海外ミステリー - グーテンベルク21作品一覧

  • 夜歩く
    5.0
    カーの処女作。「私にとって単調で退屈ということは許されざる罪悪」というカーは、本書に対する自信のほどをのぞかせて、こう言う。「神経質な読者に悪夢をもたらし、パズルの玄人(くろうと)に頭痛をおこさせれば、私は満足だ」本書『夜歩く』は成功を収め、カーは職業作家として立つ。彼は別の機会に書いた。「私の野心は今もなお真に傑出した推理小説を書くことであるが、いまだに達成したとは正直、思わない。作家がこう述べるとき、その本音はほかのすべての推理小説がつまらないものに見えるような傑作をものしたいということである。無論、それは不可能だ。しかし、いつまでも試みつづけることはできる」
  • 埋められた時計
    5.0
    第二次大戦に戦傷を負って帰還した青年ハーリーは、恋人アデールの運転するクーペに揺られて、南カリフォルニア山中にある彼女の別荘へと赴いた。明るい太陽と澄んだ山の空気は、なまなましい戦闘の記憶に暗くなりがちのハーリーの心に、元気と希望を与えてくれた。が、ふと別荘ちかくの落葉の中に身を横たえた彼は、あたりの静寂を破って音高くひびく時計の音にびっくりする。ブリキの箱に入った目覚し時計が、地中に埋められていたのである……。銀行の金を使いこみ、なお多額の金を持ち去った親戚の男の死に絡んで、カリフォルニア山中に展開される不気味な殺人事件。メイスン、デラ、私立探偵ポール・ドレイクのトリオが活躍する、スピーディな傑作ミステリ。
  • 餌のついた釣り針
    5.0
    メイスンの自宅の電話が鳴り、至急依頼したいことがあると言う。メイスンは興味をおぼえ、嵐をついて事務所に急行した……電話の主が現われたが、その依頼内容は奇妙なものだった。同行した女性の代理人になる約束をしてほしい、ただし彼女の正体は明かせないというのである。その女性を見たメイスンは驚いた。黒いレインコートと帽子で身を隠したうえ、顔にも仮面をつけている。身許はおろか顔すらわからない依頼人……雲をつかむような話にさすがのメイスンも困惑する…
  • 偽証するオウム
    5.0
    その日の新聞は、億万長者セイビン殺害事件の記事で埋まっていた。物とりではなかった。札のつまった紙入れも宝石類も奪われていず、死体のかたわらには、彼がいつも身辺から離したことのない愛玩用のオウムが、すさまじい叫びをあげて人を呼んでいたという……。メイスンは、セイビンの息子チャールズの訪問を受ける。セイビンの莫大な遺産をめぐって、義母のヘレンと連れ子のスティーヴが何か策謀をめぐらしている。事件の真相を調査するとともに、二人の狙いを探りだして自分の権利を守ってほしいという。メイスンに、チャールズは二つの事実を打ち明けた。そのうちの一つは、死体のそばにいたオウムが、セイビンのかわいがっていたのとはちがうオウムであることだった……シリーズ初期の傑作。
  • セントラル・パーク事件
    5.0
    カメラマンのビンゴと助手ハンサムは、ニューヨークの街頭写真師だ。通行人や旅行者の写真を撮ってカードを渡し、25セントを送ってきた客にできた写真を送るのが商売。ハンサムは背が高く二枚目で、ご婦人方にもて、そのうえ、新聞に出ていることならなんでも憶えているという超人的な記憶の持ち主。その日も、二人は、セントラル・パークで、観光客相手に写真を撮っていた。7年前、公園の名物男ピジョン氏が、五十万ドルの生命保険をかけたまま謎の失踪を遂げたところだ。「ピジョン氏が失踪したその場所で撮ったあなたのお写真、すばらしい記念品になります」そう言ってカードを差し出すと、だれもが受けとった。商売は上々だった。だがその夜、暗室で昼間の写真を引き伸ばしていたハンサムは、笑っている男女を撮った写真の背後に、あのピジョン氏が写っているのを発見した!

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  • ウィンター殺人事件
    5.0
    熱心に話しこんでいる途中で、ヴァンスはチラッと、背後へ眼をはしらせた。…部屋の戸口に、当家の執事、ヒギンズが立っていた。顔は白墨のように血の気がない。にごった老眼を大きくみひらいている。…「ああ! 助かりました。ヴァンスさま、よくいてくださいました! リチャードさまのおすがたが見あたりません! なにか恐ろしいことでも…」言うなりヒギンズは、すばやく大階段を、レクスンの書斎のほうへ登っていった。書斎の、暖炉をまえにした床の上に、レクスン家の当主、カリントン・レクスンが倒れていた。……第二の殺人だった!

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  • 死の招待
    5.0
    パーティの企画者ベス・ハドルストンが持参したのは、差出人不明の脅迫じみた内容の手紙だった。「ただの相談ですか、それとも仕事の依頼ですか?」ウルフは言った(死の招待)。第二次世界大戦のさなか、ウルフは探偵仕事を犠牲にして陸軍情報部に働いている。そしてアーチーはなんと陸軍少佐に出世! 戦時下の軍事にからむ事件勃発(ブービー・トラップ)。ネロ・ウルフ傑作中編2作を収録。

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  • 黒い蘭
    5.0
    フラワー・ショウに出品された三鉢の「黒い蘭」…ウルフの羨望と好奇心はついにクライマックスに達した(黒い蘭)。ウルフのお気に入りの靴みがきが、殺人の嫌疑をかけられたまま墜死する。父の潔白を証明したいという娘の願いを入れてウルフは真相究明に乗り出す(殺しはツケで)。ネロ・ウルフ傑作中編2作を収録。

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  • メグレと消えた死体
    5.0
    かつてメグレが逮捕したことのある売春婦エルネスティーヌがどんな風の吹きまわしかパリ警視庁を訪れて、メグレに面会を求めた。金庫破りで名を知られた彼女の亭主アルフレッドがパリ郊外のある屋敷に忍び込んだところ、そこで女の死体を見つけたので、何もとらずに逃げ出したというのである。しかも嫌疑を恐れたのかアルフレッドは姿をくらます。メグレはその家を訪れたが、死体は消えていた。しかも、屋敷の持ち主の歯科医とその母親は泥棒に入られたことも完全に否定した…

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  • マルタの鷹
    5.0
    誘拐された妹を取り戻してほしいと一人の女から依頼を受けたサム・スペードは、女の希望どおりに相棒のマイルズに一人の男の跡をつけさせる。だが、マイルズは射殺され、肝心の男も死体となって発見される。嫌疑をかけられたスペードは依頼主の女を追う…やがて明らかになる「マルタの鷹」と呼ばれる謎の彫像をめぐる血で血を洗う争奪戦…ハードボイルドの金字塔!

