森晶麿のレビュー一覧
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ネタバレ火にまつわる事象を未来視する<予現者>・露木と、現象学者・帆ノ緒と、元カメラマン・ホムラの3人という組み合わせが既にSFなのだけれど、ばらばらになっていた事象が全てぴたりと合わさって行くのが運命的であり、必然的にも見えてくる。中盤で、もしかして、露木が全部仕組んでる?って思ってたけど、メグミをめぐる結末は複雑に見えて、ただ妹を守りたい姉の愛情の<炎>なんだなあと。ただその<炎>は大きくなり過ぎたみたいだけれど。
特に最終章の東京の深夜の大騒動は非現実的ではあったけれど、これだけVRが発達しているとそういうことも有り得るのかもしれないし、SFと笑えなくなる。 -
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平穏な日常を退屈と捉えるちょっとませた小学五年生の樹羅野白亜。
彼女は魅力的な謎と刺激を求めて「探偵」を始め、小学校内の臥龍梅の根元に赤いハイヒールと赤い付け爪という不自然なものが置かれているのを発見する。
誰が何のために置いたのか、それを追う内に彼女は街の中に潜む古代生物に出会ってしまう…。
「ジュラシッ区」。
この物凄いパワーワードで力技にねじ伏せてくるこの作品。
タイトルから恐竜が関わってくるのは事前に分かっていたけれど、現代日本を舞台にしてどう登場するのかと思っていたら、まさかのそういう形か…!
児童書らしくスピーディーかつハラハラドキドキに多少の荒唐無稽さの味付けをした冒険活劇で、 -
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偶然から高校時代の友人、麻衣亜の夫のSNSアカウントを見つけ、彼女の失踪を知った菜摘。
ジャーナリストである菜摘は麻衣亜を探す為、彼女を失踪に駆り立てた原因を恋人の丘咲と共に探り始める。
家庭で職場で故郷で少しずつ麻衣亜を追い詰めていった「悪い夢」が明らかになるにつれ、菜摘もまた自分の信じていたものの不確かさを知る事になる……。
嫌な事があって、生き辛さを感じていて、けれど抜け出せない。現状を飲み込むしかない。
麻衣亜程の不幸の連続ではなくとも、多かれ少なかれ悪い夢に囚われている現代人はきっと多い。
人の悪意を拒絶出来ず享受する麻衣亜も、菜摘の提唱する対応策も、どちらも分かるなあと思う部分も -
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乳児を連れたまま行方不明になった麻衣亜を、学生時代の友人でジャーナリストの菜摘は探している。
麻衣亜が行方をくらました理由を追求していくうちに、そこには様々な要因が絡んでいたことが分かり始める。
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待機児童の問題、セクハラなど、女性が被害に会う可能背のある問題が、不幸にも数々麻衣亜飲みに振りかかっていた。
おやゆび姫の話は忘れていましたが、まさに麻衣亜はおやゆび姫。
でも、最後は自分の力で王子との生活を手に入れた。
母は強しという所でしょうか。
瞳の立ち位置にはちょっと驚きました。
麻衣亜が大金を手に入れるプロセスには必要な登場人物だったってことですね。
菜摘に対しては、好感をもって読ん -
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ネタバレ連作短編。時系列でいうと、黒猫と私が出会った頃の話。
このシリーズも3作目、かな?4?まぁなんにせよ回を重ねたことで、こなれてきた感はあるのかもしれない。というか、短編的なことの方が向いているということなのかもしれない。
長編は謎解きがどうしても「美学」の説明(ほとんどの読者はわからないから、じっくり説明しなきゃならん)に重きが置かれることになる。長編である分、ナゾもそれなり重いから。
だが、短編であれば、短編で扱うくらいのナゾを美学を通して語ることになるからか、比較的わかりやすかった気がする。巻末の対談によれば、シンプルさがでてきた(本人談)みたいなことが書かれていたが、そういうことな -
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ネタバレ今回の作品が今までの中でもっともミステリーっぽかった。というのは、それまでの作品が相当程度美学寄りだったが、今回のモノはそれよりも少し日常寄りだったから。
「文学作品を土台にして」というところがしっかりミステリーとして活かされてたという気がする。それに違う場所で「時間」を同じくするような構造はまさにミステリーっぽい。
今回の作品は、これまでであれば3枚目的なポジションに近い「付き人」が探偵役としても自立した気がする。物語の構成上、そうならざるを得ないのかもしれないけども、そういう成長の上に黒猫との関係があるだろうし、その結果として、単なる探偵の助手ではなく、ある種の専門家として探偵的な役割 -
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ネタバレやはり小難しい。だがそれがいい。
芸術を「見る・感じる」だけではなく、「理解をする」ということはこういうことなんだなと本当に思う。そしてそれはけっこう大事なことなのではないだろうかと思うし、その感覚は何事にも通じる。
それを学ぶためにこの本を読んでるわけではないんだけども(笑)、それを自分の中に落とし込まないと、ミステリーとしても理解できないのだから、しょうがない。
ただ、そのせいなのかどうかはわからんが、登場人物の熱量はなんとなくみんな低めな気がする。そうすると同期の部分で弱くなりがちに感じられて、そこが難しいところかもしれないなぁ。 -
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ネタバレ物事を解釈するということはこういうことなんだろうなぁと思った。本筋とは全く別な話だけども、美学とはこういうものかというのがわかっただけでも意味があった。
ミステリーとしては、人が死ぬことがあるにも関わらず、淡々とものごとがすすんでいく様に日常なのナゾなのかとおもわされる不思議なペースがある。謎解きも「美的推理」という素人が介在できない小難しさがあって、読者としては入り込めない感もあるが、逆にそれが作品の魅力とも言えるような印象。
大げさに持ち上げるつもりはないけど、ある意味難しいナゾを婉曲的に解くという古典のような作品なのかなと思った。 -
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黒猫シリーズからの流れで、この作者さんの作品を何となく読んでいるが、偽の葬儀を行う「葬偽屋」と言う突拍子もない設定に期待せずに読んだのに、見事に裏切られ、号泣することに…
保険の調査員だった主人公・セレナは調査で結果を出せず、悩んでいるところに、恋人を突然事故で失う。
仕事も恋人も失ったセレナは、親からの金の無心からも逃げるように自殺を試みようとしたところを殺生歩武に助けられ、4か月の間だけ彼の仕事「葬偽屋」を手伝い、自殺を考え直すことに。
「葬偽屋」の仕事を手伝ううちに、依頼人の人生を通じて、生きることの意味を考え、立ち直っていくセレナの姿が描かれているが、とらえどころのない歩武の発言が適度