あらすじ
学力格差や体験格差が深刻化する日本の教育。そんな中、入試難易度や威信という点においてトップに君臨しつづける東京大学に進学するのはどんな人たちなのか。学歴エリートはどこからきてどこへ行くのか。中高一貫男子校出身者の多さや地方女性の少なさの実態、親の学歴、家庭環境や文化経験、卒業後の職業・年収・役職、結婚や子育て、そして社会意識や価値観まで。東大卒業生を対象に行われた大規模な独自調査のデータから明かされる、学歴エリートの生態と格差社会のリアル。 【独自調査から徹底検証! データから読みとく学歴エリートの実態】こんなに多い!中間一貫男子校出身者/幼少時の読者や文化経験は?/地方女性という困難/親の学歴はどう影響している?/就職・年収・役職/「東大女性は結婚できない」は本当?/学歴エリートの偏った社会意識……
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Posted by ブクログ
たまたま、東大生の親はどんな家庭教育をしていたかという文脈でこの本の一部が紹介されていたが(地方は共働きの親が多くお金のかからない読み聞かせなどを重視しているという偏った内容)、本の内容自体は、そんな物見胡散ではなく、学内に内在する地域格差や経済格差を紐解き、それが日本の官僚や大企業の人材を排出する機関だとすれば内から検証すべきではと警鐘を鳴らすもの。
地方から都内の大学に進学したものとして「あるある」と当時の思い出を抉られる内容。
一つ目は地域格差。地方は公立進学校(中学受験していない)出身者が多い中、首都圏は私立中高一貫校の出身が多い。それはすなわち、親の学歴や職業の違いのみならず、当人の人脈(同じ学校出身の先輩同級生と日常に繋がっていられる)にもつながる。都内の大手企業や官公庁でも同様の状況が続く。公立の大学は設備も古いし、大人数の教室、教授によるケアも手薄だし、お金持ちの私学出身者がいきなり公立に落ちてきて満足できるんだろうかと疑問に思っていたが、彼らはそのぬるま湯の人脈の中で生きているんだから関係ないよなあ。東京私学出身の子とは仲良くなれなかったなあ(ただただ怖かったのだが、私なぞ視界に入ってなかったし、私と仲良くするメリットなかったんだろう)。
二つ目は第一世代問題。アメリカで第一世代(親が大卒でない)学生でアイビーリーグとかに入ってしまった学生が途中で辞める話は聞いたことがあったけれど、米国の大学は学費が高い=ローンの重圧、みたいな話と相まって、日本を重ねて考えたことはなかった。でも古い例えだが、キューティーブロンド(だっけ。ウィザスプーンが弁護士になるやつ)で彼女が馴染めないシーンって、その問題をコミカルにしたものだったんだろうし、違う階層に紛れ込んでしまった一般人という意味では、日本の大学でも十分あり得る。その意味では、お金をかけて鍛えられた学力という意味で東大生もそうだが、幼少期からお金で築かれたエスカレーターを登れる某私大も凄そうだなあ。
いやはや、私は過去を振り返らない(あの時代に戻りたいという気持ちがわかない)タイプではあるが、大学時代には戻りたくないという気持ちを新たにした(東大じゃないのに笑)。
Posted by ブクログ
今の日本の停滞の原因のひとつが「偏差値エリート」にある、と私は見ている。
この新書は、「学歴エリート」ということばで、東大卒についてデータで掘り下げ、
私の「仮説」を検証してくれている。
序章、第一章、第二章で今の東大生の多くが首都圏の私立中高一貫校の男性であることを明らかにしてくれている。
36校の有力校だけで東大生の半分を占めるという。36校の中には灘、ラサール、東大寺、久留米、旭丘、甲陽など
首都圏以外が10校あるにはあるが、大半が首都圏。男子校が17校。女子高は3校。
地方、女性、大学第一世代はマイノリティ。
つまり、首都圏で両親が大卒で年収が一千万以上の男子が恵まれた環境から東大に入れる。入りやすい。
大学生活でも地方女性第一世代は馴染みにくい。交わらない。これが就職、就職後にも影響し、「偉く」なりにくい。
東大女子は結婚できない、は都市伝説。決してそんなことはない。ただ、相手の半分は東大生。
子供に教育熱心だが、それが実を結ぶかどうかは別。
東大生は必ずしも自己責任論を振りかざすわけではないが、再分配には消極的。
私の仮説を肯定する内容だったと認識している。
小学校の時から地元に馴染まず点数を取るだけの勉強を重ね有名中高一貫に入り、東大に入り、大企業や官僚になる。
狭い社会しか知らない彼らはマイノリティの気持ちなどわかるはずがないのだ。
そういう人間が政治をすれば偏った政策になるのは当然のこと。
そしてたちが悪いのは、そういう誤った政策を「間違えていた」と認めないこと。
コロナのような不測の緊急事態には失政も当然ありうる。
間違えたらただせばいいだけのこと。しかしそれを認めず、あろうことかアベノマスクは口頭発注、などと嘘をつく。
