加納朋子のレビュー一覧
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『ななつのこ』から始まる駒子シリーズ、20年ぶりの最新作ということで、少し前にシリーズ3作を読んでいたのだが、今作は続きというよりも新たな目線で楽しめる物語だった。
ななつのこでは、駒子が作家との手紙のやりとりで始まっていたが、今回は時代の変化もありネットの小説サイトから話は始まり、大学生の玲奈が可愛がるゼロという愛犬も登場する。
ゼロの編では、ひたすら玲奈を守ろうとするゼロや家族の愛情を感じたが、ゼロの目線はそれだけではなく兄貴分である先輩(ワン)をしっかりと見て、彼と会話しているところに尊敬と信頼を感じた。
このワンは、ただものではないのだなと思わせた。
1(ONE)前編では、玲奈の -
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加納朋子さんの作品に期待を裏切られたことはありませんが、本書でも楽しいひと時を過ごすことが出来ました。
帯や裏面のあらすじを読む限り、ミステリー的な要素は殆どなく、『七人の敵がいる』や『我らが荒野の七重奏』のような系統の作品なのだろうと勝手に思い込んでいました。
読み進めていくと、予想通りミステリーと感じられる個所は全くと言っていいほど見受けられずに物語が展開していきます。(私が愚かでした!)
後半になって物語の振幅が大きくなると共に展開もスピードアップしていき、面白さも最高潮に達して、このままハッピーエンドとなるのかなと思いましたが、そこは加納さん!そこから一捻り、二捻りされた真相が姿を現し -
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この作品は加納朋子さん自身の闘病記ということで、それだけは知ってて手にしました。2010年の6月に急性骨髄性白血病との診断を受けられ、入院し化学療法と放射線治療を受けられ、骨髄移植を経て退院される約半年に渡る入院生活の日記、そしてドナーとなられた弟さんの手記も収められています。
読んでみて、加納朋子さんのことがますます好きになりました。この作品を読まなければ知りえなかった、加納朋子さんの“人となり”がよくわかります。辛い辛い闘病生活、抗がん剤の副作用で食欲が低下し嘔吐し、脱毛し、発熱やその他の諸症状…でもいつも明るいんですよね!苦しい中でも、髪の量のことで俳優の竹中直人さんや歌舞伎俳優の -
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『ななつのこ』で第三回鮎川哲也賞を受賞し、作家デビューしていることをすっかり忘れていた。
そして、今になって読むこととなった。
物語は、短大に通う入江駒子が書店の新刊本コーナーで表紙に惹かれて手にした『ななつのこ』というタイトルの本を読んだことから始まる。
幻想的な懐かしさを覚える不思議な絵。
それは、7つの短編集で弱虫なはやてという少年が、サナトリウムにいる優しいあやめさんという女性に身近に起こる些細な謎を相談し、鮮やかに推理してもらうという話。
それを読んだ駒子が、作者である佐伯綾乃へファンレターを書くのだが、そのなかで自分の周りに起こった不思議な出来事も追記しているのだ。
驚くことに -
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ある日サトルの家にやってきた一匹の太った野良ネコ。家の中の狼藉に母親に嫌われてしまい、遠くに捨てに行ったが、しばらくするとまた近所で見かけるようになる。それも首輪をして。ある日サトルはネコの首輪に紙をはさみ、飼い主と思われる人物と文通を始める。
加納朋子の、ちょっと不思議なファンタジー短編集である。てっきり猫の長編だと思っていたので、かなり短く終わってしまった表題作にあらら?と感じたのは事実。
その後、加納朋子らしい幽霊に関する話を数本、終盤は人間(ダメな成人男性)の話が数本、ザリガニである。
全体に、主人公のうまく行かない人間関係を、エクストラで出てくる動物であったりロボットであったり -
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加納朋子さん作品7冊目にして『ななつのこ』。偶然ながらいい巡り合わせ! 本作は、92年刊行の加納さんデビュー作で、7篇の連作短編集です。
