高橋義孝のレビュー一覧

  • 変身

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    気色の悪い虫の描写は流石に世界文豪と呼ばれるだけのことはある。作品のテーマとして、障害を抱えた人とその周りの関係の比喩なのではないだろうかと感じる。虫になんて誰もなりたくないから。ただ、本題の結論として、ほったらかして正常な人間は新しい生活を始めようというのはいただけない。まあ時代が時代なので、そういう理解がないことは考慮するにしても、給仕をしない、意思疎通ができないことからの放棄は現代の身体障害者、精神障害者に対する所謂健常者の拒否反応を上手く言い表していると言えるし、そういった人の区別からの排斥は昔からも未来へも変わらないのだろう。

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    2026年10月23日
  • ファウスト(二)

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    場面は海底から天界まで、更には時代も超越して世界の限界を越えて描きながらも、徹底して人間臭く生きることを語っている。そのスケールの大きさと懐の深さがとても魅力的だった。
    悪魔の力を借りながら、戦争にまで手を貸すファウスト。古典に馴染みがない自分にとっては何でも有りな展開に面食らってしまうところもあったが、哲学も政治も幻想も入り混じった詩劇の何たるかを思い知らされた。書きたいことを全部書くのだと、全霊をかけた気概が読んでいて心地よい。
    ここまで自由奔放に描けるのは、詩や芸術だけでなく、歴史や科学まで網羅した圧倒的な知識の量があるからだろう。全ての章にインスピレーションがあったのではないか。手塚治虫の『火の鳥』のように人生かけて書いてる物語なので密度が凄い。

    注釈もあるが、それでも分からないところは沢山あって、こればっかりはとAIに解説をしてもらって随分と助かった。ギリシア神話などの知識が無いと中々厳しい。知ってると知らないとでは面白さが全然違う。
    とはいえ、当時の世界観や神話などは西洋の文化圏なら常識の範囲なので、ほとんど難しい話はしていないというのも凄いところ。
    笑いどころはたくさんあるし、なんと言ってもメフィストフェレスが素晴らしいキャラクターなのだ。皮肉が知識人の息抜きになっていることがよく分かるし、世の欺瞞を鮮やかに切っていく悪魔は、正しいことを為す主人公以上に、真実を伝える上で重要な役回りなのだと感心する。

    すでに多くの作品に影響を与えているので実証されていることだが、エンターテイメントしたファンタジー作品としても十分楽しめる。
    哲学を説教的に語るのではなく、目まぐるしい壮大な世界に翻弄される登場人物の言動にゲーテの思想が垣間見えて、作品をより魅力的にしている。ちいかわの深さに大人がハマるみたいなことか(違うか)。

    ゲーテについても調べてたら面白い話が山のように出てくる。ゲーテとフンボルトに親交があったことを知って興奮した。松岡正剛と荒俣宏みたいなものか。天才は惹かれ合うのだなぁ。
    注釈にファウストの息子がバイロン卿とあってびっくりした。調べてみるとモデルということらしいが、バイロン卿が若くして亡くなって、その功績を讃える意味もあるらしい。ゲーテと『フランケンシュタイン』のメアリ・シェリーが同時代の人なのだと不思議な感覚になった。因みにナポレオンも同時代。フンボルトもいて、若きダーウィンもいる。どんな時代だ。とても好きな時代。

    まだ一回通して読んだだけなので、何度も読んで更なる魅力を発見していきたい。漫画の『風の谷のナウシカ』も読むたびに発見があるのだが、宮崎駿もゲーテが好きらしいので、近しいものがあるように思う。ゲーテの他の作品も読まねば。

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    2026年10月20日
  • 変身

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    夢を思い出してそのまま描写したかのような俯瞰的かつ淡々とした文体。
    虫であることを誰も驚嘆しないことを見るに、虫になることは何かしらのメタファーか
    母親が家具を持ち出すのを咎めることに不快感を抱くとともにその違和感に気づく描写に盲点をつかれたかのような感覚があった。無意識下に自身が虫に侵食されていることへの恐怖。
    どこかでグレーゴルであることを認めつつも、折り合いをつけざるを得ない無情さ。
    ある日起きると虫になっていたという大胆な設定と淡々とした文体のギャップが魅力的に感じた。

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    2026年09月26日
  • 変身

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    20年ほど前に読んで、まったく新しいタイプの恐怖心にねっとり包まれた感覚がした。はじめて感じる衝撃で忘れられない。
    二度と読みたくないと思っていたのに最近また読んでしまった。
    自分自身が虫が大嫌いなこともあり、もし自身がそのものになったらどうしようと本気で考えてしまうくらい、語り口は現実的。こういうのをシュルレアリスムと言うのか。 
    家族の反応の場面が特に残酷。 
    また10年後に読んだら、この物語の趣旨に気づけるだろうか。

