仕立てのように読んでみると面白いと思う。特に書記バートルビー。不条理の世界に生きているかのように描かれるバートルビーだが、実はこの世の中そのものが不条理であったのだという真実が明かされるのが鮮やかだと感じた。

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2017年07月08日

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語り手はウォール街の一角で法律事務所を営む年配の男。彼はターキーとニッパーズというあだ名の二人の筆耕と、ジンジャーナットというあだ名の雑用係の少年を雇っていたが、仕事が増えてきたために新たに代書人を雇い入れることにした。募集広告に応じてやってきたのは、バートルビーという名の、品はいいがどこか生気に欠けた青年。彼は、当初は非凡な量の筆耕をこなしていたが、しかしあるとき所長に呼びかけられて、書き写したものの点検のための口述を頼まれると、「せずにすめばありがたいのですが」とだけ言って再三の頼みを拒否する。ウォール街の法律事務所で雇った寡黙な男バートルビーは、決まった仕事以外の用を言いつけると「そうしない方がいいと思います(I would prefer not to)」と言い、一切を拒絶する。彼の拒絶はさらに酷くなっていき。

 大した仕事ではないのだから、やってあげればいいじゃない。読んだ当初は思っていたが、実はバートルビーの対応も、そんなに変ではないのでは?と思えてくるから不思議である。なぜなら、できる事ならあれもこれも、と言い出して、サービス残業はできたのかもしれない。但し、拒否することにに命まで賭ける意味があるかどうかはわからない。バートルビーの拒否が不条理なのか。何でもはいはい受け入れるのが道理と考える社会が不条理なのか。

「漂流船」
港に停泊している船が漂流船を見つけ、船長が乗り込んで水や食料の援助を申し出る。漂流船の船長は申し出を受け入れるが、事情を聴いてもはっきりしない。黒人の従僕がか弱そうな船長の面倒を見て、二人で時々ひそひそ話をしている。船には黒人や白人の乗組員、子供をあやす黒人の女も乗っている。船長の話では、スペイン人と黒人が乗っていたが暴風や疫病で相当な人員を失ったということである。だがそれは本当か?というミステリ&ホラー。

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2025年10月22日

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ネタバレ

著者のメルヴィルさんは、1819年、NYで生まれ、ここに収められた2つの作品は、代表作『白鯨』(1851)のあと、「書記バートルビー」(1853)、漂流船(1955)ー30代前半に、書かれたそうです。

時代設定が気になるので、解説を少し見てから読む。

1953年とは、ペリー来航の年だ。アメリカは、建国からどれぐらい発展してたのだろう。

トクヴィルの本は、出版は1935年だ。リンカーン大統領の奴隷解放宣言は1863年。

_かくして「漂流船」という作品は、南北戦争直前の時期に出版されていながら、奴隷制の本質をすこしの弛緩もなく描いているだけでなく、一般の白人層には直接的に反発させないだけの仮装劇として提示されているのである。「書記バートルビー」と「漂流船」。メルヴィルは、すでに十九世紀中葉の段階で、不条理演劇や内的独白、そして通時的時間の破綻の手法などを駆使して、同時代の白人社会の現実や、複雑怪奇な人間の心理を妥協なく描き出そうとしている。ー「解説」(牧野有通)より

1891年に亡くなられた際はほとんど無名だったメルヴィル。再評価され始めたのは1920年代らしい。

たしかに内容は、怪奇というかなんというか、娯楽として単純に楽しめるものではない。『白鯨』を読んでいないけれど、小説に出てくる象徴的なキャラクターや設定を通して、社会を皮肉にも映し出す、ブラックユーモア的なもの。

時代も国も違う分、細かい比喩が出てきたときは、え、何のこと?全然分からん!というのもあるけれど、それもまあ、雰囲気を味わうことに。

「書記バートルビー」

バートルビーの対処に迫られつつも、なかなか切り離せない状況に陥る、ウォール街でうまくやっている弁護士。たしかにどんどんゾンビ的になっていくバートルビーの存在は、彼の幻覚的にも感じてくる。当たり前、を、ぶち壊してくる声。150年以上たった私たちの社会でも、まだバートルビーの幻影に付きまとわれている人はいなくないんじゃないかと。資本主義はさらに加速して広がっているのかもしれない。でも隙間も探せば色々と出てきているに違いない。それに絡み取られて、うまく生きれたり、厄介なバートルビーに悩まされたり。隙間を見つけて生きていたり、隙間でなかなか大変な思いをしていたり。なんだか脱線してきたけれども、「~しない方がいいと思います」の不穏な響きはいったん読んだら消えないですね。

