本田由紀のレビュー一覧
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『もじれ』=「もつれ」+「こじれ」。
『戦後日本型循環モデル』日本独特の循環のあり方ともいえる社会構造。バブル崩壊前までに形成された、教育・仕事・家族の3つの社会領域が循環している図。一見効率的に見えるが、何のために学ぶか、何のために仕事するか、なんのために家族と一緒に住むのか、という人間の生涯にとって重要な意味を持つはずの家族・教育・仕事の本質的な存在意義や価値を、掘り崩すように作用していた。バブル崩壊後、モデルは破綻しつつあり、各社会で歪みが出来ている。今後の方向性としては、一方向の循環でなく、双方向になるよう、リカレント教育の推進によるジョブ型雇用の推進、ジョブ型雇用によるワークライフバ -
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仕事・家族・教育の3つの社会領域が一方向的に太く・堅牢に結合した「戦後日本型循環モデル」とする日本社会の捉え方には非常に腑に落ちた。
高度成長期・安定成長期でこのモデルが形成・成熟していったが、バブル経済崩壊の端を発する低成長期になるとこのモデルは劣化が進み、モデルに内在する様々な問題が生じているのが現状。まず、バブル経済崩壊等で仕事の領域が劣化。非正規社員の増加で非婚化・少子化が進み家族領域が劣化。家族の劣化で十分な教育を受けた若者が減るうえ、元々少ない公的支出は依然増えず教育の劣化も進んでいる。
対策(案)は、循環モデルを片方向から両方向にするというもの。現状分析に比べると、割かれたページ -
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本田先生といえば「ハイパー・メリトクラシー」論。
今や社会学の大家となった宮台先生の「終わりなき日常」のように、きっと後世に残る言葉になっていくのではないでしょうか。
「能力」「資質」「学力」「態度」といった、教育の現場ではあまりにも一般的なことばが、実際は数十年の単位で使い方が変わっていく様が解説されています。
日本の学校教育を見るときの、なんだか、「変」な感じや違和感を、新書の分量で的確に指摘して解説してくれる一冊です。
「態度を養う」というのは、どういうことを表現しているのか。
特定の行動を強いることを持って「態度が身についた」と表現されることはないのか。
しかし、近年そうした議 -
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本田さんの著作の中では、読みやすく分かりやすい。当人はあとがきで、分かりにくくて申し訳ないと謝罪してるけど。
行政や法律で「資質」「能力」の育成とか謳ったところで立法の精神が行政に引き継がれるとは限らない。例えば「能力」もそのコトバの解釈の仕方で現場で用いられるときには立法時とはずれた能力観になったりする。
最終章で提言された「水平的多様化の推進」にはとっても同意する。何とか多様性を受け入れることのできる社会になってほしいもんだ。ただこういう書籍で触れられないのが、到達度をいかに確保するかだ。到達できないことを多様化にかこつけて肯定しちゃうのは困るよね。 -
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ネタバレPISA(国際学習到達度調査)等、国際的な調査では、日本人は高い評価をされているのに、賃金水準は、他国との比較でもその評価に見合うものとなっていない。加えて、本人の意識が「職務を十分にこなすスキルが足りない」という自己評価になってしまっている。社会的な役割発揮意識が、諸外国の中でも目立って低いのも大きな特徴。どうして、そうなってしまっているのか。
著者は、<「能力」「資質」「態度」という言葉が、社会と人々をがんじがらめにしていることが、多くの問題を生み出してしまっている>、ということを仮説として提示。このことがどうして異常なのか、それはどのようにしてできあがってきたのか、そのがんじがらめに -
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著者の主張がデータと共にわかりやすく展開される良書
家庭環境に由来する垂直的序列化の”恩恵”を預かって生きてきたので、少し心苦しいところもあったが、特に”能力主義”と”meritocracy”の相違についての考察と、それがもたらす力学的効果についての考察にうならされた。
データの扱いや分析方法に若干の主観を感じなくもないが、新書という限られたボリュームで、これだけ学術的な内容を記述しきった著者の熱量に、著者の抱く本物の危機感を感じた。
僕も、自民党•保守団体の主導する昨今の教育改革の”教化”にとても危機感を抱いているのでその点での同意は勿論、日本型メリトクラシーと、ハイパーメリトクラシー -
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○確かに男女別分析でも交互作用は大雑把には見られますが、それだと、男女の回帰係数の差が統計的に有意なものかどうかはわかりません。交互作用の有無を統計的に示すためには、交互作用項を含めた重回帰分析が必要になります(228p)
★他の統計初学者向けの本と異なり独特。まず古市憲寿氏と須藤康介氏の対談形式で進む。そして統計ソフトSPSSの操作と結果の読み取り方の解説が詳しい。記述と説明をきちんと求めているところは好感を持てる。γ係数など他の本では目にしない用語の解説が多い。クロス集計から始まり、他の本で最初に出てくる平均や標準偏差が第4章でやっと出てくる。 -
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本書はかなり真面目にアカデミックに多くのデータを取り上げ、それらの数値に基づいて著者の考えを感情的にならずに述べられている。
冒頭に「あらかじめ予測される反論に対する回答」みたいなのを出しているので、ちょっとずるい気もするが、これもアリだろう。
若者が社会に対する「適応」「反抗」を身につけることの必要性、また現状のキャリア教育の問題点を指摘している。
「大企業の学卒者一括採用」の弊害についても他国との比較も交え、わかりやすく解説されていたのが印象深い。
もったいないところは本のタイトルで、あえて今風の「なぜ〜のか?」とか「〜力」を使わなかったと思うが、あまりに地味なタイトルのため、注目されに -
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スクールカーストの実態を一冊の本にまとめたのは評価されるべきで、内容も示唆に富んでいます。
中学・高校での人間関係はサバイバルだと感じますし、僕らの時とは質が違っています。カースト序列を変更する手立ては(今のところ)無くて、カーストそのものを廃する方法も分かっていない……。人間関係を考えれば、仲の良い人同士で集まってグループが出来上がるのは当たり前の事なのですが、カーストの『見えない力』によって自分の序列に合った人としか接する事が出来ないのは問題だと思います。
カースト上位はクラス運営の実権を握っているが円滑に進めなければならないという暗黙のプレッシャーがあって大変だし、カースト下位は上位者に