あらすじ
瀬戸内海に面した椅子作りの町、宝松市鈴香瀬町。高校生の海野杏(うみの・あん)は、毎朝海辺で小説を書きながら、椅子職人を目指す同級生・五十鈴彗斗(いすず・すいと)と少しだけ話すことを日課としていた。 ある日の朝、いつものようにやってきた彗斗から、「高校をやめて町を出る」と告げられる。特別仲がよかったわけではないが、傍にいて当然の存在がいなくなることに焦りを覚える杏。 時を同じくして、杏は親友の翠(みどり)からラヴレターの代筆を頼まれる。戸惑う杏だったが、必死に頼む姿にほだされ、誰にでも好かれる、明るくてかわいい翠を思い浮かべながら、一文一文を丁寧に書きだしていく。そのラヴレターから、小さな町を揺るがす失踪事件が始まるとも知らずに。
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Posted by ブクログ
杏の中の優先順位があからさまに出ている。
①自分の想い、空想の世界
②彗斗の尊厳
③翠の命
一般的には翠の安否が最優先のはずだけど、杏は空想の世界のことばかり考えている。
現実世界じゃなくて、自分の世界を守ることに必死なのかな、と思った。
翠の行方を気にしつつ、どうせもう死んでいるだろうと半分決めつけているあたり、実はドライな性格なのかも。翠の家族との対比を感じて、主人公に対して不気味な気持ちになった。
主人公に全く共感できなかった一方で、展開は予想外。最後まで私の想像を超えたお話だった。
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海辺のまちの朝の空気感。
住んだこともないのに懐かしく感じるその雰囲気が切なくて、まだ何も起きていないうちから苦しくなる。
文章が綺麗で騙されるけれど、内容は色々と重い。真相だけでなく、病気の少年のはなしとか、小さなまちの事情とか。
そんな中で、杏が、翠を想いながら変わっていく過程が丁寧に描かれていてとても好き。
椅子マニアの情熱がすごい。
完ぺきな椅子に座って物語が生まれる、というのもいい。
読み終わったあと、とことんこだわって何かを創ってみたくなった。
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I don't know what that say, not much love and murder. sea cucumber means NAMAKO(海鼠,海参)
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繊細な心と今どきの生活風景。幻想的な世界と事件。行ったり来たりしながら切ない旅をしたな。
なんだかいつも森さんの作品を読んでいる間は不思議な気分になる。ふわっとその世界に入り込んでしまう。
その輝きは消えないって。よかった。今の私には救いの言葉。
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仲の良い友達翠が告白すると決めた日に行方不明となった
書くことが得意でラブレターの代筆を頼まれた杏
翠が好きな人もわからずかいたラブレターだったが好きな人が判明した
街全体が不穏な空気となっていく
疑われる人が出たらその人に疑いの目を向ける
だが真犯人は別にいた
そして翠は帰ってきたが翠ではなかった
フランスでは椅子のことは女性しを差す
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不思議な作品だった。
恋愛の話が始まったのかと思って読んでいたら、実はミステリーで、狂気的で、ちょっと突飛な部分もあったけど、なんとなく引き込まれてしまうお話でした。
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椅子職人と小説書きの物語であり、作り手が創り出す物語。
「つくる」こととは。物語が進むにつれて、グイグイと引き込まれていった。森晶麿さんも話していたけれど、ミステリー要素は少なくて異質。その分また違う世界が生み出されてるなって思った。
森晶麿さんがブログで書いていたセルフライナーノーツもまた読みたい。
戯言
なぜかわからないが、「人間椅子」と言い間違えることがよくあった。でも、「人間椅子」(江戸川乱歩)と似て非なるものではあると思った。どちらも、座っている異性を包み込むというフェチズムが表現されていると思う。
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青春と淡い恋心の小説家と思いきや、後半のミステリー感と真実の切なさに心がぎゅーっとなりました。
途中でもしかして…と思ったことの斜め上をいってしまって…
途中で少し、桜庭一樹さんの小説『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』を思い出しました。
でも随所に家族の愛とか青春の甘酸っぱさがあるのがすごく良かったです。
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恋心から始まる失踪事件の物語は作中作含めて薄い紗に包まれた様に幻想的でどこか浮遊感があるのに、ある意味シビアで少し残酷でもある。
以前から思っているけれど、森先生が十代少年少女の自意識過剰だったり独善的だったり利己的だったりする部分を書くとザクザク刺さる…。
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高校生の優しく微笑ましい恋愛のお話、と思ったら・・・
まさか、いやいや、まさか、いやいやを繰り返して
まさかがそのまま結末になる。残酷なお話。
Posted by ブクログ
瀬戸内海に面した椅子作りの町、宝松市鈴香瀬町。高校生の海野杏(うみのあん)は、毎朝海辺で小説を書きながら、椅子職人を目指す同級生・五十鈴彗斗(いすずすいと)と少しだけ話すことを日課としていた。
ある日の朝、いつものようにやってきた彗斗から、「高校をやめて町を出る」と告げられる。特別仲がよかったわけではないが、傍にいて当然の存在がいなくなることに焦りを覚える杏。
時を同じくして、杏は親友の翠(みどり)からラヴレターの代筆を頼まれる。戸惑う杏だったが、必死に頼む姿にほだされ、誰にでも好かれる、明るくてかわいい翠を思い浮かべながら、一文一文を丁寧に書きだしていく。
そのラヴレターから、小さな町を揺るがす失踪事件が始まるとも知らずに。
〈黒猫シリーズ〉の著者が描く、新たな青春ミステリ。 (あらすじより)
特殊な話だった……森さんらしい儚く美しく悲しい感じなんだけど、なんかちょっと腑に落ちないというか、ふわっとして現実感のない話だったような。犯人も状況もわりと早い段階で予想はつくんだけど、スタートが結構軽やかな青春小説で始まったからいつの間にそんなハードなことに??と展開についていけなくなりそうだったせいかもしれない……
Posted by ブクログ
椅子造りに込められた狂気。犯人の美学も身勝手だが、周囲の思いこみによる集団リンチにも似た行動や、風評被害の加害者たちの行動が怖い。感情は簡単に理性を凌駕する。その分、長期的視野を持ち、大局的な観点に立って理性で行動できる大作の存在が重い。また、生活力に乏しいヒロインの義父のまっとうさにほっとさせられる。