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  • 帽子蒐集狂事件
    5.0
    「不可解な謎とその合理的な解決」を信条としたディクスン・カーの本格ミステリーの代表作のひとつ。舞台は陰惨な伝説にみちみちたロンドン塔、その中の、そのむかし反逆者が夜、テムズ川から船に乗せられてこの塔に収容されるときに使われた逆賊門(トレイターズ・ゲート)で、殺人は起こる。濃霧につつまれたなか、昼なお暗いその構内に、シルクハット!をかぶり、中世の鉄矢で背中を射られた死体が発見されるのだ。

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  • 僧正殺人事件
    5.0
    数学者ディラード教授邸の弓場で、コック・ロビンという弓術選手が胸に矢を射られて死んでいた。捜査協力を頼まれたファイロ・ヴァンスは直ちに「コック・ロビンを殺したの、だあれ」というマザー・グース童謡を思い浮かべた。つづいて起きた第二、第三の殺人もみな、この童謡をなぞっていた。ヴァン・ダインの代表傑作。

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  • おしどり探偵(1)
    5.0
    トミーとタペンスという若夫婦が〈国際探偵事務所〉という素人探偵事務所を開設する。二人の唯一の強みは、これまでの探偵小説を全部読破していて、各探偵の探偵術を記憶していることだ。彼らは名探偵の誰かのやり方を頭に浮かべながら、事件の解決に乗り出す。茶目っ気たっぷりのクリスティの面目躍如。ここには8編をおさめた。

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  • ナイルに死す
    5.0
    ハネムーンをエジプトに決めた大富豪の娘リンネットは、ナイル河の遊覧船で気持ちよい風を楽しんでいた。だが、そこには夫のかつての婚約者ジャクリ-ンの不気味な影が……はたして、乗り合わせたポワロの目の前でリンネットは殺される。そして殺人の連鎖反応。ジャクリーンにはむろん、文句なしのアリバイが……隔絶された船上を舞台にした難事件にいどむポワロ。
  • ヴォスパー号の喪失
    5.0
    ロンドン・ブエノスアイレス間を就航する貨物船ジェイン・ヴォスパー号が、謎の爆発によって沈没した。海事裁判が開かれ、原因と責任の所在が追及されるが、真相は謎であった。積荷の保険会社は私立探偵サットンに依頼し、保険金詐欺の確証を得ようとするが、サットンは無惨にも殺害される。捜査に乗り出したスコットランド・ヤードのフレンチ警部は、積荷のからくりとサットン殺害の秘密を追う。

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  • 管理人の飼い猫
    5.0
    ペリー・メイスンもの初期の名作。大富豪の別荘の管理人をしているアシュトンという老人が、主人の遺言書にもとづいて「飼い猫」を飼いつづけることができるかどうか相談に訪れる。メイスンの鋭い嗅覚は事件の匂いをかぎつける。行動派のメイスンは秘書デラを煙に巻き「ぼくの依頼主は飼い猫なのさ」と言いながら、独自の調査を開始する。

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  • 義眼殺人事件
    5.0
    依頼人は義眼の主だった。そして盗まれた自分の特注の「充血した義眼」が、凶悪犯に利用されでもしたら厄介なことになると恐れていた。メイスンは一計を案じる。だがその甲斐もなく、男の懸念は現実のものとなる……数あるメイスンものの中でも屈指の名作と折り紙つきの代表作。

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  • 吠える犬
    5.0
    隣家の犬が吠えて困る、隣の主人を逮捕してほしいと、奇妙な用件を持った男がメイスンの事務所に姿をあらわした。男は謎めいた遺言書をメイスンに託した直後、隣家の夫人と駆け落ちし、姿をくらました。謎は謎を生み、メイスンはしだいに窮地に追い込まれる。メイスン、デラ、ドレイク三人の活躍を描くガードナー初期の代表作であり、陪審員のあり方を示唆する問題作。

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  • 最後の悲劇
    5.0
    『X』『Y』『Z』に続く「悲劇シリーズ」四部作のフィナーレ。シェイクスピアにからむ稀覯書の奇妙な盗難事件は謎の古文書をめぐる怪異な事件へと展開。だがドルリー・レーン最後の決死のがんばりが事件を解決に。大構想四部作の最後を飾る感動にみちた名編。ある詩人いわく、「私はミステリーを愛好する一詩人にすぎないが、もし傑作ミステリーを問われたら、ちゅうちょなく答えるだろう……それは『X』でもなければ『Y』でもない、クイーンの四大悲劇をあつかった四部作であると、そして、なかんずく、『最後の悲劇』をあげるだろう」

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  • 奇巌城
    5.0
    深夜、ジェーブル伯爵の館に賊がはいる。二人の男が何かを持ち去る姿が目撃され、ついで格闘とうめき声が…伯爵の秘書が殺害され、逃げる三人めの男は傷つき逃走する。だが、逃げ場のないはずの邸内から、男は影も形もなく消えていた。これをルパンの犯行と見抜いたのは、新聞記者としてまぎれこんだ高校生のボートルレだった。ルパン対天才少年の戦いはノルマンディーのエトルタを舞台にクライマックスへ。ロマン香るルパンの名編。

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  • ガラスの鍵
    5.0
    市政を腐敗させるボス同士の争いの渦中におこった奇怪な殺人事件。害者は上院議員の息子であった。謎を解こうと奮闘する賭博者ネド・ボウモン……非情な世界を活写するハードボイルドの名作。作者ハメットが自作のうちでいちばん愛好するとのべた作品でもある。

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  • クリスティの六個の脳髄
    5.0
    エルキュール・ポワロ、ミス・マープル、トミーとタペンス、ハーリー・クィン、パーカー・パイン……「ミステリーの女王」クリスティが創造した6つの脳髄(探偵役)が、それぞれの待ち味を生かして活躍する軽い短編集。車内で、カフェで、アームチェアで読むのに好適の作品集。

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  • ポワロ登場! 1
    4.5
    ミステリの女王クリスティの創造したポワロものの面白さ、抜群の冴えは、短編でも遺憾なく発揮される。おなじみヘイスティングズとの絶妙なコンビのやり取りにも、各所でニヤリとさせられる。このシリーズには、6巻と7巻に重厚なポワロもの中編4編をくわえ、ポワロもの中短編全集といってもよいほど、ほとんどの作品を収めてある。
  • 花のない葬礼
    4.5
    【花のない葬礼】――ウルフの旧友マルコが事件を持ちこんだ。ソースつくりの名人でマルコの良師が、こともあろうに殺人犯にされているというのだ。【イースター・パレード】――ある富豪が世界で唯一の珍しい蘭を創った。その夫人がその蘭の花を身に飾り、イースターの日に教会へ出むくという。この噂を耳にしたウルフは突如「羨望の発作」をおこした。そして……2編の中編傑作。

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  • オリエント急行殺人事件
    4.5
    深夜に雪で立ち往生したオリエント急行の寝台車内で、アメリカの老人ラチェットが殺害された。たまたま乗り合わせたポワロはいち早く事件を知らされる。どう考えても乗り合わせた12人の乗客以外には犯人はありえなかった。一人また一人としらみつぶしに状況を聞く調査がはじまる。だが、それぞれの乗客のアリバイは完璧だった。外の世界と断絶した緊迫した状況の中、矛盾する刺し傷とともにポワロの灰色の脳細胞は悩みに悩む。クリスティの代表作。

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  • アクロイド殺人事件
    4.3
    小さな村の名士アクロイド氏は、書斎の椅子で何者かによって刺殺されていた。叔父の死にショックを受けた姪のフロラはたまたま余生をその村で過ごそうとしていたポワロに事件の解明を依頼した。ポワロは言った。「いったんお引き受けした以上は、最後までやりとげなければ止みません。たとえ途中で警察に一任しておく方が無難だとお考えになるような事態にいたりましてもですぞ。よい猟犬というものは決して追跡を途中で放棄するようなことはいたしません」……ミステリーの女王の名を不朽のものとしたクリスティの記念碑的作品。