ある種、機械的に発せられるような、すでに答えが分かり切ってる感と、そんなはっきりとした答えへの期待感は、今の時代の相談系のYouTuberの高需要な今の風潮と重なる…

「あなたはその理由をご自分でおわかりにならないのですか」

自分で考えるより、出してもらった答えに従うほうが楽だしすっきりするし、

でもこの弁護士は、自分ではたと思いついたみたいですね、その理由を。自身の常識内で考え付いたことを。

「漂流船」

もともとこちらは全く知らずに読むことにしたのですが、

わりと強烈でした。ミステリー、わたし的には。

こちらも、大部分が、語りのデラーノ船長の視野で、思考解釈内で、話が描かれていって、

最後に謎が明かされる、証言抄本(供述書)がある。この設定、「ザリガニの鳴くところ」でもあったのを思い出す。アメリカ…昔からなんだね。

西アフリカから、南米、北米… 具体的に、セネガルやアシャンティ王国、チリなど、出てくる。本当にあった奴隷船での反乱の記録が、実在のアメイサ・デラーノ船長によって出版された『公開及び旅行記実録』(1817)に掲載されているらしく、それをもとにさらに小説として構想を深めて作品にされたらしい。

カナダの歴史を学んだ時の黒人奴隷の話とか、難しかったなーと思い出し、

まさに、講義の課題教材になりうる内容では、と思いながら読んだ。

ぜんぜん想像を絶する状況があったんだろうなー。普通なら知らないままだな。

小説すごいね。

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2025年05月31日

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メルヴィルと言えば白鯨。書記バートルビーは初読。
仕事はできるのに、一切を拒絶するバートルビー。生きることさえ拒絶し餓死する。不条理がおもしろい。

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2021年12月18日

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こんな人いたら嫌だ。でも結構近しい人って仕事してると見かけるし、自分も他人からするとそうかもしれない。
バートルビーは結局何を求めていたんだろう??

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2021年12月13日

Posted by ブクログ

ブンガク
かかった時間 たぶん180分かそれ以上

さいきん、『文学こそ最高の教養である』という新書を読んでいる。光文社古典新訳文庫の編集者が、各作品の翻訳者と行った対談を書籍化したものだ。

せっかくなので、その中からいくつか気になるものを買って読んでみることにした。そのひとつが本作品。

メルヴィル、知らなかったけど、ものすごく謎が多くて、ホラー?サスペンス?だ。あ、ミステリーか?(違いがわからん)

書記バートルビーは、表面的には今でいうコミュ障の話として読むこともできるが、翻訳者の力で「それだけではない」感が残る。語り手の弁護士自体もそうだが、全体的に奇妙。そして、「お分かりにならないのですか」のくだりはやっぱりゾッとした。
不思議なチカラは覗くことで効力を失う、というモチーフも印象的だ。あと壁ってなに?先のない資本主義?(適当) …みたいに、再読すると解釈がまだできそう。

漂流船は、まじでミステリー。キングオブ「信頼できない語り手」が語り手となって話が進むが、それが功を奏しているとか、それでも「奇妙さ」を全部キャッチしてるのはすごくないか、とか、あとがきに書いていたけどベニートはほんとうに「被害者」なのか、とか、これもいろいろ考えられそう。

ちょっとこれ、次は「白鯨」ですかね…
(※追記 「白鯨」は長かったので購入を延期…笑)

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2020年08月15日

Posted by ブクログ

バートルビーは、主人公の心の広さや葛藤が細やかに描かれており、感情移入ができます。結果のところバートルビーがなぜ頑なのかはわからないままではあるが、読み手の感情を揺さぶる人物であることは間違いなく、作者の意図にまんまとかかってしまいます。
漂流船は、なんだか方向感がない展開でめんどくさくなって読み飛ばしました。ミステリーだったんですね。展開次第ではもっと魅力的な作品になりそうな題材ですが話の筋に関係ない部分が多く注意散漫になってしまいました。

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2022年03月13日

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