主人公は短大生の駒子。偶然一目惚れし、手にした本『ななつのこ』。その本の主人公は<はやて>という男の子で、日常の不思議な出来事の謎を、<あやめさん>という女性が解き明かしてくれます。
駒子は『ななつのこ』著者の佐伯綾乃へファンレターを書きます。第一話を読んだ感想に、思い出した出来事を添えて‥。すると、駒子の周囲で起こる小さな事件の謎を、新たな視点を加え鮮やかに解いてくれる返事が返ってきたのでした。
駒子と綾乃、作中のはやてとあやめさん、この謎解 -
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ネタバレ加納氏の本を読んだのは2作目です。「カーテンコール」がおもしろかったので、読むことにしました。評価の高かった本作を読みましたが、前半は、護と徹子という幼なじみの話が続きます。徹子が恋の対象になるわけでもなく、これといって大きな事件が起こるのでもないので、なぜ、この本が高評価なのか、疑問を持つと同時に、退屈な気持ちで読み進めました。
しかし、後半の2章に入ると、気持ちは一変し、徹子の「持って生まれた特性」故に、思い、悩み、苦しむ彼女に対し、幸せを願わずにいられなくなりました。
冷酷で、悪魔の中の悪魔のような堅利の登場。心をかき乱され、あっと驚く展開が待っていました。
それにしても、堅利の -
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中学に入学したばかりの佐田みづき(あだ名は、色々あって「くーちゃん」)は、ひょんなことから「飛行クラブ」に入部してしまう。
一、「自分自身が」飛行することを旨とする。
二、「落下」は「飛行」ではない。
三、航空機等での飛行は除外される。
四、究極的には、ピーターパンの飛行を理想とする。
これが飛行クラブの活動趣旨である。解説(金原瑞人さん)を先に読んでみたら冒頭にこう書いてあって、「この本を読もう」と決めた。
だって、どうなってしまうのか気になる。成績ビリの子が東大合格目指すとか、寄せ集めのメンバーで箱根駅伝に出るとか、そういうのはまだなんかどうにか頑張って達成するという感動ストーリー -
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あなたは、『まず大前提として、僕は幽霊を視ることができる』と友だちに切り出されたとしたらどう思うでしょうか?
『幽霊』を見たことがあるかは人それぞれです…なんて書いたら四方八方から突っ込みが入りそうですね。”幽霊の正体見たり枯れ尾花”ということわざがある通り、『幽霊』だと思って怖がっていたものが、実は風に揺れる枯れすすきである、古の世から『幽霊』というものは、いそうだけど実際にはいない、というような位置づけがなされてきたものだと思います。
お化け屋敷に潜む奇妙なお化けたちは、人の想像の賜物でもあると思います。恨んでいるんだろうな、その恨みが募って死にきれずに化けて出てくることもあるんだろう -
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再読。面白かった。悲しいことに、この作品もだいぶ前に読んで内容は覚えてなかった。
片桐陶子と萩広海のコンビが最高。陶子の鋭い観察力と、どこか抜けてるけど仕事は出来る調査員の萩が、身近に起こる事件を解決していく。伏線がいっぱいあって気が抜けない。最後にあーそういう事か、となる。加納朋子さんの作品は"最後でやられた"となるのが多い。
この作品は20年以上前に書かれたもの。20年前の男女不平等問題、女性の社会進出の事が書かれてて、う〜んとなってしまった。男性と同じぐらい働いてても女性の給料は男性より少ない、女性が社会進出するのはあまり好まれない事など。20年経って少しは改善さ -
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『ななつのこ』『魔法飛行』に続く〈駒子〉シリーズ第三弾。今回は中編二本の前後編によるラブ・ストーリー。
前作から少し時間が空いてからの刊行のせいもあるのか、三作目にしてさらに趣向を変えてきた。駒子と瀬尾さんの関係がどうなっていくのか?が気になりつつ、まったく別視点の物語が描かれていく。前半の手紙の部分が読みにくく、「何を読まされているんだろう?」となったのだが、他のレビューをみると多くの人が同じ感想を抱いたようだ。さらに、出来すぎた偶然が重なるのがやりすぎに思え、ミステリーとしての驚きはあるものの、今ひとつスッキリしないところはある。しかし読後感はほっこり、ラブ・ストーリーとしての完成度は高