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  • シカゴ・ブルース
    4.0
    「ほろ苦く、切なく、すがすがしい。都会の孤独に立ち向かう若者に、ぜひ読んで欲しい」大沢在昌氏はこう語った。深夜シカゴの街で父親を殺害された若く純真な印刷見習工のエドは、人生の酸いも甘いも噛み分けた旅興行一座を切り回す叔父の手を借り、殺人犯を追う。トロンボーンの夢で始まり殺人、音楽、酒、暴力、悲劇的な結末、そして見事な着地! 奇抜な着想、軽妙なプロットでミステリーを書かせては当代随一の名手といわれるフレドリック・ブラウンの長編処女作。1947年度、アメリカ推理作家協会賞受賞作品。
  • ミス・マープルのご意見は? 1
    4.0
    セント・メアリ・ミード村で静かな暮らしを送るミス・マープルは、人のうわさ好き。どんな出来事にも興味をもち、好奇心旺盛で記憶力も抜群。編物をしながら、じっと話に耳を傾けている。ガーデニングも好きで、通りかかる人物にも注意を怠らない。そして驚くべき洞察力で、事件の謎を解いてしまう。ミス・マープルは長編「牧師館殺人事件」で初めて顔をみせ、 その後、多くの短編・長編で活躍した。「ミス・マープルの物語は、書いていてとても楽しかった。わたしは、自分が作ったこのおだやかなおばあさんが大好きになってしまいました。読者のみなさんにも好きになってほしいと心から願っています」作者はこう書いた。

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  • 法廷のウルフ
    4.0
    【法廷のウルフ】――殺人事件の検察側証人として、蘭の温室から法廷に駆り出されたウルフは、なぜか証言の直前に姿を消し、現場に向かった――大団円での弁舌の冴えにはペリー・メイスン も顔色なし!【死を招く窓】――肺炎で死んだ患者の胸には「からっぽの湯たんぽ」が 置かれていた。誰が、なんのためにそんなことをしたのか…2編の中編傑作を収録。

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  • ブラウン神父の純智1
    4.0
    「純智」は、ホームズ物とは一味ちがう、短編ミステリーの名手チェスタートンのブラウン神父物第一巻。黒い大きな帽子とこうもり傘、丸顔でずんぐりした体型の神父が、どことなくユーモラスな雰囲気を漂わせながら意表をつく推理を披露する。本編には「青い十字架」「密閉された庭」「奇妙な足音」「飛ぶ星」「見えない人間」「イズラエル・ガウの厳正さ」の6編をおさめた。

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  • 情婦…クリスティ短編集
    4.0
    かつてマレーネ・ディートリッヒの主演で映画化されて有名になった名編「情婦」のほか、愛すべきポワロが活躍するクリスティの珠玉の短篇「西方の星」「首相誘拐事件」「ダベンハイム氏の失踪」「クラパムの料理女」「イタリア貴族の怪死」「エジプト人墓地の冒険」を収録したハンディな1冊。誰でも親しめるポワロ入門。

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  • 赤い館の秘密
    4.0
    「熊のプー」で知られる英国の作家ミルンが生涯に1作だけ手がけた長編ミステリの傑作。けだるく暑い夏の盛り、まどろんでいるような「赤い館」で事件は起こる。15年ぶりに弟(館の主)を訪れた「放蕩者」のうわさの高い兄が何者かによって殺され、しかも同室していたはずの弟は行方知れずになる。その館で働く「親しい友」を訪問してみようと思い立ったアントニー・ギリンガムは、はからずも殺人のおこなわれた直後に館に到着することになった。推理とユーモアが巧みに織りなされた名編。

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  • エッジウェア卿の死
    4.0
    女芸人カーロッタ・アダムズの人まね演技は完璧で、たまたま舞台を観たポワロは有名人の模写に感銘をうけた。ポワロはその晩、真似をされた当人のひとりで、有名な女優ジーン・ウィルキンソンから、離婚話に応じない夫を説得してもらいたいという依頼を受ける。だが、その夫エッジウェア卿は自宅で、何者かによって鋭利な刃物で殺害され、つづいてカーロッタも変死をとげる。難解な謎に挑むポワロ。

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  • 怪盗レトン
    3.0
    シムノンのメグレ・シリーズ第1作!「狡猾《こうかつ》かつ危険きわまりない人物、国籍不明、おそらくはリトアニアかエストニアの生まれ、英仏独露の四か国語を流暢に話し、詐欺をもっぱらとする国際犯罪団の首領」と目される怪盗レトン。その到着をパリの北駅に待ち受けるメグレ。だが、それらしい男が下車すると同時に、まったく瓜二つとしか言いようのない男の死体が、列車の洗面所に発見される。パリとノルマンジーのフェカンをむすぶ謎はなにか? 雨にけぶる巷に、霧深い地方の港町に、パイプをくわえてのっそりとたたずむメグレ、「犯罪心理の洞察者」「人生の捜査官」メグレの全貌はこの一作でわかる。

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  • Zの悲劇
    3.0
    センセーションを巻き起こした『Xの悲劇』『Yの悲劇』につぐ「悲劇シリーズ」第三作。「Z」は、エラリー・クイーンが、前二作の大好評にその野心をさらに刺戟されることによって書きあげた作品。前二作にもまして、さまざまな創意工夫がなされている。アメリカの地方小都市の政治的な暗黒面、刑務所、死刑囚、死刑執行という劇的な道具立て以外にも、語り手をサム警部の娘ペイシェンスにすることによって、冒頭から前作とはまったく異なる雰囲気を作り上げている。

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  • Yの悲劇
    3.0
    ヨーク・ハッターがニューヨーク近郊の海から変死体となって発見された事件からハッター家の悲劇は始まった! 一族に次々に毒が盛られ、ハッター夫人はマンドリンという奇怪な凶器で殴り殺される。続けざまに起こる惨劇の調査を開始した老優ドルリー・レーンは、信じられない真実に直面する……。海外ミステリーのベスト選出で常に第一位の座を誇る傑作中の傑作。奇抜な着想、用意周到な伏線、犯人の意外性、明晰な論理、最後の一行の衝撃――どこをとっても「推理小説技巧の最高峰」といった、数多くの賞賛を浴びるにふさわしい作品。

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  • Xの悲劇
    3.0
    ニューヨークの薄気味の悪い館にすむ元シェイクスピア俳優ドルリー・レーンを探偵役にすえた、クイーンの「悲劇シリーズ」4部作の第一編。株式仲買人がすし詰めの路面電車のなかで、ポケットに忍び込まされた高純度ニコチンを塗った針先に刺されて即死する。そんな芸当は、いったい誰に可能だったのか? 動機は? しらみつぶしの警察の調べによって、共同経営者が浮かび上がるが……緻密な構成、全体の進行を劇の上演に見立てた凝ったつくりで、遊び心も忘れない本格ミステリーの代表作。1932年、バーナビー・ロスという無名の新人名義で発表され、ミステリー界にセンセーションをまきおこした作品としても有名。

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  • グリーン家殺人事件
    2.3
    ニューヨークの真ん中にでんと構えて三代もつづいてきたグリーン・マンションで、娘二人が銃で狙撃されるという事件がもちあがる。だがそれは、一家皆殺しをたくらむ何者かの手による連続殺人事件の発端にすぎなかった。……緊密なプロット、堅牢なアリバイ、大伽藍の崩壊をおもわせる最後の大団円など、本格推理の醍醐味を満喫させずにはおかないヴァン・ダインのファイロ・ヴァンス・シリーズの最高傑作。かつて「エラリー・クイーン誌」による読者人気投票でも堂々第一位にランクされた。

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  • スタイルズ荘の怪事件
    2.0
    イギリス中の興味と関心をあつめたスタイルズ荘の事件は、ヘイスティングズ大尉が友人の別荘に招かれたときに起こった。再婚して間もない友人の義母エミリーが毒殺されたのである。嫌疑は一族のみんなにかかる。ベルギーから英国に亡命してまもなくエミリーに住まいを世話されたポアロは、恩義も感じて事件解決に乗り出す。…不滅の探偵を生み出した「ミステリの女王」の新鮮さのあふれる処女作。
  • シャーロック・ホームズ全集(上)
    2.0
    ホームズもの長編4作、短編56作の全作品60編を収録した全集! 上巻収録作品は、4つの長編「緋色の研究」「四つの署名」「バスカーヴィル家の犬」「恐怖の谷」と、短編集「シャーロック・ホームズの冒険」。下巻収録作品は4つの短編集「シャーロック・ホームズの回想」「生還」「最後の挨拶」「事件簿」

