「対人関係入門」と銘打たれてますが、より普遍的に、自己受容ができず苦しむ多くの方々にとって考え方が変わるきっかけになり得る本だと思います。
人間関係で生じる負の感情はストレスを知らせてくれる「心の安全センサー」であり、それを隠さず言葉でしっかり伝えお互いに相手への期待を現実的なものに妥協していくことで、ストレスを小さくできる。しかし自己受容ができていないとこの「隠さず言葉で伝える」のがなかなか難しいのは自分も痛感しているところです。
この本はそんな状況の人に寄りそいながら、人と関係を築くという行為の正体を平易な言葉と身近な例で示してくれます。
・相手から現実的に不可能だったりやりたくない役割を求められたらストレスに。「相手の期待する役割にどこまで応えたいか」考え、「言葉」で相手に伝えることが重要。
・自分に自信がないとやりがちな「遠回し」「あいまい」「沈黙」などの伝え方がズレを広げる。
・相対的に相手が完璧な人間だと思うため、伝え方があいまいでも「相手に意図が伝わった」と思い込みズレが加速する。
・「自分を主観的に自己評価を下しそれを他人に押し付ける」伝え方で相手の反応を制限しそれが相手の負担になる。
などなど、様々な例から、ありのままの自分を認めそれを相手に伝えることの大事さが見えてきます。
そしてズレを広げないための伝え方についても、
・「今の感情や意図」をくっつけて話して相手の反応を束縛しない。
・「言い訳+言いたいこと」で相手の期待に応えられないことを現実的に伝える。
・ぐちを言うことで溜め込まないのは大事だが、特に身近な「重要な他人」に話す。
・「怒り=自分が困った状況に置かれている」合図と考える
などなど、自己表現が苦手な人なりに実践しやすい方法を紹介してくれています。
個人的には「性格は変えられず」「行動は変えられる」という考え方が、言われてみると当たり前ながらあまり自分の中になかった視点でハッとしました。
「他人から何かを否定されてもあくまで対象は言動であり自分自身が否定されたわけではない」
「相手に性格まで変わってもらおうという期待は無駄だが行動を変えてもらおうという期待は成就しやすい」
という2つの事実を説明するもので、相手と自分への期待を現実的に妥協していくうえで大事な考え方だと思いました。
総じて、人生におけるストレス発生要因の多くを占める「対人関係」の仕組みを学びながら、自分の現状も負の感情もひっくるめて全て「当然だ、それでいい」と受け入れられるきっかけになるかもしれない、自分から一歩引いた視点をもたらしてくれた本だと思います。おすすめです。