本田由紀のレビュー一覧
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筆者と同い年である。ここ数年来、メディアに登場することも増えてきた気鋭の教育社会学者である。教育と仕事と家族が研究テーマだそうだ。この本が初出されたのは2008年。くしくも安部首相が退陣したころだ。この本を今、読んでも当時と何も変わらないことに衝撃を受ける以上に、より選別や排除の論理が進んでいる気がする。一方では絆といいながら、選別と排除をテーゼとする人が人気取りを競っている。今の状況を変えていくには時間がかかる。かかるからこそ、一見、決めれない状況に見える。がらがらポンで一気に決めることより、よくよく考えながら行動する時間が必要であると思う。
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キャリア教育の重要性は確かにそうなんですが、当人にとっては今一つ実感が持てません。特に高校生などは、社会にはどんな仕事があるのか、抽象的にしか把握できず、興味を持ちたくても持てない現実があります。
僕らがまだ小さい頃の将来の夢はプロ野球選手やサッカー選手、ケーキ屋さん等が上位で、サラリーマンはランクインすらしていなかったように記憶しています。仕事の大多数はサラリーマンで占められているのに、どうして現実との齟齬が生じるのだろうか?と友達と議論しましたが、『サラリーマンは実際何をやっているのか分からなかったから魅力的に映らなかったのでは?』という結論に至りました。ということを思いだしました(笑)
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4月、たまたまラジオをつけていたときに、本書に関連して教育のあり方について問う番組が流れてきました。その内容が自分も以前、疑問に思ったり気になっていることと少し重なっていたので、本書を読んでみることにしました。
全体的に私の頭には難しい言い回しで、消化し切れていない部分が多々ありましたが、ほんのちょっぴりは理解できたつもり。
本書で特に強く訴えているのは、以下二点の強化なのかな、と思います。
1. 業務・仕事に”適応”するための、実用的・専門的な技能と知識の教育
2. 雇用する側の不当な扱いに”抵抗”するための、雇用者としての権利に関する教育
“1”については実際に「もう少し学校で実 -
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ネタバレこの本は、いかに社会が様々な点において「軋んでいるか」が書いてある一冊である。一つの問題に対して考察しその問題の対処法を考案するというより、著者の目から見て現在社会に存在するように見える問題の洗い出しを行っている。
第一章「日本の教育は生き返ることができるのか」では、過去(1960年代)と現在(2008年)の「学歴社会」の違いについて主に考察し、現状の格差社会における教育の役割について著者の考えが述べられている。過去の「学歴社会」は新卒が会社に入った後、社員間の「学歴格差」により給料の上がり方などが違ってくることを主に指していたが、現在では「会社に入る前の段階」において「学歴格差」が影響を -
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タイトル通りの本。
もともと英国でできた「ニート」の定義を、日本では拡大解釈し、曲解したあげく現在の「ニート≒ひきこもり」のマイナスイメージができたそうな。
だから、「(俺は正しい意味ではニートには定義されないから)「ニート」っていうな!」ということらしい。
ただ定義付け、単語の使い方の誤謬だけに済んでいればいいが、実際はそうではない。
それによって個人の問題としてとらえがちになってしまったため、雇用情勢の改善が進みにくくなってしまったらしい。これは問題だ。
ほかの本や雑誌なども読んだうえで思うことは、やはりメディアはもっと注意深くあるべきだということ。これはスポンサーにヘコヘコしろという意 -
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ネタバレ『ニート問題の間違い』を本筋として、3人の著者が違ったアプローチで展開しています。
第1部執筆の本田由紀氏では統計データから、
第2部執筆の内藤朝雄氏ではマスコミの煽動から、
第3部執筆の後藤和智氏では新聞、雑誌等のメディアから、
それぞれ述べています。
