森晶麿のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
摩訶不思議な俳句×ミステリー小説。連作短編集である。
主人公は編集者・古戸馬(ことば)。友人で俳人の虚池空白(うろいけくじら)を編者にムック本『Nの歌を聴け』を製作中。虚池は、界隈ではちょっと名のしれた俳人で「自由律俳句の伝道師」とも呼ばれている。
ムック本に載せるのは、野良句(のらく)と呼ばれるもの。街中やふとしたところに落ちている、読み人知らずの自由律俳句のことで、主に看板や落書きから拾っている。僅かな文字・言葉から生まれた自由律俳句の解釈が謎となり、二人は頭を悩ませる。
そもそも自由律俳句なのか、誰がどういう意図で詠んだのか、句の解釈がミステリー(=謎)になっているというのが面白い。日常から始まるミステリーは、解釈によって思わぬ事件に遭遇したり、とんでもない過去を秘めていたり、物語の深淵まで連れて行ってくれる。
最も好きだったのは第4話「キリンしか知らない夜」。期間限定で夜間営業している動物園に来た古戸馬は、来場していた虚池と出会う。そこであるSNSの投稿を見せられるのだが、そこに書かれていたのが「おりのなかのキリンしかしらない こわい」という言葉と、星空をバックにしたキリンの写真。虚池は写真につけられたコメントからこの動物園だと気がつき、来場していたのだ。
そのアカウントの別の投稿は「ごはんまだ」「そうじしてない」のみ。さて、誰がどんな意図で詠んだのか——という物語。謎解きが絶妙!