教育は何を評価してきたのか

教育は何を評価してきたのか

ビジネス・実用
924円 (税込)

4pt

なぜ日本はこんなにも息苦しいのか。その原因は教育をめぐる磁場にあった。教育が私たちに求めてきたのは、学歴なのか、「生きる力」なのか、それとも「人間力」なのか――能力・資質・態度という言葉に注目し、戦前から現在までの日本の教育言説を分析することで、格差と不安に満ちた社会構造から脱却する道筋を示す。

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  • カテゴリ
    :
    ビジネス・実用
  • ジャンル
    :
    学術・語学 / 教育
  • 出版社
    :
    岩波書店
  • 掲載誌・レーベル
    :
    岩波新書
  • タイトル
    :
    教育は何を評価してきたのか
  • タイトルID
    :
    821929
  • ページ数
    :
    264ページ
  • 電子版発売日
    :
    2020年07月22日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    9MB

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教育は何を評価してきたのか のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    本書は、出口治明さんの著書で触れられていたこともあり、興味をそそられたので手に取ってみました。

    著者は、日本の教育の原理的な特性を、「垂直的序列化」と「水平的画一化」という2つのキーワードで表現しています。
    「垂直的序列化」とは、相対的で一元的な「能力」に基づく選抜や格付けを意味し、「水平的画一化」とは、特定のふるまい方や考え方を全体的に要請する圧力で、「態度」と「資質」がそれと不可分の言葉だと指摘します。

    特に「能力」について、明治以降の書籍の丹念な調査により、その意味の変遷をたどっていく過程はとても興味深いものでした。
    かつては、単に様々な力を表現するだけの言葉であった「能力」が、徐々に優劣を決める測定可能なものに変化し、特に1960年代以降、学生の増加により普通科の高校が急増することもあって、「学力」(偏差値)による垂直的序列化が進んでいきました。
    しかし80年代以降は、学力偏重の反省もあり、「生きる力」や「人間力」といったものが「能力」を構成する要素として重要性を増してきたということです。

    この現象について、著者は、「学力」による垂直的序列化に対処しようとした政策が、皮肉にも「人間力」というもう一本の垂直的序列化の物差しを立ち上げたと指摘する一方、今世紀に入り法律や学習指導要領による「水平的画一化」の圧力も再浮上したとして、選抜と同調圧力が教室に充満する今、「水平的多様性」というベクトルを教育に張り巡らしていくことが必要だと主張します。

    著者曰く、「水平的多様性」とは、一元的な上下(垂直的序列化)とも均質性(水平的画一化)とも異なり、互いに質的に異なる様々な存在が、顕著な優劣なく併存している状態のことで、異質であることの価値を認め、排除を可能な限り抑制することにある、と定義しており、そのために必要な施策について、高校に焦点を当てた提言を行っています。
    この点についても、日本の教育制度の際立った特徴として、高校における普通科の比率の高さと専門学科の比率の少なさ(かつ序列内での低い位置づけ)を著者はその論拠として挙げており、高卒者の比率は過去から大幅に減少しているにも関わらず、(普通科が多いことで)高校には垂直的序列化が凝縮して生じていると論じています。

    本書における著者の主張については、表現的なものも含め全面的に首肯するものではありませんが、教育のあり方を考える上で大いに示唆に富む一冊でした。
    著者が解説を寄せる「実力も運のうち 能力主義は正義か?」(マイケル・サンデル)も読んでみたいと思います。

    0
    2026年04月20日

    Posted by ブクログ

    日本の教育制度を振り返る本として、素晴らしい一冊であったと思う。
    本田さんが「あとがき」で指摘しているように、確かにデータなどが多く、一冊の一般書としては読みづらい部分もあったが、その分、説得力を持って、現在の日本の教育制度を包括的に提示していると思った。