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  • ドラゴンの歯
    1.0
    エラリー・クイーンは自分と同じ警察官の息子ボー・ランメルの発案で、いっしょに私立探偵社を経営することになった。ボーは金も出し、足回りの仕事はなんでもやるという。ある日、そこへ億万長者カドマスが現われ、将来、事件を依頼するからという怪しげな条件で、多額の契約金を払っていった。その数日後、依頼人は愛用の豪華なヨットの上で謎の死をとげる。巨万の富を相続することになる二人の娘をめぐってまき起こる怪事件に乗り出すクイーン! 謎ときの興味横溢する本格編! ギリシア神話のカドマスはドラゴンの歯を地中に埋めて多大なトラブルを生み出したのだが……。
  • 黄色い犬
    1.0
    ブルターニュの小さな港町コンカルノー。午後十一時に近い。酒類販売を手がけるモスタガン氏は千鳥足でホテルのカフェから出てくる。折からの強い風のなか、なんとかして葉巻をつけようとするがマッチが無駄になるばかり。ようやくマッチに火をつける。瞬間、氏の身体はあとじさりしてよろめき、歩道の溝に倒れ込んだ。腹部を撃たれていたのだ。そしてどこからともなく現れた大きな黄色い犬が氏の身体を嗅ぎまわっていた。メグレもの初期の傑作。

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  • スイート・ホーム殺人事件
    -
    女手一つで3人の子どもを育てる忙しい流行推理小説作家のマリアン・カーステアズ。そんなある日、子供達はお隣りの奥さんの射殺事件に遭遇する。もしもママが事件の謎を解いて犯人を見つけたら本も売れるに違いない。…こうして3人組の活躍がはじまる。警察の巡査部長もなんのその、事件の核心へと近づきながら、その一方では独身で孤独なビル・スミス警部とママをくっつけようとさえ画策する。本格推理とユーモアとが渾然となって仕上がったライスの傑作。

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  • 赤毛のレッドメーン家
    -
    イギリス南東部の荒れ地ダートムアに休暇で鱒釣りをしにきていたロンドン警視庁の刑事ブレンドンは、建築中の邸宅で起きたらしい「殺人事件」に巻き込まれる。それはイギリスとイタリアのコモ湖畔を舞台に起こるレッドメーン家の親族連続殺人事件へと変貌していく。重厚・緻密な構成と文章力で、読者をとらえて放さない古典ミステリの傑作中の傑作。乱歩おすすめの一冊でもある。

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  • 樽

    -
    ロンドン港にルーアンから着いた特別に頑丈なワイン樽には女性の死体が詰められているようだった。だが名宛て人はまんまと裏をかいて、その樽を運び去る。懸命な捜査でついに見つかった樽の中にはやはり若い女性の死体が……事件は国際的な広がりを見せ、舞台はパリへ、ブリュッセルへ……同じような樽は英仏の間を場所をかえて何度もやりとりされていた。錯綜した樽の往復のからくりはなにか、そして犯人は? 歴史にのこる傑作ミステリー。