偏差値エリートのやりそうなことだ。
政治家にしっぽを振って嘘の上塗りをするモリカケサクラはもっと悪いか。
国家権力で人を縛ることのできる検察、警察に入れば、「こいつがあやしい、犯人に違いない」と目をつければ、
それを「正解」として、なんとしても○を貰うためにあらゆる姑息な手段を用いて犯人に仕立て上げるのは目に見えている。
最近やたらめだつ人質司法がそれだ。
これは国民誰しも被害者になりうるから、失政よりたちが悪い。
そういう人たちを生む土壌がこの国にある、ということがはっきりする新書。
防止策は、東大自身が、そうした偏差値エリート、学歴エリートを生まないようにすることなのだが、、、
今の入試の基準を変えるのは簡単ではないのだろうな。
さらにいえば財務省をはじめとする役所や大企業が、学歴で採用しないことなのだが、、
これも無理なのかな。選んだ理由を学歴にしておけば言い訳がたつから。人事採用の保身だ。
負のスパイラル。
今の日本はそういう状況にあるということ。
マイノリティとまじわり、ダイバシティ&インクルージョンに目覚める場。
これをどうやって作ればいいのか。
かくいう私も中学受験組。たまたま大学受験の必要のない学校だったので、そういう苦労はせず、
変なプライドは持たなかった。中学は教学だったが、女性との接点はほとんどなかったな、、口もきけない。
運よく結婚できて、やっと女性と語り合うことができて(実は壮絶な口喧嘩だが)、
ダイバシティを体感した、というところだろうか。
そういうこともなく、自分が恵まれていることに気づかないまま権力を握ることの危険さ。
世襲議員と相まって、日本を加速主義的に劣化させているように思う。
令和の米騒動の原因も減反政策という失政を改めようとしない官僚と、それをコントロールできない政治家が原因。
それを放置してきた国民。声をあげねば。
序章 「東大卒」は日本社会の何を映しているのか(本田由紀)
重なり合う象徴としての東京大学/知的優秀さの象徴としての東大/東大卒業生の社会的地位/東大の研究力は高いのか/東大に凝縮される「教育格差」/東大におけるジェンダーギャップ/闘争・運動・抵抗の宿る場としての東大/日本社会の現状と「学歴エリート」としての東大/東京大学を対象としたこれまでの調査など/東京大学卒業生に対する調査の概要/本書の構成
統計用語の解説
第一章 「地方出身東大女性」という困難――出身地格差とジェンダー格差(久保京子)
東大生の地域・性別の偏り/なぜ「地方女性」に着目するのか/東京大学の地方女性を調査することの困難/分析に用いる方法/親学歴における地方と東京圏の格差/フルタイム率が高い地方女性の母親と無就業率が高い東京圏女性の母親/文化的資源の豊かな東京圏女性とそれを追いかける地方女性/地方女性の親子関係/読書量の多い地方女性、海外経験がダントツに多い東京圏女性/友だちは多くないが交際経験のある地方女性/誰に東大進学を勧められたか/地方女性の特徴/地方女性の困難/女性が少ないことや地方学生が少ないことへの問題意識/まとめと提言
第二章 東大生の学生生活――「大学第一世代」であるとはどういうことか(近藤千洋)
大学進学は教育格差の終わりか?/見過ごされたマイノリティとしての大学第一世代/大学第一世代の東大生は「男性」「地方出身」「共学出身」に多い/「東大に入学した理由」に見る大学第一世代の不利/大学第一世代は「実利志向」が強い?/東大に馴染めたのは誰か/ハラスメントや差別を受けやすいのは誰か/学業にはどう取り組んでいるか/課外活動にはどう取り組んでいるか/誰が・どんな人脈を形成しているか/学生生活の「大きな分断」/“不器用”な大学第一世代は就職活動でも不利?/まとめと提言
第三章 東大卒のキャリア形成――学歴資本は職業的地位にどうつながるか(本田由紀)
「学歴エリート」の職業キャリアとは/就労状態と雇用形態――働き方の分布はどうなっているか/職種――どんな仕事をしているか/役職――どのくらい「偉く」なっているのか/勤務先の規模――大企業に就職しやすいのか/転職経験――内部労働市場にとどまっているのか/収入――高い報酬を得ているのか/仕事の性質――どのように感じながら働いているのか/仕事における自身の性別の有利・不利/学歴資本は有効か/まとめと提言
第四章 東大卒の家族形成――だれと結婚し、どんな家庭をつくるか(中野円佳)
3つの問い/東大卒の女性は結婚できないというのは本当か?/女性の東大卒業生の結婚相手は半数程度が東大卒/東大卒業生の出会い/東大卒業生が結婚相手選びで重視したこと/東大卒業生の子どもの数/仕事と子育てを両立してきた女性の卒業生たち/東大卒業生の子育て、階層は再生産されているか/東大卒業生を親にもつ子どもは受験をしているか/まとめと提言
第五章 東大卒は社会をどう見ているか――自己責任論、再分配支持、社会運動への関心からジェンダーギャップ認識まで(九鬼成美)