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    2026年09月07日
  • 変身

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    今後の高齢化社会の中で多くの日本人は同じ気持ちを味わうんじゃないか。自分や家族が要介護になりだんだん意思疎通もできなくなった時、これまでの愛情や感謝の気持ちを果たして持ち続けられるのか。

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    2026年08月30日
  • 変身

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    でっかい無視じゃなくてちいさくてかわいい虫だったらどうなったんだろう。
    カフカさんなんで虫の人の気持ちわかるの

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    2026年08月08日
  • 変身

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    解釈が難しいところを読み返しながら
    読んでいたため5時間かかりましたが
    「変身」を読み終えました。

    「変身」のグレゴール・ザムザと
    「判決」のゲオルクは
    親に心を支配されているところが
    共通していると思う。
    親が要求したものに応え続ける人生。
    「判決」のゲオルクが父親に怒鳴られている時もゲオルクは父に愛を向けていたように
    「変身」のグレゴールも
    どんなに職場で辛い思いをしても 
    自分自身が虫になって
    自分自身の未来すら見えない状況でも
    家族のことを一番に思い愛していた。

    しかし「判決」の父親も「変身」の家族も
    自分達が要求したものに応えられないものは
    裏切り者であり
    愛するに値しない人間と成りうる。

    「変身」のグレゴールは誇らしい息子
    家族を経済的に支えることのできたからこそ
    この家族に必要とされ限定的に愛された。
    経済的に支えられない虫となったグレゴールは
    この家族にとって愛すに値しない。
    虫になったグレゴールは家族の行く末を案じ
    弱って死んでいったが
    仮に虫にならなかったとしても
    グレゴールは最後まで家族の支配から逃れられず要求し続けられ
    本当の自分の人生を生きることなく
    死んでいったのだろう。

    あんなに行く末を案じた家族は
    本気になればそれぞれ仕事をし
    生活をしていけるというのに
    今までグレゴールに頼って生活していた。

    グレゴールがいなくなった今
    彼らはそれぞれ働いて生活をしているが
    妹が結婚をした時
    その夫がもしかするとグレゴールのように
    支配され要求され続けるのではないかと
    なんだか心配になってしまいました。
    親に支配され続ける子供の
    なんと悲しいことかと深く考えさせられました。



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    2026年07月10日
  • 変身

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    虫として過ごしやすい環境を受け入れてしまってよいのか?人間として人間らしさを捨てずにとっておくのか?一度人間らしさを捨ててしまえば戻ってくることは容易ではない。しかし、現実を見ると捨ててしまったほうが快適であるかもしれない。
    障害を持った人間とケアする周りの人間においても似たようなことが言えると思った。

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    2026年05月18日
  • 変身

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    人が虫に変身するお話ははじめてでした。ファンタジーとは違いますね。淡々とした表現が続くなぁ。その分情景はとても細やかだなぁと思います。

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    2026年05月09日
  • 若きウェルテルの悩み

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    ネタバレ

    正直、自分に重ねながら読んでいた。ウェルテルの感情の大枠には共感できたが、ウェルテルの行動や細かな感情には自己陶酔を感じると言わざるを得ない。ウェルテルはとても感情的な人間で、だが賢かった。作品の根幹となる自死というものについて、理論的な人間であるアルベルトと話し合う場面もあった。その場面では、ウェルテルはアルベルトとは根本的に異なり、相容れないだろうという感情が先行し、これが後々の蟠りに繋がったのであろうと感じた。思い込みが激しく、それに違和感を感じる事ができるほど賢いが、改善には繋がらないような人間臭さがあった。その人間臭さがロッテへの執着につながった。ロッテの性格を考えると、アルベルトという神に誓えるほど尊敬し、愛している相手がいながら、ウェルテルのことも恋愛感情だけでなく、大事な存在に思っているという感情にずっと蓋をして、聖母のような労いや敬いの心でウェルテルに接していたが、いざ、ウェルテルが自死するのではないかということを知覚すると、その蓋が一気に外され、蓋をしていた感情がロッテに流れ込んだだけでなく、その過程までウェルテルに見られたような感じがラストシーンにはあった。作品構造としては、ウェルテルからの一方的な友への手紙をつらつらと並べており、あたかも読者がウェルテルの友であるかのような錯覚に陥り、ウェルテルを擁護しようという感情につながった。ウェルテルとロッテは作中の詩に自分たちを投影し、私はウェルテルとロッテに自分を投影していたため、現実と小説の境界が曖昧になり、シュルレアリスム的表現を勝手に感じていた。

    若い時期に読むことをおすすめしたい!!