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  • 二つの密室
    NEW
    -
    つましく身を立てていたアン・デイはいつの間にか38になっていたが、願ってもない家政婦という職を得てグリンズミード家に入った。だが一見平和な家庭には思わぬ陰があった。病弱な妻は話のとおりだったが、夫には秘密の愛人があったのだ。典型的な三角関係が引き起こす不気味な雰囲気のなかで、若い家政婦アンは、夫婦間の微妙な空気を感じ、夫人の身を案じるが…アリバイ・トリックの巨匠クロフツが、趣向を変えて、密室トリックを創案した。一つは心理的、もう一つは物理的ともいえるトリックで、この二つが有機的に関連する殺人事件の謎に挑戦する。
  • 四つの凶器
    NEW
    -
    ラルフは良家の令嬢マグダと婚約したばかりだが、気がかりなことがあった。恋仲になり別荘まで買ってやった娼婦ローズの存在だ。ローズが結婚の障害になることを心配した彼は、関係を穏便に清算するため、弁護士カーチスに頼んでブーローニュの別荘に出かけた。だが、ローズはベッドの上で、動脈に達するほどの傷を負って死んでいた。しかも部屋には4種類の凶器になりうるものが存在していた! いったいどういうことが起こったのか。奇怪な事件の謎にいどむ探偵バンコランが、持ち前のウィットとユーモアを見せて活躍する最後の長編。
  • 山師タラント
    -
    薬局の店員ジェームズ・タラントは野心家で、胃の薬をめぐる詐欺じみた行為によって、希代の成功者に成りあがった。だがことは思惑どおりには運ばず、行く手には死が待ち受けていた。犯人とみられる女性はあっけなく逮補され、いまや絞首刑の寸前にあった。だが、フレンチ警部は捜査の結果に不満だった。事実の連鎖に疑問があり、肝心のところが腑に落ちなかった。難事件であった。作者クロフツは本作で初めて法廷論争を展開する
  • 英仏海峡の謎
    -
    英仏海峡航路の汽船がドーバー海峡をフランスに向かう途中、漂流する一隻のヨットを見かけて停船した。調べてみるとヨットには、ふたりの男の死体と多量の血痕があった。ヨットは、その日倒産したモクスン証券会社の社長の船であり、死体は社長と副社長だった。会社の金庫からは百五十万ポンドの現金が紛失していることも、重役らが行方知れずになっていることも判明した。犯人は広い海のまん中で、こつぜんと姿を消していた。フレンチ警部の捜査は、次から次へと行き詰まり、事件は迷宮入りかと思われたが……。
  • エラリー・クイーンの新冒険
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    「冒険」が人気を博したのを受けて一九四〇年に刊行された短編集で、ここには9点の作品が収められている。なかでも最高の傑作は巻頭の「神の灯」という中編で、もとはディテクティブ・マガジンに一九三五年に発表され、そのあと本短編集に収められた。最後の4編は野球、競馬、ボクシング、フットボールと、スポーツがからむ殺人事件を扱っていて興味をそそる。
  • エラリー・クイーンの冒険
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    この作品はエラリー・クイーンがみずから編纂した最初の短編集で、一九三四年に刊行された。すでに「国名シリーズ」も区切りがつき、4編連作の「ドルリー・レーン悲劇シリーズ」も終わり、圧倒的な人気を博していた時期の発表で、それまでに書いていた短編の中から自信をもってまとめた11編の作品からなる。クイーンは深い造詣を生かして一九五〇年に「クイーンズ・クォラム」というタイトルで推理短編集106点を選んだが、そのうちの90番目に本短編集を収めている。つまり、それほどの自信作というわけである。
  • フレンチ警部の事件簿①
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    アリバイ破りの名手ロンドン警視庁のフレンチ警部は、丹念に緻密に足を使う捜査で有名で「足の探偵」の異名をもつ。彼はクロフツの多くの重厚な長編で活躍するが、気の利いた多くの短編でもその片鱗をみせる。ここにまとめた2巻によってその全容が判明する。本巻には「床板上の殺人」「上げ潮」「自署」「シャンピニオン・パイ」以下21編を収めた。
  • マギル卿最後の旅
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    『マギル卿最後の旅』は、推理小説に旅行をとりいれた作家、アリバイくずしの作家、鉄道人であった経歴を持つ作家クロフツの面目が充分に発揮されている小説だと言えよう。その意味では、この小説は有名な『樽』にもまして、クロフツの代表的な作品だと言っていいのではないかと思う。…これは訳者の言葉だが、ロンドンの富豪マギル卿は、息子の経営するベルファストの紡績工場へ行くと称して消息を絶つ。北アイルランド警察の捜査では、血痕のついた卿の帽子が見つかっただけで死体は見つからない。だがロンドン警視庁のフレンチ警部がのり出すと、果然、事件はその様相を一変した。息子の私邸の庭から、卿の無惨な死体が発見されたのだ!
  • 地下鉄サム
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    1910年から20年代のニューヨークの地下鉄を舞台に、あわてんぼうで純情のスリの名人サムと、サムをつけまわす刑事クラドックの対決! クラドックは、サムを現行犯で捕えて「河上の別荘」へ送り込もうとつけねらっているが、いつも巧みに逃げられ、さんざんな目に合わされる。ところがこの二人は奇妙な友情で結ばれ、毎日顔をつきあわせて憎まれ口を叩かないと、お互いに何か物足りない気分に襲われるほどになっているのだ。他に退役強盗の下宿屋のオヤジ「鼻のムーア」や、女たらしの「めかし屋ノエル」、「高架線のエルマ」や「ノッポ」に「チビ」など、一癖も二癖もある連中がからみあってかもし出す、微笑、哄笑、爆笑をよぶユーモア探偵小説集。
  • マックス・カラドスの事件簿
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    マックス・カラドスは、無数の探偵の中で最もユニークな存在であろう。なにしろ盲目なのだから。だが、先天的に盲目だったわけではなく、乗馬中の事故で小枝が目にあたったためだった。この絶望的なハンディキャップを強い意志で乗り越え、彼は新聞や手紙の文字を指先でたどり、微細な凹凸から内容を把握できるまでになり、人の顔を見ることはできなくても、声や匂いで判別することができるようになる。カラドスの活躍するミステリは3冊の短編集として刊行され、26編におよぶが、本書では、うち代表的な8編を選んだ。
  • 詩人と狂人たち
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    この短編集にはガブリエル・ゲイルという詩人で画家が解決にあたる8編の探偵譚が収められている。各編では奇矯ともいってよい風変わりな人物が登場し、奇怪な殺人や、神秘的な出来事が起こる。それらの解決はみな、常識的な推論や犯罪捜査を受け付けず、ゲイルのような「普通でない」考えがひらめく人物でないかぎり解明の役に立たない。怪奇と幻想と狂気、それらがない交ぜになったチェスタートン独自の世界を感じることができる。
  • アプルビイの事件簿
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    マイケル・イネスはスコットランドに生まれ、オックスフォード大学を卒業、学者肌の英語学の研究者で、イングランドやオーストラリアの大学などで教鞭をとった。この間、多くの著書を出版したが、専門を離れてミステリにも手を染め、本短編集で活躍するロンドン警視庁のアプルビイ警部を主人公とするシリーズものを、長編・短編ふくめて多数発表した。本巻には,発端の謎と中段の論理性、結末の意外性を兼ね備えた「イギリス新本格派」の雄イネスの名品9編を3冊の短編集から選んでいる。
  • 密室がいっぱい
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    ミステリのなかで密室ものと言われる作品群がある。locked room murder がその原語で、入ることも出ることもできない密閉された空間あるいは状況において発生した殺人を扱ったものだ。ディクスン・カーは手を換え品を換えて生涯、この種の作品の提供を追求したが、他にも多くの作家がこのアイディアを試みた。本書はこうした「密室もの」短編の一端を紹介するもので、多彩な作家の手になる14編を収録している。カーはもちろんだが、クイーン、クレイグ・ライス、マクロイ、チェスタートン、ポースト、シムノンなどの「不可能犯罪」を一瞥できる。
  • ビッグ・ボウの殺人
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    冬のロンドンのボウ地区で、ある朝、下宿屋を営むドラブダンプ夫人は戦慄の光景を目にした。喉を切られた下宿人の遺体が見つかったのだ。殺人かも知れず、有力容疑者を前に、ロンドン警視庁の敏腕刑事と元刑事が事件の解明に奔走する。本書は「密室ミステリの父」の手になる傑作中の傑作。ディクスン・カーも江戸川乱歩も「一大トリックを十分に書きこなしている古典」として絶賛している。
