森晶麿のレビュー一覧
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主人公の華影忍がなかなかの最低男。お金にも美貌にも恵まれながら死にたがり、そのくせ女癖が悪く、妻以外の女性と心中未遂。
知らず読んだけれど、『四季彩のサロメ〜』の続編らしい。
そちらは華影の高校時代の話らしく、『心中探偵』だけでは、彼の厭世的な感じが分かりにくかったので、やっぱり順番に読んだほうがいいかも知れない。
物語は、主人公が行きずりの女性と服毒心中をしたところ、翌朝自分だけが目覚め、傍には見知らぬ女性が死んでいた。自分が昨夜一緒に死のうとした女性は誰なのか、事件の真相を探り始めるというもの。
華影の性格は置いておくとして、ミステリとしては面白かった。死んだ財閥令嬢や、彼女の兄である -
Posted by ブクログ
独立しても読める物語だけれど、やはりここは事前に主人公華影忍の高校時代を描いた「四季彩のサロメまたは背徳の省察」をぜひ。
成長した彼は新鋭の作家となり厭世感を強くしたものの、女に甘いのも性にだらしないのも相変わらず。むしろ大人になった分その行動は危うげで、女を疑う事を基本しない忍はその計略にあっさりとひっかかる。
共に死のうと誓ったはずの行きずりの女は一人で命を絶ち、何故か生き残った忍は彼女の素性を知るために担当編集者を巻き込んで奔走する。
彼と一夜の愛を交わした女は誰なのか。ソフトボイルドな探偵行の果てに知るその正体と行動の意味と原因はある意味とてもグロテスク。
高校時代の事件に続き、今回 -
Posted by ブクログ
ネタバレ黒猫の回帰の文庫版が出たので再読。最初に出会ったのは大学生の時だったので、久しぶり。
「月まで」と「月と王様」は互いに相互的関係にあるなあと思った。そして今後の黒猫と付き人の関係にも……。
「壁と模倣」「頭蓋骨の中で」はどちらも悲しいひとりの人間の物語だった。〈自分〉を持たなくなった青年と、〈自分〉とのせめぎ合いに苦しむ人の話。後者は生と死の相反するようで同じところにあるものという解釈を初読では持っていたので、また違う楽しみ方もできた。
「水のレトリック」は初読では、イマイチ理解追いつかずだったけど、今回はなんとなく理解。詩的というか言葉遊びの世界というか。
「秘すれば花」の存 -
Posted by ブクログ
短編集。
主人公である「私」と黒猫との出会いから黒猫の留学前までを描いている物語。
「美学」に照らし合わせて黒猫は論理的にいくつもの謎を読み解いていく。
もしかしたら好き嫌いがわかれる物語かもしれない。
次から次へと出てくる美学にまつわる単語、いつだって抽象的な言い方しかしない黒猫。
解体という作業によって浮き彫りになる新たな景色、新たな思考、新たな結末。
ポオの作品を例に、黒猫と私は表層的にみえるものから、さらにその奥に眠っているかもしれないものへと思考を掘り下げていく。
ハマる物語だった。
読み終わった後にまたポオの作品を読みたくなるような・・・。
もしかしたらまた違った視点でポオの面白さ