【感想・ネタバレ】教育は何を評価してきたのかのレビュー

あらすじ

なぜ日本はこんなにも息苦しいのか。その原因は教育をめぐる磁場にあった。教育が私たちに求めてきたのは、学歴なのか、「生きる力」なのか、それとも「人間力」なのか――能力・資質・態度という言葉に注目し、戦前から現在までの日本の教育言説を分析することで、格差と不安に満ちた社会構造から脱却する道筋を示す。

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Posted by ブクログ

「古市くん、社会学を学び直しなさい!!」に登場した教育社会学者の本田由紀さんの本。初めましてだったがもう何というか頭の中のぐちゃぐちゃがスッキリ整頓された。
自分の38年間の教師生活で抗いまくった思いをこんなにあっさり解き明かしてくれて感動した。その時々に学んできたものが一直線に説明され、なるほどの思いが強い。
「垂直的序列化」と「水平的画一化」、頭に入った。
本田さんの本の書き方はとても工夫されていて、感心した。なかなかこういう人とは出会わない。
子どもの現在と未来に関わる人には、心から薦めたいと思う。

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2024年11月26日

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垂直的序列化と水平的画一化

高校における普通科に偏ったコース編成の多様化
イエナプラン

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2024年08月16日

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日本における人間の「望ましさ」とは何なのかを他国との比較や戦前期から近年までの日本の制度や政策を「能力」「態度」「資質」の言葉の用法に踏み込んで論じている。その中で、垂直的序列化は格差を生み、水平的画一化はふるまい方や考え方を強要(同調圧力)してきた背景があり、これからの時代には水平的多様化が必要であると著者は述べている。
個人的にも格差や貧困、マイノリティ、少子高齢化や人口減少等を考える上でも、多様性や柔軟性は必須と考えるため、排除の仕組みを変えていくことや誰ひとり取り残さない政策は国としても、小集団のグループにしても必要と思う。そして、能力だけで人を判断するのではなく、多様な生き方を受け入れる社会が求められるのだと思う。自戒も込めて。

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2022年12月27日

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ネタバレ

現代日本の教育が垂直的序列化、水平的画一化により、人間の能力を教育が評価してきたのかを論じている。
明治維新から現在までの教育の変遷から、能力による格付けがされていき、学ぶ意欲が欠けてきていることへの危機感が感じられた。

具体的な数字を示すためのグラフや専門的な内容だったため読むのが大変だったが筆者の教育に対する熱意が伝わった。

雇用もパートナーシップ型からジョブ型への移行が考えられていることや、高校の学科などが政府で議論されていることを知れたので、自分で情報を集めてみようと思う。

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2021年09月13日

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私たち日本人が受けた学校教育が誰によってどのような人間になるように作られたものなのかを明らかにし、それが現在の日本の停滞感と閉塞感を生んでいると明らかにする大著。
2020年現在はコロナ禍の中、貧困と格差拡大が社会問題として大きくスポットライトを当てられており、現状に対する一つの解答を提示していることはまさに今だからこそ読むべき一冊。
特に漫然の学校教育の中で使われてきた「能力」「態度」「資質」などという抽象的な語の意味を読み解く良書。
現役教員はもとより、教員を目指す学生や教育行政に携わる方々、目指す学生にとって示唆に富む一冊になるだろう。

・日本の低成長、停滞感の原因は教育にある。
・日本型教育の中心である垂直序列化(日本型メリトクラシー、ハイパーメリトクラシー)と、水平画一化が日本人の均一性を生み、イノベーションを生み出す妨げになっている。

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2021年01月04日

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感想メモ

①日本の若者は、高い一般的スキルを誇る一方、ウェルビーイングからは程遠く、その背景には日本の「垂直的序列化」と「水平的画一化」という独特なシステム構造がある。
②「能力」「資質」「態度」といった言葉は、歴史の中でその意味合いが変遷しており、その言葉の磁力が「呪い」として社会と個人に独特な影響力を及ぼしている。
③現状のシステム構造のオルタナティブとなるのは、「水平的多様化」であり、イエナプランはその参考となり得る。

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2020年12月19日

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様々な著者の論文を集めて新書にしたものであるが、それなりに統一は取れている。
学力、能力、態度についての歴史的な変遷や現在の状況まで説明しているので、読めば基本的な考えはわかる。また、水平的多様性のすすめがある。
 多様性について企業からの考えも示されているが、非定期雇用の問題が指摘されていないのは教育の限界かもしれないので要注意である、