  • ソーンダイク博士の事件簿1
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    フリーマンは、ソーンダイク博士を主人公とした推理小説で人気を博した。倒叙推理小説の創始者として有名だが、他にも多くのソーンダイクものがあり、それらの中から短編を選りすぐって2巻にまとめたのが本書だ。なお、倒叙形式の作品だけ5編を集めた短編集「歌う白骨」全訳は、このタイトルのまま弊社から刊行されている。その最初の作品「オスカー・ブロズキー事件」を除く4編は、本書1にも重複して収められている。「ソーンダイク博士が、頭のはたらきのにぶいワトスン役のジャーヴィス医師にともなわれて、庭を散歩するようにロンドン中を歩きまわるすばらしい描写」については、レイモンド・チャンドラーがとくに指摘している。
  • ソーラー・ポンズの事件簿
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    ホームズの模倣作のなかで、一番正統な「嫡子」が本書のソーラー・ポンズだ。作者ダーレスはドイルに対して、「もうホームズものは書かないのですか」という手紙を書き、本人から「そのつもりはない」との返事をもらい、「では私が書きましょう」といって書き始めたのだから。著名な文学史家ハワード・ヘイクラフトは「シャーロック・ホームズの生まれ変わり(reincarnation)」という表現でソーラー・ポンズを評している。13編を収めた本邦初の作品集。
  • 黒死荘殺人事件
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    「黒死荘」と呼ばれるまがまがしい因縁つきの邸宅を舞台にしての心霊実験…その主催者が密室のなかで惨殺死体となって発見される。扉にはかんぬきがかかり、窓には鉄格子がはめられ、雨夜のため、外には足跡も残されていなかった。唯一残されていたのは博物館から盗まれた短剣だ。怪奇・陰惨な犯罪に挑むヘンリー・メルヴェール卿を初めて登場させ、一躍「密室もの」で名を売ったカーター・ディクスンの代表作。
  • 思考機械の事件簿1
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    「思考機械」(Thinking Machine)とはそもそも何者なのか。これはれっきとした探偵の名前で、アメリカ生まれのシャーロック・ホームズの仲間だ。「いかなる問題も、すべて単純な知的操作によって数学的因子に還元されるはずなのだよ」オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授(これが彼の本名だ)は、力を込めて言った。作者フットレルは、ジョージア州生まれで、一九〇五年、「思考機械」の別名を持つ探偵が活躍する推理小説「13号独房の問題」を発表して人気を集めた。以後、「思考機械」ものの推理小説で欧米の人気をさらったが、奇しくも一九一二年、タイタニック号の遭難事故で死亡した。「思考機械」ものの推理小説は、ポーストの「アブナー伯父」と並びアメリカン・ミステリの古典として高く評価される。
  • フォーチュン氏の事件簿
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    作者ベイリーはロンドン生まれで、オックスフォード大学卒業後はジャーナリストに。一時は従軍記者になったが、そのころから医者で探偵役もつとめるフォーチュン氏を主人公とする探偵小説のシリーズを書き始め、1948年まで長編・短編あわせて23冊もの人気シリーズとなった。欧米各国で広く愛読され、英国探偵小説家としてはセイヤーズ、クリスティ、クロフツ、フリーマンとともに5大家と評される。フォーチュン氏は高級な詩や深遠な学問的、哲学的考察から、チョコレート・クリームにいたるまで、およそ人間的な喜びといえるものはどれとも無縁ではないし、料理と酒に対する関心は人後に落ちない。
  • 月長石(上)
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    1868年に出版された本書は、現代ミステリの最初の試みと見なされている。T・S・エリオットは「英国で最初に発表された最も優れたミステリ長編」と書き、ドロシー・セイヤーズは「おそらくこれまでに書かれた最もすばらしいミステリだ」と記した。黄色のダイヤといわれたインドの秘宝「月長石」は、不思議な経緯をへてイギリスへ。ある晩、「月長石」は持ち主ヴェリンダー家から忽然と消失する。同家の依頼を受けたロンドン警視庁のカフ部長刑事は万全な体制で捜査にあたったが、手がかりは乏しい。果たして犯人はどこに? 意外性とサスペンスあふれる展開で読者を飽きさせない不朽の名作。コリンズはディケンズと互いに影響を与えあった。
  • エンド・ハウス殺人事件
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    英国南部、海を見下ろす崖の上に建つエンド・ハウス。その家の若く魅力的な女性の持ち主ニックは、続発する奇妙な事故に悩まされていた。重い額縁の突然の落下、ブレーキの故障、落石……。たまたまリゾートにやってきたポワロの目の前で、ニックが狙撃される。彼女の命を守るため、ポワロの灰色の脳細胞が働きはじめた。意想外の展開をみせるクリスティ初期の「ポワロもの」力作。「危機のエンドハウス」の新訳。
  • マダム・ジゼル殺人事件
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    21人の客をのせ、パリのル・ブールジェ空港を飛び立ちロンドンへと向かっていた旅客機の自分の座席のなかで、マダム・ジゼルは死んでいた。少し前、客室内を飛ぶ一匹の黄蜂が目撃され、父子づれの乗客のそばに飛んでゆき、その息子によって退治されていた。不思議なことに、マダム・ジゼルの首筋には、蜂に刺されたような小さな傷跡があった。機内という密室殺人にいどむポワロ。紀田順一郎が若いときに感銘をうけ、あらためて読んで「やはり面白い」と絶賛したクリスティ作品。「機上の死」の新訳。
  • 手斧が首を切りにきた
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    ブラウンは、奇抜な着想を卓抜な技巧でまとめていく才筆家として定評があるが、それとともに彼は、いつも作中の人物を温かいまなざしで見つめて描いていく作家である。この作品の主人公ベイリーも例外ではない。一青年のやるせない青春像を鮮やかに浮き彫りにしたサスペンス小説だが、基本のストーリー展開のなかにラジオ、映画、スポーツ放送、ビデオ、演劇等の台本の形式を挟んで、結末を小さな新聞記事で締めくくり、奇才ぶりを見せている。
  • ブルートレイン殺人事件
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    ロンドンのビクトリア駅発パリ・マルセーユ経由ニース行きの特急「ブルートレイン」。その中で米国の富豪の娘ルスが殺害され、「ハート・オブ・ファイア」と名づけられたルビーの宝石が奪われる。この宝石はもとロシアの女帝の胸をかざり、苦悩、絶望、嫉妬など、その通ってきた道に、悲劇や暴力の数々を残してきたいわくつきの宝石だった。たまたま同じ列車に乗り合わせたポワロは「私は、エルキュル・ポワロでございます」と言いながら取り調べをする警察署長の前に姿をあらわした。「青列車殺人事件」の新訳。
  • 黒いカーテン
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    昏倒のショックを受けて、タウンゼンドは記憶喪失症から回復した。だが、三年の歳月が完全に頭の中から消えていた。この三年間なにをしてきたのか、自分にはわからない。教えてくれるものもいない。しかし瑪瑙(めのう)のような冷たい目をした謎の男が、自分をつけ狙っているように思われる。強迫観念にとらわれた男の孤独と寂寥を描いて、ならぶ者のない境地を切り開いたサスペンスの巨匠アイリッシュのブラック・シリーズものの1点。
  • 黒いアリバイ
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    女優キキの旅興行の宣伝のために連れてこられた黒豹が、衆人環視のなかを逃げだして姿をくらます。やがて、無残に引き裂かれた娘の死体が次々と見つかる。美しい犠牲者を求めて彷徨する黒い獣を追って警察は奔走するが、その行方は皆目見当がつかない。そもそも、そろいもそろって若い美人ばかり狙うというのも、殺し方が残虐そのものというのもおかしい。キキのマネジャーは疑念を抱いた。…アイリッシュの「ブラックもの」の代表作!
  • シャーロキアン殺人事件
