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「牧野有通」の「書記バートルビー/漂流船」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「牧野有通」の「書記バートルビー/漂流船」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
とりあえず『書記バートルビー』のみ。
読後しばらく「そうしない方がいいと思います」が頭のなかでずっとリフレインすることになる……
前評判で「元気のないときに読まない方がいい」と聞いていたので、起床したての時間に読んだ。夕飯の薬味を刻みながら呆然と考えていたとりとめのない感想を書いてみたい。
バートルビーは、百語につき4セントの写字の仕事をするために語り手の弁護士「私」に雇われている。
歩合制なのだから、それ以外はバートルビーの本来の仕事ではない。
だから「私」が仕事が急を要する時に文書の照合を手伝わせようとしたときに、バートルビーが「そうしないほうがいいと思います」といって断るのは、そこまでおかしなことではない。
いくらその作業がこの職場の慣習だとしても、バートルビーの仕事ではない。
ここまではいい。
しかし、バートルビーは次第に、色んなことを「そうしない方がいいと思います」と言ってやめていく。
仕事をしなくなったバートルビーは解雇されるが、職場から出ていくことも「しない方がいいと思います」とやめてしまう。
最終的にバートルビーは警察沙汰となり刑務所にいれられ、そこでとうとう食べることさえやめて死ぬのだ。
空虚なバートルビーは社会の不条理に対する「抵抗」が人間の皮を被ったような存在である。
社会は不条理で溢れている。歩合制なのに慣習だからといって求人票にない仕事をしたり、わざわざ通勤して、給料も発生しないのに他人と雑談するのである。
理不尽に刑務所に入られたとしても、そこで食事をするのである。
でもバートルビーはそれらすべてを「そうしない方がいいと思います」と言ってやめてしまう。
社会がなんとなくやり過ごし曖昧にするものすべてに対し、徹底的に抵抗する。彼が自由意思により「しないほうがいいと思」ったものはやらないのである。恐るべき言行一致である。
なるほど、おかしいのは曖昧にやり過ごしてしまう我々であり、本当に人間の生を生きたのはバートルビーだったのかもしれない。
ラストの「ああ、バートルビー!ああ、人間の生よ!」という「私」の言葉はそういう風に捉えるべきなのだろうか。
バートルビーの死は社会の不条理さに対する殉死、というのは言いすぎだろうか。
色々書いてみたが、手からこぼれ落ちる砂のように考えても考えてもうまく掴めなかったが、そこがまたこの作品の魅力である。面白かった。
またいつか再読してみたい。
Posted by ブクログ
「書記バートルビー」
1853年に発表された作品なのに、現代人である我々にも落ち着かない読後感を齎す普遍性を持つ作品。資本主義の価値観と距離を置く読み手にはバートルビーの「そうしない方がいいと思います」という静かな抵抗や、その後の一切の拒絶に、少なからず共感を抱くのではないだろうか。最後にある“配達不能郵便物”というメタファーは、バートルビーが届ける言葉の宛先を失った存在だと示唆しているのと同時に我々自身も世界と切り離された希薄な存在であるということを突き付けてくる。
「漂流船」
アメリカ人のデラーノ船長を視点人物にしてサンタ・マリア島の沖合に漂流してきたスペインの奴隷船「サン・ドミニク号」に乗り込み、その船長ベニート・セレーノを中心人物としてサスペンスタッチで描く。白人至上主義的な価値観が強い当時に奴隷制度批判を忍ばせた本作はデラーノ船長の黒人に対しての愚鈍なまでの認識を皮肉っているだけでなく、ベニートが受けた傷がそのまま黒人が受けた傷であるという皮肉も描いており、作者の社会に対する鋭い批評眼を感じさせられる。
Posted by ブクログ
これは面白かった。バートルビーのおよそ理解できない行為。バートルビーを許すどころか助けようとする雇用主。同僚たちの奇行。謎解きのように語られる過去。それでも理解は進まない。こんな不可解な話なのに先を読まずにいられない。
漂流船は実話にもとずく作品だが、巧妙に仕掛けられた作者の罠によって、疑心暗鬼を深める。そして最後のどんでん返し。やられました。
原題:BARTLEBY,THE SCRIVENER/BENITO CERENO
書記バートルビーーウオール街の物語
漂流船ーべニート・セラーノ
著者:ハーマン・メルヴィル(Melville, Herman, 1819-1891、アメリカ・ニューヨーク、小説家)
訳者:牧野有通(1943-、アメリカ文学)