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2020年09月20日

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今までもやもやとしていたことを資料も使ってはっきりと示してもらえた感じ。特に、教育基本法にもあった「能力に応じて」のくだりは納得。やはり教育の目的は人格の完成にあるのだから、評価をしてはいけないと強く思った。
それぞれの子どもの良いところを見て伸ばし、社会性を育んでいければいい。
さらに巻末の提言があり、未来へ向けた指標になる。
ここで示された「垂直的序列化」と「水平的画一化」という概念はとてもわかりやすく、納得のいくものだった。

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2020年06月26日

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教化の話しがあるが、教えられる側が知らないと食い物にされるだけだと思った
国や子どもたちの未来をより良いものにするためという目的がないんだろうなと思う
利権とかで済むハナシじゃない気がするんだよな

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2024年08月09日

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最初に日本の特殊な状況を示すデータと、その特殊な状況の要因になっていると思われる日本の教育の特徴が紹介され、それが歴史的に形成されてきた経緯が推察されています。

端的には教育が個々の人の幸せにつながっていない状況が浮き彫りにされていて、その原因として、「垂直的序列化」「(「相対的で一元的な「能力」に基づく選抜・選別・格づけ」)「水平的画一化」(「特定のふるまい方や考え方を全体に要請する圧力」)が挙げられています。

特に、具体的に職業につながるスキルの教育が手薄であるというのが興味深かったです。日本には普通科が多く、ひたすら一般的な能力や知識を養成される一方、具体的なスキルを身につける機会はないまま職業につく場合が多いということです。

国の政策としてはそうやって具体的なスキルを身につけるパスが用意されると多少なりとも幸福につながるのかもなあと思うし、意識の面では、結局個々の人が、個々の場面で言及される「能力」はある特定の観点で見た評価でしかなく、他の観点や基準もあると理解するかどうかという問題なんだろうなと思いました。

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2021年11月27日

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「能力」「態度」「資質」という言葉が日本の近代以降の教育の中でその意味を変化させながら今日まで使われており、「垂直的序列化」と「水平的画一化」という枠組みが変化する社会への適応を阻害しているとのこと。そして、今世紀に入って「日本型メリトクラシー」と「ハイパーメリトクラシー」、「ハイパー教化」が進行しているといいます。筆者が理想とする教育は、オランダなどにみられるイエナプラン教育であり、とりわけ後期中等教育、高等学校での学びの中で「水平的多様化」を推し進めることを提言しています。最後は自民党政権批判でした。

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2021年06月26日

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能力主義に基づく「垂直的序列化」と特定の考え方を要請する「垂直的画一化」を組み合わせたシステムにより日本の教育が行われている。新学習指導要領のキーワードである資質・能力は、まさにこのシステムによる典型である。しかし、閉塞的な社会を乗り越えるためには、「水平的多様性」の実現が大事であると筆者は提言している。

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2021年01月23日

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本田先生といえば「ハイパー・メリトクラシー」論。
今や社会学の大家となった宮台先生の「終わりなき日常」のように、きっと後世に残る言葉になっていくのではないでしょうか。

「能力」「資質」「学力」「態度」といった、教育の現場ではあまりにも一般的なことばが、実際は数十年の単位で使い方が変わっていく様が解説されています。

日本の学校教育を見るときの、なんだか、「変」な感じや違和感を、新書の分量で的確に指摘して解説してくれる一冊です。

「態度を養う」というのは、どういうことを表現しているのか。
特定の行動を強いることを持って「態度が身についた」と表現されることはないのか。

しかし、近年そうした議論が日本の国の中で、社会で、家庭で、論じられたことはきっとありません。

その間に、「これからの日本の教育の形」はとても強固に定義され、あとはそれに向かってすすむ道しかないようにさえ、見えます。
教える内容も評価の軸もその方法も、すべて決められた「型」があるように感じられてなりません。

長年日本の教育の弊害として語られてきた「横一線」の否定の先には、「自己責任」と「選択と集中」があったように感じます。

そんな中、まるで新しい考え方のように語られる「誰一人取り残さない」というゴール。垂直的序列型と水平的画一化がどのような結果をもたらすのだろうか、と悩ましくなります。