    個人的な関心に寄せて、概要を振り返ってみたい。
    現代の日本の教育制度は、以下の三つの中心的な要素によって説明可能だ。
    「垂直的序列化」「水平的画一性」「水平的多様性」がそれであり、最初の二つが重視され、最後の「水平的多様性」が過小に取り込まれているのが現在の実態である。本田さんは、「垂直的序列化」×「水平的画一性」にとらわれる現代の教育制度を批判し、「水平的多様性」へとシフトしていくことを展望する。この点も、現状の批判にとどまらず、代替される仕組みをしっかり提案しているところに好感が持てた。

    まず「垂直的序列化」については、「日本型メリトクラシー」と「ハイパー・メリトクラシー」によって決定される。前者は従来から日本にあった「お勉強ができるかどうか」という「学力」の物差しによって測る能力主義であり、後者は「学力」以外の「人間力」「生きる力」を測る物差しを持った能力主義である。これまで「学力」という一本のみ出会った物差しは、「生涯学習」(生涯学び続けることの重要性が高まり、教育においても主体性、自己教育力の技能を身につける必要がある)や90年代の若者不安(オウム事件などの若者の「心の闇」の指摘)、雇用問題によって見直しを要請され、「学力」以外の要素を重視する「新学力観」(学びへの主体性を身につけさせるために、「指導」ではなく「支援」を重んじる)や「生きる力」といった要素が、新たな「垂直的序列化」の軸として追加された。(この新軸は、「関心・意欲・態度」などの曖昧な基準の導入をもたらした。)そして、この詰め込み的な「日本型メリトクラシー」の処方箋として本来打ち立てられた「新学力観」によって始められたプロジェクトが「ゆとり教育」なのだった。

    そして、「垂直的序列化」とは別次元的に、「水平的画一性」という圧力が日本の教育を支配している。これは「態度」や「資質」といった言葉によって象徴される。要は、この時代に生き抜くための「社会的性格」を育てるため、画一的な要素を全員に要求したものが、「水平的画一性」であり、例えば道徳教育の導入などはこれの具体例だ。また、この形成される「社会的性格」の問題点として指摘されるのが、「新自由主義」的なサバイバルに挑戦する性格にすること、日本に対する愛国的なナショナリズムを持たせた性格にすること、という方針が見て取れることだ。この「ハイパー教化」が「垂直的序列化」とは異なる大きな要素としての、「水平的画一性」をもたらしている。

    「垂直的序列化」では、「学力」や「生きる力」など、絶対的な物差しを提示することで、例え教育水準が高まったとしても、確実に敗者が生まれる。また、「水平的画一化」においても、マジョリティの意見が規範となり、その規範に従わないものは排外される。

    そこで重要となってくるのが、第三の軸「水平的多様化」である。「垂直的序列化」×「水平的画一化」の教育制度がもたらす、若者の無力感を解消するためにも、社会主義的な教育の寛容さが必要とされる。教育の実態は、日本という「国」の決めた制度がかなりの部分を方向づける。だからこそ、その全てを打開させるには、「国」による方策が不可欠なのだ。

    0
    2026年04月01日

    Posted by ブクログ

    「古市くん、社会学を学び直しなさい!!」に登場した教育社会学者の本田由紀さんの本。初めましてだったがもう何というか頭の中のぐちゃぐちゃがスッキリ整頓された。
    自分の38年間の教師生活で抗いまくった思いをこんなにあっさり解き明かしてくれて感動した。その時々に学んできたものが一直線に説明され、なるほどの思いが強い。
    「垂直的序列化」と「水平的画一化」、頭に入った。
    本田さんの本の書き方はとても工夫されていて、感心した。なかなかこういう人とは出会わない。
    子どもの現在と未来に関わる人には、心から薦めたいと思う。