なぜ東大卒の社会意識を分析するのか/なぜ格差や不平等に関する社会意識の分析が必要か/東大卒業生を育む学び、学び方、課外活動/東大卒業生はどのような社会意識をもつか/「自己責任意識」はどのように育まれたか/「再分配支持」はどのように育まれたか/「社会運動への関心」はどのように育まれたか/「ジェンダーギャップ認識」はどのように育まれたか/東京大学の学びや生活以外の社会意識への影響/専攻と学び方で育まれる社会意識は異なるか/まとめと提言
おわりにかえて――座談会 「東大卒」を考える
Posted by ブクログ
東大分析✖︎本田由紀先生。
教育、経験格差、再分配のされなさ、に、最近大変興味(と言うとなんか面白半分ぽくて良くないが、“問題視“というには行動が伴わなくて申し訳ない。)があり、また、仕事で東大生たちと関わる中で、そのエリート同質性(あまりに家庭環境が良い人たち、有名校出身者ばかり)に危機感を覚える中で、新聞で紹介された本。
本田由紀先生だし、きっと面白い。と思ったら面白かった。
何より私の中で新しかった、第一世代(非大卒の親を持つ大学生)と大卒の親を持つ学生との分断。
東大の中に、ジェンダーだけじゃない、複合的な分断や差別があること、なんとなくわかってたけど、はっきりと可視化された。
「第一世代の学生は、課外活動や大学外の人脈形成の取り組みに差がある。その結果、就職にも差が出てくる。」
また、衝撃的で落胆、失望したのは、
「すなわち、日本社会の中枢を担う可能性の高い東大卒業生たちの集団が、格差や不平等の是正に積極的でないという問題を抱えていることが示唆されています。」という結果。。。
日本の最エリートが、寛容性のない、ノンブレスオブリージュの精神を持ってないって。。。や、人による。人によるんでしょうけどね。そして、時代性もはらんでいる。が。。。
それぞれの課題に対して、対策も書かれていて、私も何かできないものか、と思った。
・第一世代への支援
・異なるもの同士が関わり深く理解し合う場の提供
できないものか。
Posted by ブクログ
東大卒の人は誰と結婚するのか?に興味があり購入。
東大卒の男性は男性平均の結婚率よりも高い。恐らく年収との相関が強い。
東大の女性は結婚できないというのも誤り。
国立大学は私立公立に比べて同類婚が多いというのも納得がいく。
Posted by ブクログ
●2025年5月12日、5/8に吉祥寺・外口書店で見つけた「不安に克つ思考」をメルカリで300円で出品してる方がほかに出してた「分子をはかる」(300円)を出してる医療系の女性がほかに出してた本。920円。
●2025年5月26日、東京大学・書籍部にあった。セッションで寄った日。
Posted by ブクログ
そういえば、何年か前にアンケート依頼があり、あまりに面倒くさそうなので、スルーしてしまっていたという記憶があった。
こういう本になる事がわかっておれば、アンケートに回答していたかもしれない。そうすると、回答者の年代範囲がもう少し広まっていたであろうに、ごめんなさいm(_ _)m
図が小さくて全く見る気がしない。その代わりに文中でひとつひとつ細かに説明はしてくれているのだが。読み疲れてしまう。まぁ学術論文ならこれで良いのだろうが、一般読者向けにはなぁ・・・
Posted by ブクログ
日本の学歴社会の頂点に立つ東京大学は、実は大きな格差を内在している。男/女、東京圏/地方という四象限で分析すると、マジョリティとしての東京圏男子と、マイノリティの地方女子の大きな格差が浮かび上がってくる。東大に入学してくる新入生の半数程度が東京圏男子であり、中高一貫校を経て鉄緑会のような塾歴を持ち進学してくるのが特徴である。地方男子が約30%、東京圏女子が15%と続き、地方女子は約5%となっている。
東大卒、という学歴に期待されるのは大きく2つの伝統的キャリアがあり、研究機関として世界に伍する最先端の科学技術を探求する研究者と、官僚養成機関として国家の中枢を支える公務員というイメージが先行している。しかし実際のところは大手企業やコンサルティング会社への就職が増加してきており、他方で企業内では学閥等の形成があまり存在しないといった特徴が見られる。社会関係資本の面においては、大学の友人知人関係よりも前述した中高一貫校のような同窓意識が優先される傾向にある。
高度成長期においては安田講堂事件のような社会運動の先頭に立っていたイメージであるが、現在の東大生は保守的であり社会課題に対して積極的に働きかけるといった傾向は薄い。それが社会が東大卒に対して期待する役割とのギャップを生み出していると考えられ、無難でソツのない選択を取り続ける学歴エリートとしては、どちらかといえばネガティブな印象を持たれることが多い。なので東大卒という学歴を積極的にアピールする人は少ないのである。