ニートは「情けない」「甘えている」などの根拠のない精神論が一般大衆の間に罷り通り、膾炙される中、そんな風潮に異議申し立てをしているのがこの本。
一章では、ニートには、非求職型(仕事に就きたいが、今仕事を探していない)、非希望型(今仕事に就きたいと思わない)など様々な種類があること、各々に様々な
...続きを読む背景があって(資格試験準備中、家事手伝い、療養中など)、一概には捉えられないこと、一般の固定観念と異なり、ニートと呼ばれる人の約4分の3が職に対する意欲を持っていることなどが挙げられていまる。
二章では、ニートを敵視する風潮は、97年の神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)により加熱した青少年ネガティヴキャンペーン(若者バッシング)が形を変えたものに過ぎない、と述べられている。殺人、強姦などの少年犯罪が1960年代以降、減少傾向にあるにもかかわらず、パラサイトシングル、ひきこもり、ニートなどの若者に対する偏見と憎悪に基づく青少年ネガティヴキャンペーンが蔓延している風潮に警鐘を鳴らす。
三章では、「働かざるもの食うべからず」などニート問題の責任を本人や保護者に求めてばかりで、社会構造に目を向けているものが僅かしかないことが指摘されている。この章は実に痛快だった。
ニートという語を喧伝することで金儲けしている輩や、ニートを自分より下の立場にいると見なして優越感に浸りたい輩がはびこっているからこれほどまでに、「ニートは情けない」などの戯言がもてはやされているのだろう。
この本は日本社会がいかにニートに対する偏見と憎悪に満ちていたかを身を以て思い知らせてくれた一冊です。この本はもっともっと多くの人に読まれるべきである。