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    2026年03月17日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    われわれは深淵を否定したい。人間の品位を保っていたいのだが、われわれがどうじたばたしようと、深淵はわれわれを引寄せるのだ。

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    2026年02月15日
  • 魔の山(下)

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    ネタバレ

    読み終えたあとに言い知れる感動に襲われた、と言いながら、しかし、感想を言う。ハッタリ、衒学も含まれていると思うが、しかし、話題が豊富で、文章も文芸の極致。圧倒的。言語を超えた身体的、フェロモン的強靭、巫術、こっくりさん、決闘にまで話が及ぶ。読み進んでいくと、高原のサナトリウム=療養所という閉ざされた実験場と療養者を配置して、その化学反応で、高原の下の世界、俗世で起こりつつあるヨーロッパ文明の自壊を鮮明に、そして凝縮して描き切る。主人公の一人称に次第に俯瞰映像=筆者の視点が入るところに筆者の諦観が滲む。

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    2026年02月14日
  • 魔の山(上)

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    今のところ、ドイツ流の教養(Bildung、自己形成)小説といった観が強い。概して恋と知的な友情との二つの要素でストーリーは組み立てられている。それにしては、ストーリーにとっては余計に見える医学の話なども出るが、この上巻最後のショーシャとのフランス語での会話のなかで伏線として回収されていく。ショーシャとの対話はカタカナで記されているため、読みにくい。けれども、刺激的であり、感情を強く揺さぶってくる。圧倒的名作と評価されているくらいだから、下巻では、予想、期待を超えて大きなもう一山が待っているのだろう。

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    2026年02月11日
  • 若きウェルテルの悩み

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    ゲーテの感性の豊かさと高い抒情性が強く感じられる作品。
    当時の啓蒙主義的な社会背景の中で、「疾風怒濤(Sturm und Drang)」を体現する本作の登場は、大きな衝撃をもって受け止められたのだろう。

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    2026年01月28日
  • 若きウェルテルの悩み

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    もう一度読みたい
    ウェルテルのただ1人の感情を深いところまで知れたし、共感することもあったし、人間らしさがあって読んでいて面白かった。
    今も昔も人間の心はそんなに変わってはいないのかと思わされた。

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    2025年11月11日
  • 魔の山(下)

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    上下合わせて☆4.8くらい。

    長いけど、読みたいと思わせてくれる小説だった。

    一人でスキーをする場面が、印象的だった。自然との闘いではなく、思索的な旅だったのがよかった。

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    2025年10月20日
  • 魔の山(上)

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    高校生のとき挫折したけど、何回も読み返したい本になった。

    ドストエフスキーのような思想が積み込まれた本だけど、彼と違うのは、この本の通奏低音がカオスではなく、教養小説的な自己刷新であること。一つの大きな出来事がきっかけになるのではない。サナトリウムという非生活の中での、現実的な生活を通して、人との関わりを学んでいく。そうした、ナイーブな存在から大人になる過程を描いている。

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    2025年10月17日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    情景描写がすごく美しい。同じ芸術家をテーマにした2作だけどなんだか違う。自分と自分の外側と。芸術家も所詮人間。いい意味で。

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    2025年08月03日
  • 若きウェルテルの悩み

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    ロッテは純粋で無垢だと思っていたけれど、今回読み返してみて、もしかしたら無意識にヴェルテルを弄んでいたのかも?と思った。彼女自身も、誰かに愛されることで安心していたのかもしれない。悪気はないけれど、彼女の“優しさ”は残酷でもある。
    後半に行くにつれて不安定になるウェルテルは読んでいて辛かった…。
    彼の愛はものすごく重いけど、ロッテを理想化しすぎてるんじゃないかと思う部分もあった。

    あと、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』、ドストエフスキーの『白夜』を思い出した。
    『ワーニャ伯父さん』は、愛してはいけない人への想いを抱えながらも、どうしようもなく惹かれてしまう登場人物の苦しみが描かれていて、『白夜』は相手を理想化した故の激しい恋の物語で、ウェルテルが刺さった人にはオススメ。

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    2025年07月23日
  • 変身

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    ネタバレ

    いかに人間が本質ではなく存在でものを捉えてしまっているのかがわかる気がした。それと同時に実存主義に興味を持つきっかけにもなった。
    虫になり家族に貢献することができなくなり煙たがられてしまうことは何かのメタファーであるのだろうが、そこ以上に社会の持つ不条理とそれに生きる自分たちと云う面で見てしまった。そして、その不条理に対して人間はどう動くのだろうか。この小説の場合、グレーゴルは自らが虫になったことに対していつのまにか慣れてしまう。そのことがひどく恐ろしく、印象に残った。

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    2026年04月25日