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    ホームズの世界を楽しめる作品。名だたるホームズ嫌いがアメリカ映画「まだらの紐」の脚本担当になったため、「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」の会員からの非難が相次いだ。一計を案じた会社は嘱託として会員をハリウッドに招待する。ところが、パーティの席に現れた当の脚本家が殺される。しかも、死体が消えた! 暗号・密室・国際的陰謀……シャーロキアンがもてる知識をフル動員して推理に当たる。
  • 三幕殺人事件
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    ダンディな元舞台俳優が海辺の邸宅で催したパーティで、招かれた土地の牧師がカクテルを飲んだとたんに急死した。招待客の一人だったポワロにも「事件」とは思われなかった。だが悲劇には第二幕が。まったく同じような状況での同じような急死が……灰色の脳細胞が活動を開始する。クリスティ中期の代表作。
  • 爬虫館殺人事件
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    流れ出してきた有毒ガスに全員がたじろぐなか、ヘンリー・メリヴェール卿は部屋の中に突進していった。ストーブから、不気味な音とともにガスが吹き出している。その前には、断末魔の苦悶にさいなまれた動物園長の死体が! しかも、その部屋は内側からゴム引きの紙で目張りされていた。空襲警報が鳴り響く戦時下ロンドンの、有名な爬虫類展示館で発生した奇怪な密室殺人事件をメリヴェール卿が暴く。
  • 不可能犯罪捜査課
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    ロンドン警視庁内に設置された「不可能犯罪捜査課」の活躍を描いたシリーズ作品を中心にしたカーの短編集。独創的なトリックの数々を駆使して独自の世界が展開する。手袋だけで男が殺された怪事件の「新透明人間」、雪に残された足跡トリックの典型「空中の足跡」、四人組銀行強盗はつかまったが、肝心の金がみつからない「ホット・マネー」、評判ダンサーが楽屋でハサミを背中に刺されて死んでいた「楽屋の死」など10編。うち後半4編はシリーズ以外の怪奇事件を扱っている。
  • フェアウェルの殺人─ハメット短編全集1
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    「ハードボイルド派探偵小説界の長老」と評されるハメットの短編全集その1。第一次世界大戦後のヘミングウェイを初めとする〈失われた世代〉の作家たちに刺激を受けて登場したハメットは、推理小説に革命をもたらした。その作風は「ハードボイルド」と名づけられている。名探偵コンチネンタル・オプの地方での事件を扱った表題作を中心に、「黒づくめの女」「うろつくシャム人」「新任保安官」「放火罪および…」「夜の銃声」「王様稼業」の7編を収録した。
  • 13の秘密/第1号水門
    -
    「13の秘密」はパリを舞台に、探偵趣味のルボルニュ青年が新聞記事を手がかりに13の犯罪の謎を解明する連作短編集。有名なミステリー評論家アントニー・バウチャーは「純粋に頭脳だけで事件を解決するという点でルボルニュに比肩しうるのは『隅の老人』だけだ」と絶賛している。「第一号水門」はメグレもの初期の長編…老船頭のガッサンは運河に落ちるが、救出される。同じ場所で、界隈の河川運行を仕切るデュクローが、痛手を負い意識を失っていたところを助け出される。デュクローの息子ジャンが、父を襲ったのは自分だと告白する手紙を遺し自殺を遂げる。翌日、さらにベベールなる水夫がシャラントンの水門で縊死死体となって発見される。
  • ゲー・ムーランの踊子/三文酒場
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    未成年シャボーとデルフォスはキャバレー「ゲー・ムーラン」で閉店まで遊び、売上金を盗もうと隠れていた。だが、二人は客の一人が死んでいるのを発見し、泡を食って逃げる。翌日の夕刊は、この男が柳行李詰めの死体として発見されたと報じた。ジャンは思いを寄せる踊子の部屋に行き、そこで昨夜の客が持っていたはずのシガレットケースを見つけて真っ青になる。外に出たジャンは大柄の男につけられていた…。「三文酒場」の舞台はパリとその郊外だ。メグレはサンテ監獄で、死刑が翌日に迫ったジャン・ルノワールという男と面会する。そしてまだ捕まっていない彼の共犯者が、三文酒場なるところの常連であると明かされる。メグレは《三文酒場》を探そうとするが…。
  • クイーンの事件簿1
    -
    《健康の家》の主人が殺された。癌の宣告を受けた直後のことだった。ところが死体置場(モルグ)に運びこんだはずの死体は、いつのまにか石膏の像にすりかえられていた。事件にまきこまれた推理作家志望の娘ニッキーと共に、エラリー・クイーンは捜査を開始する(→『消えた死体』)。エラリーとニッキーの二人のコンビは、中国帰りの腹話術師の殺人事件の捜査に駆りだされる。スパイあり、イカサマ賭博師あり、そして怪しげな中国人、現場には謎のカード、宝石の行方は?(→『ペントハウスの謎』)
  • 赤い風 チャンドラー短編全集1
    -
    正統派ハードボイルドの巨匠レイモント・チャンドラーの中短編全集第1巻。本巻には、チャンドラー自身の序文を巻頭に置き、「脅迫者は射たない」「赤い風」「金魚」「山には犯罪なし」の傑作4編を収めた。哀愁とサスペンスを背に不朽の主人公フィリップ・マーロウがロサンゼルスのネオン街を歩き去る。「レイモンド・チャンドラーはアメリカについて語る新たな方法を発明し、それ以来我々にとってアメリカは全く違ったものとして映るようになった」ポール・オースターはこんなふうに書いている。
  • かわいい女
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    ハードボイルドの代表格、ロスの私立探偵マーロウが活躍する一編。失踪した兄を探してくれと、田舎出の若い女があらわれたとき、マーロウは相手の態度に不審を抱いたが、女の差し出す虎の子の20ドルを受けとって、依頼を引き受けた。報酬の多寡は問題ではなかった。真実をあばき出すことだけが目的だった。舞台は映画の王国ハリウッド。街の顔役、ギャング、映画女優、そのマネージャー、警察官たちが登場し、その中を泳ぎまわるマーロウの身には次々と危難が襲いかかる。
  • 犯行以前
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    ショッキングな書き出しではじまる本書は、妻を愛し、歓心を得ようとしながら、妻の心とはうらはらな言動をする異常性格の夫に献身的につくす健気な女の、内心の葛藤を描く犯罪心理小説。「世の中には殺人者を生む女もあれば、殺人者とベッドをともにする女もある。そしてまた、殺人者と結婚する女もある。リナ・アスガースは、八年近くも夫と暮らしてから、やっと自分が殺人者と結婚したことをさとった……」
  • カーテンの彼方
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    フレデリック・ブルース卿が晩餐会で何者かに射殺された事件は、過去に関係があった。十五年前インド国境の町で行方不明になった年若い人妻の失踪事件と、ビロードの支那靴しか手掛りのない弁護士射殺事件がそれだ。卿は回想録を書くに当って、「厚い年月のカーテンの彼方」に没し去った怪事件を追究していたのである。謎の解明にあたるのは支那人特有の警句を飛ばしてあまりにも有名なホノルル警察のチャーリー・チャン。「世界一周ツアー事件」とならぶビガーズの代表作である。
  • 快盗ルビー・マーチンスン
    -
    短編の名手スレッサーにかかると「殺人」や「犯罪」が血なまぐさくない、さりげない事件となり、殺人者や被害者、はてはごろつきや警察官までもが愉快で憎めない人物になってしまう。つねに「うまい犯罪、しゃれた殺人」を描くことに心を砕いていたヒッチコックは、スレッサーの作品が大いに気に入り、テレビのヒッチコック劇場の常連シナリオ・ライターに起用した。本書は根は善良な小市民、悪党気どりの愛すべき一青年ルビー・マーチンスンを主人公に設定し、ニューヨークのダウンタウンを背景に、彼が思いつく奇想天外な犯罪計画の数々とその皮肉な失敗の経緯を披露する。趣きの変った、大人の童話という感のある作品。
  • 大いなる眠り
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    ハードボイルドの旗手チャンドラーの長編処女作。主人公の私立探偵フィリップ・マーロウはこれによって一躍、有名になった。マーロウは富豪の将軍の邸宅へ招かれる。将軍の次女カーメンが、賭博場でふり出した約束手形にからまる強請りの件で、その調査を依頼されたのだ。マーロウは張本人とみられるガイガーの家をさぐりに行った。だが、三発の銃声がとどろき、ガイガーは射殺されていた。踏みこんだ所はあやしげな秘密写真撮影の現場だった。次々に現れる不審な人物に加え、将軍家の長女の夫の失踪事件もからみ、事件はいよいよ複雑に。双葉氏の翻訳はその名調子で知られる。
  • マーロウ最後の事件
