本田由紀のレビュー一覧
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著者の主張がデータと共にわかりやすく展開される良書
家庭環境に由来する垂直的序列化の”恩恵”を預かって生きてきたので、少し心苦しいところもあったが、特に”能力主義”と”meritocracy”の相違についての考察と、それがもたらす力学的効果についての考察にうならされた。
データの扱いや分析方法に若干の主観を感じなくもないが、新書という限られたボリュームで、これだけ学術的な内容を記述しきった著者の熱量に、著者の抱く本物の危機感を感じた。
僕も、自民党•保守団体の主導する昨今の教育改革の”教化”にとても危機感を抱いているのでその点での同意は勿論、日本型メリトクラシーと、ハイパーメリトクラシーの弊害も、感じていたモヤモヤを言語化してもらった印象。
最後に、解決策の提示とその限界についての言及があり、考えるきっかけにもなった。
著者自身お認めのように、昨今の一般的な新書とは構成が違うとは思うが、その分著者の真摯な態度と強い危機感がビシバシ伝わってきた -
Posted by ブクログ
○確かに男女別分析でも交互作用は大雑把には見られますが、それだと、男女の回帰係数の差が統計的に有意なものかどうかはわかりません。交互作用の有無を統計的に示すためには、交互作用項を含めた重回帰分析が必要になります(228p)
★他の統計初学者向けの本と異なり独特。まず古市憲寿氏と須藤康介氏の対談形式で進む。そして統計ソフトSPSSの操作と結果の読み取り方の解説が詳しい。記述と説明をきちんと求めているところは好感を持てる。γ係数など他の本では目にしない用語の解説が多い。クロス集計から始まり、他の本で最初に出てくる平均や標準偏差が第4章でやっと出てくる。 -
Posted by ブクログ
本書はかなり真面目にアカデミックに多くのデータを取り上げ、それらの数値に基づいて著者の考えを感情的にならずに述べられている。
冒頭に「あらかじめ予測される反論に対する回答」みたいなのを出しているので、ちょっとずるい気もするが、これもアリだろう。
若者が社会に対する「適応」「反抗」を身につけることの必要性、また現状のキャリア教育の問題点を指摘している。
「大企業の学卒者一括採用」の弊害についても他国との比較も交え、わかりやすく解説されていたのが印象深い。
もったいないところは本のタイトルで、あえて今風の「なぜ〜のか?」とか「〜力」を使わなかったと思うが、あまりに地味なタイトルのため、注目されにくい面は否めない。
せっかくいいことが書かれているので、もうひとつ工夫してもよかったのではないか。 -
Posted by ブクログ
スクールカーストの実態を一冊の本にまとめたのは評価されるべきで、内容も示唆に富んでいます。
中学・高校での人間関係はサバイバルだと感じますし、僕らの時とは質が違っています。カースト序列を変更する手立ては(今のところ)無くて、カーストそのものを廃する方法も分かっていない……。人間関係を考えれば、仲の良い人同士で集まってグループが出来上がるのは当たり前の事なのですが、カーストの『見えない力』によって自分の序列に合った人としか接する事が出来ないのは問題だと思います。
カースト上位はクラス運営の実権を握っているが円滑に進めなければならないという暗黙のプレッシャーがあって大変だし、カースト下位は上位者に見下されて大変だし、結局どこに属しても苦痛であるのは変わりません。
グループ内での人間関係は良好で、心の安寧がありますが、上位グループでは足の引っ張り合いが横行し、居場所としては不安定のように感じます。『今度は私が(下位グループに)落とされるかも……』という不安を抱えて生活していては、精神的に滅入るでしょう。
僕の中学生活は、教室では一才喋らないで本を読む地味で無口な心配児でしたが、部活動のテニスではぎゃあぎゃあ騒いで先輩・後輩共に仲良くしていました(部長でしたしね!)。そんな『教室では大人しいけど部活では円満な人間関係』だったから、随分と先生方に心配されていたようです(笑)。
