高橋義孝のレビュー一覧
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ネタバレ≪内容≫
『トニオ・クレーゲル』
孤立の苦悩と、それに耐えつつ芸術性をたよりに生を支えてゆく青年の物語。
『ヴェニスに死す』
水の都ヴェニスにて、至高の美少年に魅せられた芸術家の苦悩と恍惚を描いた作品。
≪感想≫
ヴィスコンティ監督の「ヴェニスに死す」がこの秋、ニュープリント上映されている。銀座テアトルシネマに職場がほど近く、原作を一度読んでから映画をみようと思い、本書を手にとった。
マンの初期の代表作2編。どちらも芸術家あるいは文士を主人公に据え、芸術とは何かを徹底的に追求し苦悩する姿を描いている。
「ヴェニスに死す」は映画のイメージ(というか、ビョルン・アンドルセンのイメージ)が頭か -
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2011.01.25-
悪魔の力で最も美しい時を過ごしそれを失い、この世の栄華を極めようとするファウストだが、進めば進むほど彼の世界は混乱していく。苦悩の果てにたどり着いた人生の真理は、他者のために生きること。「今この時」に自分のすべてを忘れて没入することだった。そして真理にたどり着いた魂は、悪魔の手を逃れて天使と共に昇っていく。
メフィストーフェレスが面白い。悪魔も大変なのね(笑)。
自分が決めて行動した、その結果がどうであろうと受け入れる。それが責任を持つということ。それがどんなに辛くても、苦しみの先には救いがあるとゲーテは言っている。たぶん。 -
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言い忘れていました。この2篇に関しては、岩波文庫よりもこの新潮文庫の訳文のほうに、私は慣れているのでした。そして、岩波の「トニオ」に載せた「リザヴェータさん」はこっちのほうで、つまり岩波では「リザベタさん」でしたね。やっぱり、リザヴェータさんのほうがいいな。その1点だけでも、こちらを私の底本にしたいと思います。さて、まだ『魔の山』や『ブデンブローク家』のことを載せていないではないか、と言われそうですが、あれらには、まだ登攀していないのですよ。逃げるつもりはありませんけれど、きっとそのうちに、ね。約束します、運命の女神の許す限りにおいて。
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ネタバレちょっと昔に読んだから、思い出しながら書くけど…
ウェルテル効果という心理学用語がある。メディアが自殺を報道すると、その後自殺率が高まるということらしい。
この本を読んで同じように自殺する人が増えたことからそう呼ばれているんだって。
そんな感じで、これを読む前から結末は知っていた。結局ウェルテルは最後に叶わぬ恋が原因で死んでしまうのだ。そこまでどうやって向かうのか、どんなことに苦しんでいたのかをみつめながら読んだ。
ウェルテルは既婚のロッテを好きになってしまい、もう、病的に好きになってしまう。ロッテしかいない、と思い込む。でも結婚してるから諦めるしかなくて、死んでしまう。
何がすごい -
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ネタバレ言わずと知れた文学界の金字塔、フランツ・カフカの「変身」。
ある朝目覚めた主人公は自分が一匹の大きな虫になっていることに気づく。虫になってしまった主人公とその小さな世界(家族と家の中)の変化と行く末を描く物語。
有名な冒頭以外は知らなかったので、新鮮な気持ちで読むことができた。文章が面白いし引きずられるということはないんだけど、徹頭徹尾、主人公が深刻な鬱状態ですごく悲しい。自分が虫になってしまっていること、消えてしまいたいと思っていること、それでもなんとか家族や職場に迷惑はかけまいと思っていること、誰かにぞんざいに扱われても怒る気持ちが湧かないこと。主人公が自分を大切に思えていないのがよく分か -
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5年ぶりの再読です。
前回より、読解力が上がったのか
さらに面白く読めました。
3部構成。
主人公のグレーゴル・ザムザ。
虫に変身してしまった直後の描写は、とても面白くて思わず笑ってしまいました。ベッドの上でノソノソと動く様や、ドアに挟まって体が斜めに傾いている様とか。
見た目が変わってしまい、周りの人間に除け者にされていく様はみていて辛かったです。
文脈から推測すると、グレーゴルが虫に変身してから、約3ヶ月。
息絶える直前に、妹のグレーテにドアを閉められてしまうシーンは、心が痛かったです。
笑えたり、切なさを感じたり
楽しく読めて良かったです。