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2020年10月18日

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本田さんの著作の中では、読みやすく分かりやすい。当人はあとがきで、分かりにくくて申し訳ないと謝罪してるけど。
行政や法律で「資質」「能力」の育成とか謳ったところで立法の精神が行政に引き継がれるとは限らない。例えば「能力」もそのコトバの解釈の仕方で現場で用いられるときには立法時とはずれた能力観になったりする。
最終章で提言された「水平的多様化の推進」にはとっても同意する。何とか多様性を受け入れることのできる社会になってほしいもんだ。ただこういう書籍で触れられないのが、到達度をいかに確保するかだ。到達できないことを多様化にかこつけて肯定しちゃうのは困るよね。

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2020年10月11日

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ネタバレ

 PISA(国際学習到達度調査)等、国際的な調査では、日本人は高い評価をされているのに、賃金水準は、他国との比較でもその評価に見合うものとなっていない。加えて、本人の意識が「職務を十分にこなすスキルが足りない」という自己評価になってしまっている。社会的な役割発揮意識が、諸外国の中でも目立って低いのも大きな特徴。どうして、そうなってしまっているのか。
 著者は、<「能力」「資質」「態度」という言葉が、社会と人々をがんじがらめにしていることが、多くの問題を生み出してしまっている>、ということを仮説として提示。このことがどうして異常なのか、それはどのようにしてできあがってきたのか、そのがんじがらめになった縄をほどいていくにはどうすればいいのかについて、根拠を示しながら解説。
 著者によると、日本は、「能力」にもとづく選抜・選別・格付けがされる「垂直的序列化」と、特定のふるまいや考え方を全体に要請する圧力である「水平的画一化」の二つの要素が際立っており、「水平的多様化」の要素が少ないという。これは日本に特有の状況。諸外国では、「良い市民であるために何が必要か」という質問に「意見の違う人の考えを理解すること」という回答や、民主主義における権利の質問に「政府のすることに異議がある時それに従わない行動をとること」という回答が、「とても重要」とする回答が多いのに、日本は、その回答に対する評価は、欧米14ケ国中最低になっている。日本は、「異質性や批判を排除する空気」が際立って強い。
 日本が欧米と比較し新型コロナウィルスの死亡者率が少ないこと(アジアの中では多いが)について、副総理は「民度のレベルが高いから」と発言し問題視されたが、ただ、その論調は、「諸外国の民度が低いと評価したと受け取られかねない」との批判が多かったが、問題の本質は違うはず。同調圧力が強く、強制力を行使しなくても、行動を引き出せるのは、為政者にとっては都合がいい。かつて「ナチスの手口を学んだら」と発言している政治家の発言。「民度のレベルが高い」という評価について、何をもってその評価とし、その評価は真に妥当なのかについて、突っ込むべきだったはず。国民の主体的な行動自粛は、新型コロナウィルスの流行の抑制ということではプラスに作用したが、底流にある「同調圧力」の負の面についても、眼を向けていないと、この先危ういことになってくる。社会の空気が、SNSもあって画一化の方向に加熱しがちな傾向は注意が必要で、こういう時こそ、多様な見方を大切にすべき。
 垂直的序列化と不可分な言葉は「能力」、水平的画一化と不可分な言葉は「資質」「態度」。著者は、現状の社会の中で、「能力」「資質」「態度」がもっている弊害を考慮し、できる限り使わないこと、使う時は注意して使うことを提起している。特に、社会が「危機」を迎えている状況だからこそ、受け止めるべき提起と考える。本田由紀氏は、東大大学院教授で、教育社会学者。固い部分は残るが、一般の読者に向け提起。一読の価値あり。

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2020年06月10日

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日本の教育が「能力」「資質」「態度」という3つ(ないしは2つ)をどのように位置づけ、それを用いて生徒・学生を評価してきたかを記述し、終章に筆者の提言が載る。

自分は所詮、(学力よりの)能力と、人に悪印象を与えない態度(コミュ力)でやりくりしてきただけだと、改めて思ってしまうよね。

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2020年06月03日

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著者の主張がデータと共にわかりやすく展開される良書

家庭環境に由来する垂直的序列化の”恩恵”を預かって生きてきたので、少し心苦しいところもあったが、特に”能力主義”と”meritocracy”の相違についての考察と、それがもたらす力学的効果についての考察にうならされた。

データの扱いや分析方法に若干の主観を感じなくもないが、新書という限られたボリュームで、これだけ学術的な内容を記述しきった著者の熱量に、著者の抱く本物の危機感を感じた。

