本田由紀のレビュー一覧
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たまたま、東大生の親はどんな家庭教育をしていたかという文脈でこの本の一部が紹介されていたが(地方は共働きの親が多くお金のかからない読み聞かせなどを重視しているという偏った内容)、本の内容自体は、そんな物見胡散ではなく、学内に内在する地域格差や経済格差を紐解き、それが日本の官僚や大企業の人材を排出する機関だとすれば内から検証すべきではと警鐘を鳴らすもの。
地方から都内の大学に進学したものとして「あるある」と当時の思い出を抉られる内容。
一つ目は地域格差。地方は公立進学校(中学受験していない)出身者が多い中、首都圏は私立中高一貫校の出身が多い。それはすなわち、親の学歴や職業の違いのみならず、当 -
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今の日本の停滞の原因のひとつが「偏差値エリート」にある、と私は見ている。
この新書は、「学歴エリート」ということばで、東大卒についてデータで掘り下げ、
私の「仮説」を検証してくれている。
序章、第一章、第二章で今の東大生の多くが首都圏の私立中高一貫校の男性であることを明らかにしてくれている。
36校の有力校だけで東大生の半分を占めるという。36校の中には灘、ラサール、東大寺、久留米、旭丘、甲陽など
首都圏以外が10校あるにはあるが、大半が首都圏。男子校が17校。女子高は3校。
地方、女性、大学第一世代はマイノリティ。
つまり、首都圏で両親が大卒で年収が一千万以上の男子が恵まれた環境から東大 -
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ネタバレとっても面白かった。統計データの国際比較をもとに、日本がいったいどんな国なのか分析している。統計分析って面白いな。そういう勉強すればよかったな。
ほぼ同時進行で読んでいた「学校がウソくさい」に書いてあった通り、国際比較データから見ても、日本の学校は異常に1クラスの人数が多い。なんとかしてくれ文科省。そして中学校の先生は世界一忙しい。(そんな現場で頑張ってきた自分をほめてあげたい笑)。
ジェンダーの問題も日本は異常に遅れている。これは国際比較ではないが、自民党の政治家の過去の女性やセクシャルマイノリティに対する問題発言の一覧も超興味深かった。日本を腐らせ続けている古臭い考えに凝り固まった政治家 -
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ビデオニュースで本田由紀氏がでていて、前のめりで語っていたので久々に彼女の本を読むことにした。 以前は教育分野の本を読んだ気がするのだけど、そこにも教育に軸足を置きながらも社会を見つめていた著書だった気がする。
ちくまプリマー新書からですところがいい。私も迷わず手にとった、これなら私にもすらすら読めるだろうと思ったから。果たして予想どおり、予想どおり読みやすいのだけど、表やグラフが多く、その読み込みが少し複雑なものがあったり、指摘されている部分が日本への苦言にとどまらず、自分にもグサグサと突き刺さってくるのでその辺りではすらすらとはいかず、読み淀んでしまった。
兎に角、“日本”を知りたけ -
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日本における人間の「望ましさ」とは何なのかを他国との比較や戦前期から近年までの日本の制度や政策を「能力」「態度」「資質」の言葉の用法に踏み込んで論じている。その中で、垂直的序列化は格差を生み、水平的画一化はふるまい方や考え方を強要(同調圧力)してきた背景があり、これからの時代には水平的多様化が必要であると著者は述べている。
個人的にも格差や貧困、マイノリティ、少子高齢化や人口減少等を考える上でも、多様性や柔軟性は必須と考えるため、排除の仕組みを変えていくことや誰ひとり取り残さない政策は国としても、小集団のグループにしても必要と思う。そして、能力だけで人を判断するのではなく、多様な生き方を受け入 -
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世帯の主な働き主、多くの場合は夫であり父である男性、を企業組織に抱え込んでもらい、賃金などを長期に渡って保障してもらえれば、政府が本来責任を担うべき福祉などへの支出を節約できたからです、
このような明快な言い方で、いろいろおかしくて相当やばい日本、日本政府、自民党をバサバサと。日本に居心地が良いという人の気が知れないけど本当に居心地悪さをデータと本田さんのバッサリざっくり率直な物言い、分析で斬ってくださるので気持ち良い、そして徒労感、不安。
先のような理由でとても簡単な選択制夫婦別姓という選択さえできないんだよ。
一つ一つのテーマとデータが絡み合い次の項目に繋がる。時代がつながる。そして分 -
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私たち日本人が受けた学校教育が誰によってどのような人間になるように作られたものなのかを明らかにし、それが現在の日本の停滞感と閉塞感を生んでいると明らかにする大著。
2020年現在はコロナ禍の中、貧困と格差拡大が社会問題として大きくスポットライトを当てられており、現状に対する一つの解答を提示していることはまさに今だからこそ読むべき一冊。
特に漫然の学校教育の中で使われてきた「能力」「態度」「資質」などという抽象的な語の意味を読み解く良書。
現役教員はもとより、教員を目指す学生や教育行政に携わる方々、目指す学生にとって示唆に富む一冊になるだろう。
・日本の低成長、停滞感の原因は教育にある。
・日 -
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教育、仕事、家族の問題の本質について、構造的に明らかにしており、いずれの論点もうならせられるもの。興味深い。
ただ、指摘は鋭いが、具体的に政策としてどのように落とし込めるのかという点はやはり弱い。それを少しずつ、具体化させたいと思う。
以下、特に印象に残った点。これ以外に、最終章のなかの「親としての在り方」も強く問われた気がする。
・教育の病理:学ぶことの意義自体が問われてこなかった。かつ、自分と自分の家族に閉ざされた利害で動いている→社会の連帯が育ちにくい。
・家族、仕事に対しても意義が問われていない
・柔軟な専門性、柔らかい鎧をもて
・ある組織のメンバーに入れてもらうという働き方が日 -
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現高校生の者です。少し、自分の経験と照らし合わせながらスクールカーストについて書いてみたいと思います。
僕は、中学生の時どちらかといえば下位層でした。成績は良かったので、完全なる最下位層になることはありませんでしたが、劣等感というのは感じていました。スポーツも得意で無かったですし。
そんな僕に、中2の時転機が訪れます。下位層を仕切ってるような奴が僕に悪口を浴びせてくるので、僕はそいつと関わらないようにしました。どうやったかというと、中位層の人たちと仲良くなるようにしたのです。前述のように、僕は「どちらかというと下位層」であり、もともと中位層にも友達が何人かいたため、その人たちと良く話すように -
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相変わらず熱い本田先生による憂国の書。
「社会の維持さえ難しくなるような危機はもう目の前に迫っている(p4)」で始まり、「多くの人々が「このままではだめだ」という感覚を生々しく抱く度合いが高まっている(p52)」で終わっている。熱いけれど分析は冷静で極めてわかりやすい。
戦後日本の3区分で「戦後日本型循環モデル」がいかに成立・普及し、破綻したか、2つの図と4つの環境要因で明快に説明されている。そして「新たな社会モデル」では従来モデルにはない逆向きの矢印や仕事・教育・家族の3領域を覆う「布団」が示されている。
「このままではだめだ」と思う1人として、それぞれの領域での関わりを意識していきたい。