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    ハードボイルド派の代名詞となった感のあるチャンドラーの作品は、その枠を超えて親しまれている。長年その作品を味読してきた訳者は、本書において4つの中編を選び、「この1冊でチャンドラーのすべてが解る」と、控えめながら自負を語る。チャンドラーの魅力を紹介し、あらためてそれを確認する最適の作品集。「湖中の女」「女を裁け」「翡翠」「マーロウ最後の事件」を収録。
  • ファーザー・ハント
    -
    ウルフとアーチーは、エーミー・デノヴォと名乗る女性から父親捜しの依頼を受ける。彼女の母親は三ヵ月前に轢き逃げに遭い、エーミーは一人残された。父親は毎月母親宛に小切手を送り続けてきていたのだという。アーチーは、小切手の振出人割り出しから追跡を開始し、それが信託銀行の元頭取サイラス・M・ジャレットだったことを突き止める。エーミーの母親は当時別名でジャレット夫人の秘書を務めていた。だが、調査は暗誦に乗り上げる。ジャレットの息子も父親に該当しないことがわかる。ウルフは捜査中の轢き逃げ事件に着目し、その犯人からのアプローチを試みる。車の運転席に残されていた葉巻の銘柄が唯一の手がかりだった。
  • 盲目の理髪師
    -
    大西洋をイギリスに向かう豪華客船のなかで盗難事件が起こり、奇怪な殺人事件が発生する。死体が消えたあと「盲目の理髪師」が柄に描かれた、血まみれの剃刀が残っていたのだが、これはいったい何を意味するのか。そんなこととはおかまいなく、船上ではあれやこれやのドタバタ劇が続発、笑いのうち肝心の事件は消え失せるかに見えたのだが…真打のフェル博士が安楽椅子探偵となって登場する、円熟味を加えたカーの名編。
  • 恐怖への旅
    -
    第二次大戦下、英国の兵器製造会社からイスタンブールに派遣された技師グレアムは、トルコ海軍の軍艦再装備計画に加わっていた。だがそれはドイツ、イタリア、ロシアの知るところとなり、グレアムの身に危険が迫る。トルコ秘密警察の手引きによって民間汽船で逃れたグレアムは、ギリシアから乗船してきた男がドイツの意を受けたルーマニアの暗殺者ベーナトであることを知った! だが、グレアムの秘密をつかもうと暗躍していた者は、それだけではなかった。スパイ小説史上に輝くアンブラーの初期傑作。
  • 暗号ミステリ傑作選(1)
    -
    「本巻に収めた短編はみな、暗号とコードのいずれかを扱ったもので、それぞれの作品が事件の謎を解くのに、暗号またはコードのキーを見出すのを必要とする。たとえそれが単純な換字法による暗号、あるいはワン・ステップの推理で解決できるコードにしても、それを優れた作家が見事に料理するときは、読者はかならず、暗号もしくはコード一般の魅力に取り憑かれるはずである」……編者は「序文」でこのような暗号論を展開し、13編の作品を選んだ。フリーマン、ベントリーからセイヤーズ、アリンガムまでを含む歴史的アンソロジー!
  • 死時計
    -
    時計師の家の天窓の下の部屋では、完全殺人の計画が進行していた。表のドアがあけはなたれて、死の罠へおびきよせられた犠牲者の押すベルが鳴る。中では男がピストルを持って待ち構えていた。しかし扉を開けて入って来た男は、相手がピストルを撃つ前に倒れていた。被害者は首を時計の針で刺されて、死亡していたのだ。しかもその遺体は別の殺人事件を追ってやって来た刑事だった! おなじみフェル博士が登場し、陰で微笑をもらす冷血な真犯人と対決する。初期のカーを代表する作品。
  • 裏切りへの道
    -
    第二次世界大戦直前のイタリアを舞台に展開されるスパイ戦! 時は大戦勃発直前の北イタリア。英国人の若い技師マーロウはスパータカス工作機械株式会社ミラノ支店のマネージャーとしてミラノに着いたばかりだった。同社はイタリア政府に軍需物資を供給する英国の会社だ。だが、彼の先任者が夜半、何者かの操縦する車に轢殺されたのだということを、マーロウは知らなかった。やがてマーロウにも、何か奇妙な事件が、自分のまわりに起こりかけていることがわかって来る。婚約者に出したラヴレターが、何者かの手で開封されているのを知ったのである……。アンブラーの独壇場である本格スパイ小説の傑作!
  • ディミトリオスの棺
    -
    派手なアクションを避け、地道にスパイの心理を追うスパイ小説の王道を切り開いたアンブラーの初期の代表作。「探偵小説味のある作品を書いている現役の作家で、文学者として最も優れた人は誰かと考えてみると、英のグレアム・グリーン、仏のジョルジュ・シムノン、それから英のエリック・アンブラー、この三人が特別に際立っている」江戸川乱歩はこう書いた。イスタンブールを訪れた英国人作家ラティマーは、秘密警察長官から、国際的犯罪者ディミトリオスが死んだことを聞かされる。だが、ディミトリオスの死体を眺めているうちに、ラティマーはこの男の謎につつまれた過去を洗ってみようという衝動にかられた。
  • ふくろうの叫び
    -
    四人の男女が織りなす愛憎劇。ロバートは結婚生活に破れ、ペンシルヴァニア州の田舎町に越してくる。唯一の楽しみは隣家のジェニファーの暮らしぶりを覗きみることだったが、相手にさとられてしまう。だが彼女は彼を家の中に招き入れ、親しくなる。ジェニファーは一人暮らしをする銀行勤めの二十三歳の女性で、医薬品セールスマンのグレッグと婚約していた。だがロバートに惹かれてゆき、婚約を破棄するまでになる。収まらないグレッグは怒りと嫉妬にかられ、意地でも彼女を奪い返そうとする。それに手を貸すのがロバートの別れた妻ニッキーだ。売れない画家のニッキーは、ロバート同様のおとなしい男と再婚したが、ロバートへの嫌がらせをやめようとはしない。ニッキーはこれでもかと女のいやな部分を見せつける。
  • 愛犬
    -
    「スレッサーは、20年間に500編を越す短編を量産しつづけてきた、現代の最も多作なショート・ストーリー・ライターです。しかも、多作家という言葉とは本来うらはらなニュアンスをもつ「職人芸」という評言がどんな作家よりもぴったりあてはまる、心にくいほどショート・ストーリー作法の手練手管を心得た作家でもあります。それでいて、いまでも一作ごとに、キラッと光る新鮮な魅力をいささかも失っていないのはいったいなぜなのでしょう」…この編者の言葉がそのまま生きるスレッサー珠玉作品集。
  • 死ぬには惜しい日
    -
    アイリッシュの叙情性がうかがわれる表題作をはじめ、「高架殺人」「リンゴひとつ」「コカイン」「夜があばく」「日暮れに処刑の太鼓が鳴る」「妻が消える日」の7作を収めた傑作短編集続編。どの一編にも、サスペンス・スリラー第一人者のうまさが堪能できる。
  • ブラックウッド傑作選
    -
    ブラックウッドは幼年期から青年期にいたる間の特異な体験や思想遍歴により、人為的な文明に対比すべき超自然的なものに対する感性を、鋭くとぎすましていた。その自然が、人間といかに関わるかを、さまざまなモチーフと手法で描いたのが彼の作品群である。自然が強烈な意志を持っていて、隙あらば人間を侵し、ついに荒廃へと導くものとしてとらえるのだ。輪廻をテーマにした「いにしえの魔術」、恐るべき生霊現象を描く「ウェンディゴ」、黒魔術の恐怖「邪悪なる祈り」など、怪奇作家という名称を嫌っていた鬼才の代表的傑作9編。
  • 太陽がいっぱい
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    米国の貧乏青年トムはひょんなことから、富豪グリーンリーフに息子を連れ戻してほしいと頼まれ、礼金欲しさにイタリアへと旅立った。現地でトムが出会ったのは、金にも女にも恵まれた放蕩息子ディッキーだった。裕福で自由奔放なディッキーに羨望を抱くトムは、自分を下男同様にこき使うディッキーに殺意をも抱くようになる。そしてディッキーの許婚マージをも手に入れようと画策する。自分とディッキーの容貌が酷似しているのに気づいたことが、そのきっかけに……。サスペンスの巨匠ハイスミスの代表作。ルネ・クレマンの映画で有名になったが、原題は「才子リプリー」で、典型的なピカレスク・ロマンだ。
  • マローン御難
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    嫌悪すべきことが起ころうとしていた。むかつくようないやなことが! 弁護士マローンの予感は的中した。その夜、会う約束をしていた男――有力な財界人で、防犯委員会の委員であり、おまけにマローン撲滅委員会のワン・マン委員長を自任していたレナード・エスタプールが、冷たい死体となっていたのだ。犯人はマローンに罠をかけた! 酔いどれ弁護士マローンはこの事件にどう向き合えばいいのか。クレイグ・ライス最後の傑作!
  • ニューヨーク・ブルース
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    サスペンス・スリラーの第一人者ウィリアム・アイリッシュの傑作の粋を集めた短編集の続編。本書には、表題作のほか「三時」「命あるかぎり」「特別配達」「ハミング・バード帰る」「送って行くよ、キャスリーン」など11編を収めてある。大都会のなかの人間の孤独と、しのびよる死の影……意表を突く技巧とバラエティに富むテーマに加えて、なによりも光る哀切な雰囲気描写と緊迫したサスペンス……読者の心をつかんで放さない。

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