何が言いたいのかというと、学校では問題児でも、家では家事を手伝う子だっているだろうし、その逆もあるだろうし、学校だけが全てではないということです。自分の安寧する居場所を最優先で確保していれば、多少の我慢もできるのでは、と思います。しかし、生活の殆どを学校で過ごす学生にとって、その学校生活が苦痛であるならば、焼け石に水かも知れません。
その、スクールカーストの何が嫌かって、カーストの基準でしか人間を測っていないんですよね。多様性を認めない、これが感情的に許せない。性格や人格等ってのは、多様であるからこそ面白いのであって、それを教室内の雰囲気に合致するように行動しなくてはならないってのは違和感があります。
例えば、僕の知り合いに空気を読まない人がいますけど、『お前空気読んで行動しろよ』と強制するのは簡単ですが、それは僕と彼の関係のみ適用されるのであって、彼が持つ他の友達からは『(空気を読まないのが)いい!』と言ってくれる人だっているかも知れません。だから強制はしないし、できるものでもありません。彼のすべてが僕のものならば話は別ですが、彼は彼の人間関係があります。僕はそれを尊重したいのです。
そういった尊重性が教室内カーストには無く、上位グループ・下位グループが共に蔑み合い、畏怖し、負の感情を持っていれば、そりゃあうまくいかないでしょう。
学級運営を円滑に進めるためにはスクールカーストが必要悪と、教師側の意見として挙がっていますが、スクールカーストを利用しなくても円滑に進められるシステムがあると思うし、もっと研究が必要です。これからの成果に期待します。
僕の評価はA-にします。 -
Posted by ブクログ
本田由紀さんによる追加考察
①「スクールカースト」のような集団間の上下関係が最も顕在化するのが教室内であるならば、その教室の構造にこそメスを入れる必要があるのではないか。
②「スクールカースト」が顕在化するのが教室内であるとしても、自分(たち)の押しの強さや有利な立場をよいことに、他者に敬意を払わず押しつぶすようなふるまいは、日本社会のいたるところに見られるのであり、そのようなより広い社会的な素地をももっと踏み込んで問う必要があるのではないか。
この2つのことについては、私自身も本書を読み進めていく中で感じていたことと同じだったので、私自身も教員としての経験を伊達に積んできたわけではないなということを再認識することができたのが、最大の収穫かなと思っている。
それにしても、インタビューに応じた若い教員の科白を読んでいて、教員の質が低下したなと言われざるを得ないことも痛切に感じてしまったので、まずは私たち公立学校教員とはそもその誰のために、何のために存在しているのかをきちんと総括しておかなくてはならない時期に来ているということにも痛感させられた、ということも付け加えておきたい。 -
Posted by ブクログ
「いじめ」という問題ではなく、「スクールカースト」という現象として教育の現場を探求していく一冊。
感情論になりがちなテーマに対し、アンケートやインタビューを用いた定量、定性の両角度から考察を行っている点は評価できる。(後半の教師陣の意見は極端すぎるとおもうが笑)
そもそも群れを作る動物は狼であれサルであれ自然に優劣をつける習性がある。生物学的にそのほうが集団での意思決定が容易だからだ。(サルで言う餌の配分、クラスでの文化祭の出し物など)このことを踏まえると、この本では「各人を尊重するような道徳教育を~」のような理想論ではなく、きちんと「環境を変える」や「感情をコントロールする」などの現実的で生産的な提言がなされており、一読の価値がある。
最後にスクールカーストについて私が思うことは能力が必ずしもカーストを決めるわけではないということだ。もしカースト上位に○○力に秀でた人間が多いとすれば、それはスクールカーストに適した○○力が各層ごとに形成されているだけに過ぎない。その為、下位カーストに配属されることで、自分が先天的に劣っているときにやむ必要はないのだ。