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  • 書記バートルビー/漂流船

    書記バートルビー/漂流船

    小説・文芸

    4.1
    1巻1,100円 (税込)
    ウォール街の法律事務所で雇った寡黙な男は、決まった仕事以外の用を言いつけると「そうしない方がいいと思います」と言って一切を拒絶するのだった。男の不可解な振る舞いを通して社会の闇を抉る「書記バートルビー」。アメリカのアザラシ猟船の船長デラーノは、遭難同然のスペインの奴隷運搬船を発見する。嫌な予感を抱きつつ支援を申し出るが……劇的な展開が待ち受ける傑作「漂流船」。アメリカ最大の文豪の代表的中篇2篇。

ユーザーレビュー

  • 書記バートルビー/漂流船

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    とりあえず『書記バートルビー』のみ。
    読後しばらく「そうしない方がいいと思います」が頭のなかでずっとリフレインすることになる……
    前評判で「元気のないときに読まない方がいい」と聞いていたので、起床したての時間に読んだ。夕飯の薬味を刻みながら呆然と考えていたとりとめのない感想を書いてみたい。

    バートルビーは、百語につき4セントの写字の仕事をするために語り手の弁護士「私」に雇われている。
    歩合制なのだから、それ以外はバートルビーの本来の仕事ではない。
    だから「私」が仕事が急を要する時に文書の照合を手伝わせようとしたときに、バートルビーが「そうしないほうがいいと思います」といって断るのは、そこまでおかしなことではない。
    いくらその作業がこの職場の慣習だとしても、バートルビーの仕事ではない。

    ここまではいい。

    しかし、バートルビーは次第に、色んなことを「そうしない方がいいと思います」と言ってやめていく。
    仕事をしなくなったバートルビーは解雇されるが、職場から出ていくことも「しない方がいいと思います」とやめてしまう。
    最終的にバートルビーは警察沙汰となり刑務所にいれられ、そこでとうとう食べることさえやめて死ぬのだ。

    空虚なバートルビーは社会の不条理に対する「抵抗」が人間の皮を被ったような存在である。
    社会は不条理で溢れている。歩合制なのに慣習だからといって求人票にない仕事をしたり、わざわざ通勤して、給料も発生しないのに他人と雑談するのである。
    理不尽に刑務所に入られたとしても、そこで食事をするのである。

    でもバートルビーはそれらすべてを「そうしない方がいいと思います」と言ってやめてしまう。
    社会がなんとなくやり過ごし曖昧にするものすべてに対し、徹底的に抵抗する。彼が自由意思により「しないほうがいいと思」ったものはやらないのである。恐るべき言行一致である。

    なるほど、おかしいのは曖昧にやり過ごしてしまう我々であり、本当に人間の生を生きたのはバートルビーだったのかもしれない。
    ラストの「ああ、バートルビー!ああ、人間の生よ!」という「私」の言葉はそういう風に捉えるべきなのだろうか。
    バートルビーの死は社会の不条理さに対する殉死、というのは言いすぎだろうか。

    色々書いてみたが、手からこぼれ落ちる砂のように考えても考えてもうまく掴めなかったが、そこがまたこの作品の魅力である。面白かった。
    またいつか再読してみたい。



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    2026年07月12日
  • 書記バートルビー/漂流船

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    最初「なぜバートルビーは働かなくなったのか」と不思議に思ったが、読み進めるうちに、単なる変わり者の話ではなく、現代社会にも通じる作品だと感じた。特に印象に残ったのは、「しない方がいいのですが(I would prefer not to.)」という言葉。彼は怒ったり暴れたりせず、静かに仕事を拒否する。その態度は社会の「働くのが当然」という価値観に疑問を投げかけているようだ。また、他の書記たちも仕事によって疲弊していた。「社会不適応者」の話というより、機械的な労働が人間を追い詰めていく物語だと感じた。⑤

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    2026年05月30日
  • 書記バートルビー/漂流船

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「書記バートルビー」
    1853年に発表された作品なのに、現代人である我々にも落ち着かない読後感を齎す普遍性を持つ作品。資本主義の価値観と距離を置く読み手にはバートルビーの「そうしない方がいいと思います」という静かな抵抗や、その後の一切の拒絶に、少なからず共感を抱くのではないだろうか。最後にある“配達不能郵便物”というメタファーは、バートルビーが届ける言葉の宛先を失った存在だと示唆しているのと同時に我々自身も世界と切り離された希薄な存在であるということを突き付けてくる。

    「漂流船」
    アメリカ人のデラーノ船長を視点人物にしてサンタ・マリア島の沖合に漂流してきたスペインの奴隷船「サン・ドミニク号」に乗り込み、その船長ベニート・セレーノを中心人物としてサスペンスタッチで描く。白人至上主義的な価値観が強い当時に奴隷制度批判を忍ばせた本作はデラーノ船長の黒人に対しての愚鈍なまでの認識を皮肉っているだけでなく、ベニートが受けた傷がそのまま黒人が受けた傷であるという皮肉も描いており、作者の社会に対する鋭い批評眼を感じさせられる。

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    2026年01月05日
  • 書記バートルビー/漂流船

    Posted by ブクログ

    雇い主の弁護士の善意も常識もまったく通じないバートルビー。こんな人物が現実に現れたら、私も翻弄され、ただ腹を立てるだろう。人間社会のルールに従わないと、生きる権利を失う世の中。説明可能な言動以外は許されない。人間が常日頃、いかに四角四面の生き方を強いられているかを実感した。

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    2022年01月14日
  • 書記バートルビー/漂流船

    Posted by ブクログ

    これは面白かった。バートルビーのおよそ理解できない行為。バートルビーを許すどころか助けようとする雇用主。同僚たちの奇行。謎解きのように語られる過去。それでも理解は進まない。こんな不可解な話なのに先を読まずにいられない。
    漂流船は実話にもとずく作品だが、巧妙に仕掛けられた作者の罠によって、疑心暗鬼を深める。そして最後のどんでん返し。やられました。

    原題:BARTLEBY,THE SCRIVENER/BENITO CERENO

    書記バートルビーーウオール街の物語
    漂流船ーべニート・セラーノ

    著者:ハーマン・メルヴィル(Melville, Herman, 1819-1891、アメリカ・ニューヨーク、小説家)
    訳者:牧野有通(1943-、アメリカ文学)

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    2019年10月31日

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