高橋義孝のレビュー一覧
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最も印象的だったのは、語りの視点の変化。
物語は彼(グレーゴル)視点で始まるが、
彼の死から第三者的な視点へと移行する。
死の苦悩や劇的な最期は描かれず、
彼がその時何を思ったのかも明確には示されない。
その空白が、かえって死を生々しく感じさせる。
人の死は当人の内側ではなく、
外側から処理されていくものなのだと
突きつけられるようだった。
父親が投げたリンゴの傷が死因であるという点も、
美しく、象徴的。
かつて家族を支えていたはずの息子が、
父によって傷つけられ、徐々に衰弱していく。
大黒柱だった彼よりも、
父の威厳や家族の秩序が優先される構図は不気味で、
家族という共同体の冷酷さを感じさ -
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役割を失った「個」と、残された家族の再生
朝目覚めると巨大な毒虫になっていた、という不条理な設定から始まる物語。Audibleでの鑑賞において、背後に流れる時計の秒針の音は、本人の異変とは無関係に刻々と進む世界の残酷さを際立たせていた。
■社会的な役割と「うつ」の心理
毒虫に変貌した直後、主人公グレゴールが真っ先に案じたのは自分の体ではなく「早く出社しなければ」という仕事への義務感であった。自分を二の次にして社会的な役割を優先する姿は、現代のうつ病を患う人の心理状態にも重なる。個人がどれほどの絶望の中にいても、社会や時間は何事もなかったかのように動き続けるという描写は、極めて冷徹である。
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一家の稼ぎ頭として家族を支えていた青年 ザムザは、一夜にして人間から巨大な毒虫へと化してしまった。
虫という姿形になったことで彼の姿を見た途端に母親は失神、父親は彼を追い払う。唯一 彼のことを気にかけていた妹もやがて態度を変えていく。
私の中でザムザは体調150cmほどの大きな大きなダンゴ虫のイメージ(これはカフカがイメージしている虫とは大きく異なるかもしれない)。
家族の1人がある朝 突然、巨大なダンゴ虫になっていたら私はどうするだろう。私は虫が怖いし嫌いだ。そんな苦手な虫になった家族とどう接すれば良いのだろう。彼の母親と同じように失神してしまうかもしれない。
人を見た目で差別したり判断 -
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ネタバレちょっと昔に読んだから、思い出しながら書くけど…
ウェルテル効果という心理学用語がある。メディアが自殺を報道すると、その後自殺率が高まるということらしい。
この本を読んで同じように自殺する人が増えたことからそう呼ばれているんだって。
そんな感じで、これを読む前から結末は知っていた。結局ウェルテルは最後に叶わぬ恋が原因で死んでしまうのだ。そこまでどうやって向かうのか、どんなことに苦しんでいたのかをみつめながら読んだ。
ウェルテルは既婚のロッテを好きになってしまい、もう、病的に好きになってしまう。ロッテしかいない、と思い込む。でも結婚してるから諦めるしかなくて、死んでしまう。
何がすごい -
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ネタバレ言わずと知れた文学界の金字塔、フランツ・カフカの「変身」。
ある朝目覚めた主人公は自分が一匹の大きな虫になっていることに気づく。虫になってしまった主人公とその小さな世界(家族と家の中)の変化と行く末を描く物語。
有名な冒頭以外は知らなかったので、新鮮な気持ちで読むことができた。文章が面白いし引きずられるということはないんだけど、徹頭徹尾、主人公が深刻な鬱状態ですごく悲しい。自分が虫になってしまっていること、消えてしまいたいと思っていること、それでもなんとか家族や職場に迷惑はかけまいと思っていること、誰かにぞんざいに扱われても怒る気持ちが湧かないこと。主人公が自分を大切に思えていないのがよく分か -
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ネタバレ少しだけ読んだことはあったが「淋しい夜のページをめくれ」がきっかけで再度手に取る
初めてのゲーテの作品
とことんウェルテルになりながら、気持ちを想像しながらじっくりじっくり読んでいった。
小説というよりも詩に近い印象を受けた。
ロッテを初めてみて、天使だと思った。とか
ぼくはまるで神が聖者たちのためにとっておいたような幸福な日々を送っている。
とか、浮かれっぷりがすごい、現代と何も変わらない感情に、人間の普遍性を感じる。
このさきざきがどうだろうと、ぼくは人生のよろこびを、最も清らかなよろこびを味わったんだとか
死亡フラグすぎる
身を引こうとするウェルテル
それでも吸い寄せられるよう -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルは小説の内容とはほぼ関係ないが、このサナトリウムの隔絶された世界で繰り広げられる人間絵巻は、読み応えがあった。多彩な人物との交流の中で、主人公のハンス・カストルプが大きく成長する過程が描かれる。色物関係はわれらがアイドル、ショーシャ婦人との交流は上巻ラストにかけて、素晴らしい筆致でクライマックスを迎え、ワルプルギスの夜という箇所でクライマックスを迎え、下巻での収まり方への繋がりも胸が高鳴った。下巻は論争の場や死の匂いも感じられ、世界文学として一気に高みへ引きあがる。もっともっと読書に充てる時間が必要と痛感した。時間切れだけど。
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洗練された美しい文章がすごく良い。
苦しいほど切実な恋心が言葉を変えながらたっぷり200ページで描ききられていて、まるで演劇を観ているようだった。
「不機嫌というやつは怠惰と全く同じものだ。」という言葉に感服した。
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ゲーテ自身の絶望的な恋の体験を作品化した書簡体小説で、ウェルテルの名が、恋する純情多感な青年の代名詞となっている古典的名作である。許婚者のいる美貌の女性ロッテを恋したウェルテルは、遂げられぬ恋であることを知って苦悩の果てに自殺する……。
多くの人々が通過する青春の危機を心理的に深く追究し、人間の生き方そのものを描いた点で時代の制約をこえる普 -
Posted by ブクログ
100ページ少しなのにずっしり、不気味、不安、が詰まっている1冊だった。私の国語力では良さが言語化できなかったので、以下ChatGPTが作成してくれたものです。
疎外と孤独
家族や社会から「役に立たなくなった存在」として排除される人間の姿を象徴的に描いています。グレゴールは働き手であるうちは家族に必要とされますが、虫に変身した途端、重荷として扱われるようになります。
存在の不条理
「なぜ人間が突然虫になるのか」という理由は一切語られません。この理不尽さこそが人生の不条理や、人間の存在そのものの不安を象徴しています。
自己犠牲とアイデンティティの喪失
グレゴールは家族のために働き続け、自