    0
    2024年11月26日

    Posted by ブクログ

    垂直的序列化と水平的画一化
    ↓
    高校における普通科に偏ったコース編成の多様化
    イエナプラン

    0
    2024年08月16日

    Posted by ブクログ

    日本における人間の「望ましさ」とは何なのかを他国との比較や戦前期から近年までの日本の制度や政策を「能力」「態度」「資質」の言葉の用法に踏み込んで論じている。その中で、垂直的序列化は格差を生み、水平的画一化はふるまい方や考え方を強要(同調圧力)してきた背景があり、これからの時代には水平的多様化が必要であると著者は述べている。
    個人的にも格差や貧困、マイノリティ、少子高齢化や人口減少等を考える上でも、多様性や柔軟性は必須と考えるため、排除の仕組みを変えていくことや誰ひとり取り残さない政策は国としても、小集団のグループにしても必要と思う。そして、能力だけで人を判断するのではなく、多様な生き方を受け入れる社会が求められるのだと思う。自戒も込めて。

    0
    2022年12月27日

    Posted by ブクログ

    私たち日本人が受けた学校教育が誰によってどのような人間になるように作られたものなのかを明らかにし、それが現在の日本の停滞感と閉塞感を生んでいると明らかにする大著。
    2020年現在はコロナ禍の中、貧困と格差拡大が社会問題として大きくスポットライトを当てられており、現状に対する一つの解答を提示していることはまさに今だからこそ読むべき一冊。
    特に漫然の学校教育の中で使われてきた「能力」「態度」「資質」などという抽象的な語の意味を読み解く良書。
    現役教員はもとより、教員を目指す学生や教育行政に携わる方々、目指す学生にとって示唆に富む一冊になるだろう。

    ・日本の低成長、停滞感の原因は教育にある。
    ・日本型教育の中心である垂直序列化(日本型メリトクラシー、ハイパーメリトクラシー)と、水平画一化が日本人の均一性を生み、イノベーションを生み出す妨げになっている。

    0
    2021年01月04日

    Posted by ブクログ

    感想メモ

    ①日本の若者は、高い一般的スキルを誇る一方、ウェルビーイングからは程遠く、その背景には日本の「垂直的序列化」と「水平的画一化」という独特なシステム構造がある。
    ②「能力」「資質」「態度」といった言葉は、歴史の中でその意味合いが変遷しており、その言葉の磁力が「呪い」として社会と個人に独特な影響力を及ぼしている。
    ③現状のシステム構造のオルタナティブとなるのは、「水平的多様化」であり、イエナプランはその参考となり得る。

    0
    2020年12月19日

    Posted by ブクログ

    様々な著者の論文を集めて新書にしたものであるが、それなりに統一は取れている。
    学力、能力、態度についての歴史的な変遷や現在の状況まで説明しているので、読めば基本的な考えはわかる。また、水平的多様性のすすめがある。
     多様性について企業からの考えも示されているが、非定期雇用の問題が指摘されていないのは教育の限界かもしれないので要注意である、

    0
    2020年09月20日

    Posted by ブクログ

    今までもやもやとしていたことを資料も使ってはっきりと示してもらえた感じ。特に、教育基本法にもあった「能力に応じて」のくだりは納得。やはり教育の目的は人格の完成にあるのだから、評価をしてはいけないと強く思った。
    それぞれの子どもの良いところを見て伸ばし、社会性を育んでいければいい。
    さらに巻末の提言があり、未来へ向けた指標になる。
    ここで示された「垂直的序列化」と「水平的画一化」という概念はとてもわかりやすく、納得のいくものだった。

    0
    2020年06月26日

    Posted by ブクログ

    2026.08.28 考え方についてはほぼ同意する。
    日本的な教育システムが、生きづらさと日本の活力低下を生み出していると自分も考えている。垂直的序列化による弊害を教育の内部でどう解決していくのか。構造を変えない限りそれは論理的に無理なのか?

    0
    2026年08月28日

教育は何を評価してきたのか の詳細情報

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    :
    ビジネス・実用
  • ジャンル
    :
    学術・語学 / 教育
  • 出版社
    :
    岩波書店
  • 掲載誌・レーベル
    :
    岩波新書
  • タイトル
    :
    教育は何を評価してきたのか
  • タイトルID
    :
    821929
  • ページ数
    :
    264ページ
  • 電子版発売日
    :
    2020年07月22日
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    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    9MB

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