僕も、自民党•保守団体の主導する昨今の教育改革の”教化”にとても危機感を抱いているのでその点での同意は勿論、日本型メリトクラシーと、ハイパーメリトクラシーの弊害も、感じていたモヤモヤを言語化してもらった印象。

最後に、解決策の提示とその限界についての言及があり、考えるきっかけにもなった。

著者自身お認めのように、昨今の一般的な新書とは構成が違うとは思うが、その分著者の真摯な態度と強い危機感がビシバシ伝わってきた

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2020年04月05日

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日本経済の停滞や低賃金は、過去からの教育政策が原因とし、後半の提言で具体案が出ている。
教育の専門家でない個人としては、現在の教育制度や企業の形について直感的に肯定的な意見を持っている。
スキルが給与に反映しない社会、メンバーシップ型雇用の国というのも愛すべきひとつの個性と考えた場合に、急激な教育や制度改革は国レベルでの多様性が失われないか。OECD同等を目指して埋没するんじゃないかという気がする。

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2023年09月06日

Posted by ブクログ

マイケル・サンデルの「実力も運のうち 能力主義は正義か?」の解説に本書が引用されていたため、読んでみることに。本書ではまず、日本人の異常さとして1.異常に高い一般的スキル、2.それが経済の活力にも社会の平等化にも繋がっていない異常さ、3.そして人々の自己否定や不安の異常な濃厚さを挙げる。これらを解明し、解決していく手立てが本書で論じられる。能力主義とはmeritocracyの日本語訳だが、本来は「業績主義」と訳すべきもの。海外のmeritocracyと日本の「能力主義」が乖離していく辺りに原因のひとつを求める下りは納得だが、全体に文章が硬く読みやすいとは言えない。25%ほど読んで挫折・・・積ん読コーナーへ。

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2021年09月18日

Posted by ブクログ

メリトクラシーという用語が、日本では「能力主義」と訳されることが、そのまま受け入れられているというところが、やはり日本は本当の近代化がなされずじまいで、脱近代の時代を迎えようとしてしまっているのだなと、思う。
まずは近代化からですね…。(ムリか)

このように間違った訳語が流布されることで、独自の考え方がどんどん再生産されてしまうという悲しさ!というより間抜けすぎるでしょ。
それに加えて水平的画一化(ハイパー強化)により、「態度」や「資質」を養うことを強いられている子どもたち。その閉塞感たるや、想像に難くない。

経済的基盤が高く、クラスに影響力もある生徒は、勉強もよくできて、道徳の授業が好きだという恐ろしいデータ。
それらの条件をみたしていない子どもたちは「自分には未来がないように思う」という割合が多い…。こんな日本に誰がした?その矢は自分に返ってきます。

閉塞感の強い国は、少子化も進む。
本田由紀さん、本気で日本のことを考えてくれてます。

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2021年08月01日

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教育関係の本にしては珍しくデータや引用を多用している。明治以降今日までの日本の教育言説を分析し、まず日本社会の現状と日本の教育の特徴に触れて、戦前、80年代まで、90年代、2000年以降に分けて論じている。

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2020年09月03日

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小学校まで
横並び推奨(水平的画一化)

中学校
横並び・縦並び評価半々

高校から
縦並び評価(垂直的序列化)

生徒に対する評価はこんなイメージなので、生徒が自己肯定感を持つのは難しいかな。

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2020年07月26日

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曖昧な資質・能力論や言説への批判はうなずける。一方で保守派といわれる現政権が退いたとしても、野党も教育観や資質・能力などの見方はかわらないのではないかと思う。

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2020年06月24日

Posted by ブクログ

本書では垂直的序列とか、水平的画一化とわざわざ小難しそうな言葉を用いていますが、つまるところ人が人を評価することになんの疑問も持たずに教育活動が行われていることに疑問を覚えますね。

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2020年04月13日

Posted by ブクログ

最も注目を集める教育社会学者による最新刊。期待して読んだものの……。論文をまとめ再構成した内容なのか、文章が必要以上に硬く、回りくどい。記述の厳密さを優先した結果なのだろうが、「いかにも学者の文体」「官僚的」といった印象を受けた。内容は「能力」「資質」「態度」をキーワードにして今日の教育を巡る状況に警鐘を鳴らし、また、具体的な解決策も提示されている。示唆に富む主張だけに残念。

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2020年04月05日

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