やはり特筆すべきは第1章です。
ニート問題=個人の心の問題と片付ける風潮を一蹴、つまり『ニート自体は昔から存在しており、近年になって急増した、あるいはニートが突然誕生していない。統計データからは時系列ではニート数はさほど変化していない』点と、『問題はフリーターで、彼らも単純に正職がないからフリーターにならざるを得なかったところが -
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ネタバレ[ 内容 ]
「ニート」とは、働かず、就学もせず、求職行動もとっていない若者を指す言葉で、日本では二〇〇四年頃より使われ始め、その急増が国を揺るがす危機のように叫ばれている。様々な機関が「ニート」の「人間性」を叩き直そうと「支援」の手を差し押べており、多額の予算が動いている。
このような状況下において、本書では、まず、日本での「ニート問題」の論じられ方に疑問を覚える本田由紀氏が、「ニート」という言葉自体の不適切さを量と質の両面から明らかにする。
また、『いじめの社会理論』の著者である内藤朝雄氏は、「ニート」が大衆の憎悪と不安の標的とされていることを挙げ、憎悪のメカニズムと、「教育」的指導の持つ -
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本書を通じて「適応」と「抵抗」という言葉が幾度も出てくる。この2つの言葉を各人の置かれている立場で考えてみてほしいということが、最終的なメッセージと認識した。
・キャリア教育:社会や職場への適応のため。いかなる変化・領域にも対応可能な汎用的・一般的スキルをつけておけばいいという発想。しかし!自己実現アノミー昂進の問題あり!
・労働の基本的知識・政策・法律:しんどい現実や理不尽な事象に抵抗するため
この2つを各段階の教育機関やらなければならないのだから、かなり周到にカリキュラムを組まねばなるまい。浮ついたスローガンや理念から、地味で着実で堅牢な知識・技術の習得にシフトせよといっている(p.161 -
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[ 内容 ]
一九九〇年代に、若者の仕事は大きく変貌した。
非正規社員の増加、不安定な雇用、劣悪な賃金…。
なぜ若年労働者ばかりが、過酷な就労環境に甘んじなければならないのか。
それは、戦後日本において「教育の職業的意義」が軽視され、学校で職業能力を形成する機会が失われてきたことと密接な関係がある。
本書では、教育学、社会学、運動論のさまざまな議論を整理しながら、“適応”と“抵抗”の両面を備えた「教育の職業的意義」をさぐっていく。
「柔軟な専門性」という原理によって、遮断された教育と社会とにもういちど架橋し、教育という一隅から日本社会の再編に取り組む。
[ 目次 ]
序章 あらかじめの反論
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いわゆる「就職」でなく「就社」であったこれまでの日本における教育と社会の関係の実体がよく分かった。これまでの日本は「何が出来るか(職能)ではなく、「どれだけ優秀か(潜在能力)」で人を採用するため、新卒一括採用、学歴主義が行われてきた。しかし、これこそ高度経済成長期に特有な状況であったのであり、戦後50年の状況こそ特別だったと言うことになる。したがって、いつまでも戦後の良かった時代の習慣にしがみついていることは出来ない。
また、最近大学でやたらと喧伝される「キャリア教育」なるものの怪しさを、本書を読んで再確認できた。「自分のキャリアを自分で作り出せ」「自分探し」「夢を追いかけろ」的なものはナンセ -
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どうせ安易なニート擁護の本であろうと期待せずに読んだのだが、ちゃんとしたデータに基いた精緻な議論がなされており、読んでよかったと思える内容だった。ニートの増加という「社会現象」を何の疑いも無く信じていた自分が恥ずかしくなった。無気力、怠け者といったイメージのいわゆる「ニート」ととして想起されるような若者は、ニートと定義される人々全体のなかではほんの一部に過ぎず、その数は以前と比べてあまり変化していないという分析には特に納得させられた。実体のない「ニート」という虚像だけが一人歩きして、そのような言説に基いて、政策や社会運動が進められているのは実に愚かしいことだと思う。本書は、ニートについて考え